ジャックと風術師
「……オレ、思ったんだ。最近、つっこみしかしてないって」
あくる日の昼下がり。
いつもの書斎で、ジャックは一人愚痴を言っていた。
―何を今さら―
そう応えたのは、お嬢と呼ばれていた機械。
「しかも、なんだかんだで、いろいろなことを胡散霧消している気がする」
―それは……否定できませんね―
「……」
―プルートさんの件も、キャンディーさんの件も、レウスさんの件も、全部解決していませんよね―
「だよな。そもそも、なんであいつらがここにいんだよ。プルートは一体何がしたかったんだよ。つか、この話終わるのかよ」
その問いに、お嬢はなぜか無言になってしまう。
「……お嬢?」
―レガート・レントからの連絡です。情報料は高いですよ―
「お前ら」
知ってんのかよ……。
いや、一応情報料となんて言ってるけど、お金じゃ無くてなんかしらの情報と引き換えだから、まだましか?
考え込むジャックに、お嬢は話題を変えた。
―そう言えば、最近仕事はきちんとしているんですか? いろいろあの方たちと騒いでいますが―
「いや、仕事はいろいろやってるぞ。騒いでる間にも、ちょこちょこと」
―賑やかになって良いじゃないですか―
「だが、何か釈然としない」
―良いじゃないですか。ワタシなんて、何時も忘れられているんですよ?―
「え?」
お嬢はレガート・レントの相棒であり、情報を管理している人工知能を持った機械。本体はレガート・レントの元にあるが、それと繋がっている子機がジャックの家にある、今音を発している機械だ。
―いつも、ここにいるんですけどね……―
「それは、すまない」
―いえいえ。いいんですよ。それで、独り寂しく無言でいつもいるワタシと違ってつっこみしかしていないことに、何か不満でもあるのですか?―
「すみませんでした! でもさ……一応、ジャック・オ・ランタンで、死者を導く存在で、でもってあいつらよりも年上のはずなんだが、良いようにもてあそばれているような気がする」
子ども扱いをよくされるが特に釈然としない。
―以前のように独り寂しくひきこもり生活を楽しむよりはましでは―
「待て。好きでひきこもってるわけじゃない」
―ひきこもっていたことには否定しないんですね―
抑えた口調だが、その言葉の端から笑いを抑えているのがわかる。
「哂うなよ。ったく。オレをなんだと思ってんだ。自宅警備員だのひきこもりだのザビエル禿げだの」
―良いじゃないですか。ザビエル禿げ―
「よくないよくない」
―そう言えば、一つ面白い情報が先ほど入りました―
「?」
―なんでも、メイザース家の方がいろいろ騒いでいるようです。気をつけて下さいね―
「メイザース? つったら、あの風術師の一族か?」
たしか、シェイランドにいる術師たちの中でも風術に特化した一族だったはずだ。
以前、その一族の少女と会ったことがある。
もっとも、彼女はアルトと同じで『お兄ちゃん』の元へと行ってしまったが。
―はい。なんでも……女の幽霊を探している、そうです―
「……」
まさか、その少女関係か?
厄介なことになったと頭を抱えていると、玄関から騒がしい声が聞こえてきた。
『ジャック君! ジャック君! まさか、ジャック君には女装癖があったんですか?!』
「なんでだっ」
―そうなんですか?―
「ちげーよっ!」
『だ、大丈夫ですよ。わたしはジャック君のことを信じています。だから、だから本当のことを!』
「女装していること前提っ?」
―なるほど……―
「いやっ、違うから! オレ、そんな事してないから!」
―無理に否定すると、立場が悪くなってしまいますよ―
「だから、なんでオレが女装していること前提なんだよっ!!」
これから、少々不定期になるかもしれません。




