ジャックとレガート・レント
第三話
ジャックとレガート・レント
私がジャックの前に現れてから、数日。
すごく、疑問があるんです。
なにって、それはもちろん……
「どうしてジャック君はキッチンがあるのに何も作らないんですか?」
「は?」
そうです。
ジャック君は、何も食べていないんです!
人間、食べなくても十日は生きていられるとかいいますが、キャンディーは心配です。
「だってオレ、人間じゃないから」
「……」
「……?」
「まあ、そうだったのですか?」
「いや、気づけよ!!」
まあ、ジャック君は人間ではなかったのですか!
すっかり、人間だと思っていました!
あっ、まさか、私も実は人間では無いパターンとかではありませんよね?!
「私は、人間でしょうか!」
「人間だろ」
「まあ、そうですの?」
よかったよかった。
あら?
よかったのかしら?
まあ、いいや。
そんな時です。
初めて――そう、初めてなんです!
この家の玄関が、ノックされました!!
まあ、この玄関、どこかに繋がっていたんですか。
すっかり飾りと思っていました。
この家に来る人は、大抵幽霊さんばっかりなもので。
ジャック君には生きている人間のともだちがいないのかと思っちゃいました!
「はーい」
「あ、おいっ!勝手にでんな!!」
「どうぞ~」
「必礼しまーす……誰、あんた?!」
入って来たのは、どこか機械おたくそうな青年Aさん。
Aさんは、私をまじまじと見た後、なぜか扉を閉めました。
「家、間違いました」
「間違ってない! レント! 間違ってないから!!」
そう言うと、勢いよく扉を開けて、青年Aさんはジャックの元に走りました。
「お、おう、ジャック。なんだ、この人は?!まさか……コレか?」
何やら手元を隠しながら話してます。
「んな訳ねえだろ!!」
「はじめまして、お嬢さん。私はレガート・レント。しがない情報屋です」
「切り替え早っ!!」
「まあ、情報屋さん?」
「おい、レント。かってに」
「この馬鹿ぼうずの相手は大変でしょう?」
「いえいえ。あ、私の名前はキャンディーと言いますの。今後とも、うちのジャックをお願いします」
「うちのジャック? オレをお前の物にするな!!」
「はい。今後ともごひーきにさせてもらいます」
「こっちの話を聞け!」
「大丈夫だ、聞いている。ただ、聞き流しているだけだ」
「……」
まあ、レガート・レントさんってば、ジャック君を言いくるめてしまいました。
面白いですね。
わたしも見習って今度やってみましょう。
想像して見ると……あら、楽しそうだわ!
今からるんるんです。
「で、何で来たんだよ」
「あぁ、いつもの定期健診だ」
「ジャック君はどこか悪いんですか?」
「いや、違う。これだよこれ」
「?」
なぜか、レガート・レントさんは機械を調べ始めました。
このまえ、姫騎士さんが来た時ジャック君が使っていたあれです。
「ときどき、こうやって壊れてないかメンテナンスすんの」
「まあ、大変ですね」
「いや、機械は好きだから」
ほほう。機械おたくと見た私の初見は間違っていなかったわ。
「一応、情報屋やってるんで、よければどうぞ」
「はい?」
渡されたのは小さな名刺。
黒い不思議な名刺です。
でも、幽霊の私には、触る事も受け取る事も出来ません。
再びザンネン……。
「情報屋さん……では、私は誰なのか分かります?」
「え?」
「そいつ、記憶喪失でどこの誰だかわからないんだ。なんでかうちに居座るし、どうにかしてくれ」
「今すぐには思い当たらないな……お嬢は分かるか?」
「?」
誰かに、話しかけますが、そこには誰もいません。
ジャック君は馴れているようで、何も突っ込まないようです。
「そう。ありがとう。お嬢。すまないな。すまん。わからないな」
「そうですか……」
ザンネン。
運命の女神はほほ笑みませんでした。
「てか、そいつ引き取ってくれ。仕事のじゃまだし」
「えぇっ!ジャック君、酷いっ!!」
「今無理。旦那にちょっとお荷物預かってんの」
「っち……」
「もう、ジャック君酷いです!!」
ジャック君ったら、私が邪魔?
もう、酷いです!
もう、さみしくってもかまってあげません!
「一応調べておくよ」
「まあ、お願いします」
それに対して、レガート・レントさんは良い人です。
そうしている内に、レガート・レントさんは帰って行きました。
「結局、お前はここにいんのかよ」
「はいっ」
「どこの誰だかわかったら、とっとと出て行けよ」
「はい……っは!! その発言は分からないうちはここにいてもいいって事ですね!!」
「っ!!」
しまった!顔のジャック君に、思わずしてやったりと思ったのでした。
追加登場人物
レガート・レント
お手伝い
Pandoraboxイトコヒメシステム
お嬢