ジャックのお客様 来たことに意味はない
「ほんと、お前ら何しに来たんだよ……」
数分後、ジャック君は疲れた様子でそう言いました。
そういえば、この屋敷にこんなに人がいるのは初めてかもしれません。
「あ、じゃあボクもう用が終わったから帰るよ! じゃねー」
「さよならー」
「もう二度と来るな」
「……」
光もびっくりな速さでアルト君は去って行きました。
もうちょっとゆっくりしていけばよかったのに。
「あいつ、本当に何者なんだ?」
「さあ、誰なんでしょう? 美少年かどうか分からないけどとりあえずの幽霊君でいいんじゃないですか?」
「……」
レガート・レントさんは納得できない様子です。
確かに、彼って一体何者なのかしら?
「それで、お前はいつ帰るんだ」
「あぁ、そうそう。お前に旦那からちょっとした伝言預かって来たんだ」
「旦那?」
そう言えば、よくレガート・レントさんの話には『旦那』さんがよく出てきます。
……あれ? 旦那、さん?
「レガート・レントさんって、結婚してるんですか?」
「いや、してないけど?」
「おい、キャンディー。今の話で、どこをどうしたら結婚の話になる。あと、話の腰折るな」
「それと、旦那は結婚できる年じゃない。まだ女性に興味はないようだが、男性にも興味はないぞ」
「そうですか、安心しました」
いろいろと、安心しました。
「おい、なんの話だよ」
「あぁ、旦那は命の恩人だよ。ちょっと前に潜入捜査に失敗して死にかけたところを助けてもらったんだけどね」
「お前ら……話が飛びまくって何がなんだかわかんねぇよ」
ため息をつくジャック君。
そんな、ため息ばっかりついて居たら、幸福が逃げてしまいますよ。
「で、結局なんだよ」
「オレの結婚予定は、ない。ということだ」
「……もういい。帰れ」
「冗談だよ冗談。旦那から、『気をつけろ』ってさ」
「……」
「きをつけろ……? 何からです?」
黙ってしまったジャック君の代わりに聞くと、レガート・レントさんは少し困った顔で言いました。
「さあ?」
「使えませんね」
「キャンディーさん、キャンディーさん。それを旦那の前で言ったら大変なことになる気がするので言わないでくださいませ」
まあ。
レガート・レントさんが泣き笑いをしながら冷や汗をかいています。
……そんなに、旦那さんはすごい人なんでしょうか?
「プルートの話をしたら言われたから、たぶんその関係だろうとは思うけど」
「プルート?」
なんだか聞き覚えがあります。
たしか、異国の死を司る神様でしたっけ?
「プルートって言うのは人の名前。因みに、同名の神は冥府の神」
「まぁ、そうなんですか」
異国の神についてはよくわからないです。
この世界には、多くの神々が存在すると聞きます。
その神の名を持つ人に気をつけろですか。
「それにしても、ジャック君意外と物知りなんですね」
「意外ってなんだ。意外って。そりゃ、だてに年取ってねぇよ」
「さすが、自宅警備員」
「黙れ」
「それで、そのプルートさんってジャック君、知り合いですか?」
「……まぁ、一応」
どこか歯切れが悪い答えです。
なぜかしら?
ジャック君は、結局何も言ってはくれませんでした。




