ジャックとキャンディー そのご
第二十九話
ジャックとキャンディー そのご
うかれる子供の笑い声。
町中がお祭り騒ぎで、誰もが笑顔だった。
国の中心である教主塔アズリルが崩壊しても、首都から一歩離れたらそんな様子はみじんも感じられなかった。
情報が届いてないからだろう。
もうすぐ情報が届いて、違う意味で大変な騒ぎになるはずだ。
「私、ハロウィーンが嫌いでした」
至る所に飾られたオレンジ色の可愛らしいカボチャは、ジャック・オ・ランタン。
それは、逝ってしまった死者たちが家族の元に迷わず来れるようにという残された人々の願いのこもった提灯。
幾つものそれを眺めながら、私は言いました。
「ハロウィーンは、死者が生者に会いに来る祭でしょう? でも、誰も来てくれなかった」
「……」
「だから、もしも本当にジャック・オ・ランタンが居るのなら、聞こうと思ってました。なんで、お父さんもお母さんも私の所に来てくれないのでしょうか?」
待ってても、死んでしまったはずの家族は誰も来てくれなかった。
だからってわけじゃないけど、孤児院のみんなは私にとって家族だった。
父も母も知らない私の、いまここに確かに存在する大切な家族だった。
「知るか」
「役に立たないわね」
「オレが知るわけねえだろ。てか、性格変わってないか? 悪い意味で」
「もともとこんな性格でしたけど。……なんで、私の元に来たんです? 無視すれば、厄介払いができたのに」
あれだけ、出てけとか言ってたのに。
「……いろいろあるんだよ、いろいろと大人の事情が」
「その姿で言われても、説得力皆無ってわかってますか?」
「……お前、性格悪いって言われてただろ」
「えぇ、よく。これくらいしか、憂さ晴らしすることができませんでしたから」
「……。これから、どうする?」
「考えてなかったんです?」
「いろいろあったんだよ。なんでこんな事になったのか、オレにもよくわかんねえし」
「まったく、計画性の無い人ですね。……保護者として明日が心配です」
「って、お前はオレの保護者じゃねえだろ!!」
「そんな無計画に私を連れ出して……これから大変ですよ?」
「今まさに絶賛後悔中だ」
「まったく。ジャック君は甘いですね」
私の事なんて、無視してしまえばよかったのに。
探さないで、あのままあの屋敷で霊達を待っていればよかったのに。
このままどっかに残して、一人で帰ってしまえばいいのに。
「ジャック君は本当に甘いです」
「二回も言わんでいい」
無言で、ジャック君の手を繋ぎました。
教主塔アズリル、ハロウィーンにて地下組織の反抗によって崩壊。
その際、死者負傷者多数。
崩壊に巻き込まれて行方不明になった人々も多く、正確な犠牲者の数は今もわかっていない。
だから、裏の巫子であるキャンディー・メディッカが行方不明になったことは、一部の人間しか知らない。
ようやく、ジャックとキャンディーが合流しました。
もうすこし、物語は続きます。




