嫌いなもの、ハロウィーン
眼を開けると、暗い天井が見えた。
真っ暗だ。
久しぶりの、目覚めなのに。
半年ほど前に病を患い、ずっと寝込んでいた。
熱と痛みで夢と現の狭間さえ分からなくなって、苦しんだ。
だから、こうやって自分の意志を持ったまま目覚めたのは、久しぶりだった。
「お目覚めですか、キャンディー様」
よく知った青年が、灯りをつけた。
宰相の狗、レウスだ。
こちらを監視して、逃げないか見張っている。
そんな事しても、私は逃げないのに。
逃げれる訳が無いのに。
「……夢を、視た」
とても、楽しい夢だった。
「それは、夢でしょう?」
「ええ……でも、楽しかった」
私は、自由で、―――をからかって、笑っていた。
「……」
「まだ、お加減がよろしくないようです。さあ、お眠りください」
「……ええ」
でも
「どうかなさいました?」
外から、声が聞こえてきた。
楽しそうな、笑い声。
「今、外では何をやっているの?」
「……ハロウィーンですよ、キャンディー様」
「そう」
興味を無くして、ベッドに深く沈んだ。
ハロウィーンなんて嫌いだ。
私の意識は、すぐに闇に墜ちた。
「……くそっ」
ブレウスはキャンディーが眠ったのを確認すると、外に出て壁を殴りつけた。
後ろで足音が聞こえて、すぐにやめる。
「レウス、今回はお手柄でしたね。魂だけ抜け出してしまった彼女を探し出し、連れ帰ったと」
「……ガレイオス様」
嫌な奴。
そう思っても、そんな様子は彼に魅せられない。
「しかし、いけませんねえ。彼女は現在いる人柱の中でも、有数の実力者。きちんと監視しなければ……ということで、先ほど議会で決定しました。レウス、これからキャンディーの監視をしなさい」
「……はい」
「彼女の事を頼みますよ。もう、二度とこのような事が無いように」
「……」
もう、二度とないように……。
「……くそ」
ガレイオスが見えなくなると、小さく呟く。
「こんな事、いつまでも続くと思うなよ」
「そうよね」
「そうだわ」
くすくす……。
笑い声が響き、小さな影がレウスの周りを飛び回った。
「可哀想」
「連れ戻しちゃって」
「可哀想」
「あんなに楽しそうだったのに」
くすくす。
小さな声が、レウスを馬鹿にするように笑った。
「黙れっ」
「恐いわ」
「教えてあげたのに」
「酷いわ」
「教えてあげたのに」
「「ねー」」
そう言って、小さな影はどこかへと消えてしまう。
残されたのは、レウスだけ……・。
追加登場人物
レウス
監視




