ジャックとキャンディー そのし
第二十八話
ジャックとキャンディー そのし
私は、金で売られたも同然に、この塔にやってきました。
私のいた孤児院はお金が無かったから、私を裏の巫子として差し出す代わりに、国からの援助を頼ったのです。
最初は、逃げだそうとしました。
子どもだった私にとって、ここの生活は地獄でしたから。
ずっと祈らされ続ける私たちは、何をすることもできず、ただ閉じ込められ続け、私はそこから逃げようとしました。
なんども怒られ、罰を受けました。
でも、気づいていました。
周りの人たちに言われていましたから。
私が逃げたら、孤児院への援助は無くなります。
私という存在あっての援助でしたから。
私はみんなの事が好きだったから。
孤児院のみんなを助けてあげたかったから。
だから、ここで生きる事を決めました。
ほんとうは、寂しくて、苦しくて、誰かに助けて欲しかった。
暗い世界で、いつも神様に願ってました。
ここから、逃げたいと。
でも、逃げたらみんなが困るから、逃げちゃいけないと。
それが、何もできない子供が唯一できることだったのです。
「……私が死んだら、私が逃げたら、みんなが困るもの。だから、私はここから逃げない」
「……そんな。貴方は売られたんですよ?! 売った彼等の幸せを願うとでも言うんですかっ?!」
「それでも、私はあそこしかないから。もう、いいでしょ?」
ここでずっと一生祈り続けるとしても。
私の家はあそこしかないから。
「それが、嘘だとしたら?」
「……?」
「もう、あの孤児院には国の援助はねぇよ」
「う、うそ……なに、いってるの」
何度も、周りの人たちに言われたのに。
「嘘じゃねぇよ。今はどっかのなんでも屋から援助を受けてる。つまり、お前はもう心配しなくていいんだよ。ここから逃げたって、良いんだよ」
うそ。
うそだ。
そんなの嘘に決まってる。
じゃあ、私は……。
「私は……」
「自由だよ」
自由?
「キャンディー」
ジャック君が私の手を取って――
「逃げんぞ」
――塔の外へ走りだしました。




