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ヘンゼルと迷いみこ  作者: 絢無晴蘿
ジャック・オ・ランタン
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ジャックとフェリス

第二話

ジャックとフェリス




みなさん、わたし思うんです。

窓から差し込む光。

その光できらきら光る……ほこり。

この部屋って、汚い!!


「もう、掃除しましょうよ、掃除!!」

「あー、もう。うっさい!だまってろ!!」

「ほこりだらけですよー。ハウスダストですよー。ハウスダストが舞いあがるっ!!」

「……なにしたいんだ」

「掃除して欲しいんです」

私の名前は、たぶんキャンディー。

たぶんってつくのは、私が私の名前を忘れちゃったからなのよ。

そして、掃除嫌いな男の子は、ジャック君。

この子は、ザビエル禿げ候補の可哀想な男の子です。

ちなみに、彼は迷ってしまった魂を天国に送るのがお仕事のようです。

そして、私は実は……。

「何もできない生き霊が、オレに指図すんなっ!」

「まあ、キャンディー怒りました!!」

そうなんです。

私、生き霊みたいなんです。

おかげさまで、物には触れず、物体透過し、普通の人には姿を見られません。

しかし、ジャック君のような見える人には、見えるようです。

「だいたい、なんでここにいるんだよ!」

「私の家はどこですか?」

「知るかっ!!」

「この迷える私を導いてくださいな。そして、私はジャック君以外を知らないのです。もう、ジャック君しか頼れる人がいないのです」

「ああぁー聞こえない聞こえない。ほら、そろそろ客が来るから、さっさと消えろ!」

「きゃうん」

まあ、酷い人。

私はどうしてか飛ばされて、部屋の隅にぐしゃりと倒れてしまいました。

そして、ジャック君は痛いけな私に目もくれず、お客様に言うのです。

「ようこそ、ジャック・オ・ランタンに」

「む、ここは何処だ」

そう言ったのは、凛々しい女性の騎士様。

純白の鎧の姫騎士様のようです。

まあ、すてき。

「ここは、ジャック・オ・ランタンですよ」

「ふむ。珍妙な場所だな。しかし、私は行かなくてはいけないところがあるのだ」

「どこにですか?」

「どこに……」

おや、お加減がよろしくないご様子。

突然顔を真っ青にしてしまいました。

「私は……そ、そうだ! 私は部下達を助けなければっ。私が居ないというのに、彼等は皆残って必死に戦っているのだ!!」

「どこに部下達はいるのですか?」

「関係ないっ、早く、彼等の元に行かなければっ」

ジャック君は、呆れたようにため息をつきます。

「なら、質問を変えましょう。なぜあなたは、部下達から離れたのですか?」

「それは……」

あらあら、どんどん真っ白になっていきます。

やっぱり、風邪なのかしら?

「それ、は……」

突然、ジャック君は近くにあった大きな機械をいじり始めました。

ぴっぴっぴ、と、軽快な電子音が響きます。

その間、姫騎士さん(仮名)は、何かを考え込むように下を向いていました。

「なるほど。思い出せないようなので、オレから言いましょう。あなたは、前線を離れなければいけないほどの、大けがを負った。だから、部下達から離れた」

「そ、そう、だ。だがっ」

「しかし、爆破の直撃を受けたあなたは、治療のかいなく、死亡」

「な、なにを言っているのだっ」

「だから、あなたは今、自分がだれで、部下が誰で、何処で戦っていたのかも何も、思い出せない」

「……ちがっ」

「もう、あなたは死んでいるんですよ」

あら。

この姫騎士さんもそうなのね。

でも、姫騎士さんは受け容れられないご様子。

まあ、突然死んでいるなんて言われたら、誰でも吃驚しちゃうわよね。

「うそだっ。そんな事、嘘に決まっている!!あいつらは、私を待っているのだ!」

「……もう、戦いは終わりましたよ」

「なっ」

「数年前に、あなたが最期に戦った戦いは、終わりました」

そう言えば、四年ほど前に大きな戦いが終わりました。

百年も続いた大きな戦い……。

この姫騎士さんも、その戦いで剣を取って戦った一人みたいです。

「そんなっ」

「そして、勝ったのは……」

「ど、どっちなのだ。フェリスか、レンデルか」

「フェリス」

あら?

「そう、か……」

「もう、あなたの目の前に広がる道は、見えていますよね?」

「……私は、あの時……でも……まだ仲間と共に戦いたかった。祖国を、守り、たかった……」

「大丈夫、貴女の仲間は戦い抜き、祖国は守られました」

「そう、なら……もう思い残すことはない」

「……」

姫騎士は、そう笑って消えてしまいました。

静寂が、訪れました。

「なぜ、嘘をついたのです?」

「うそ?」

「フェリス皇国は、レンデル帝国に侵略されて、消えてしまったっはずですよ?」

フェリスを侵略したレンデル帝国は、その後も侵略を続けました。

そして、いくつもの国が消えてしまったのです。

「そう言った方がいいからだよ。てか、そういう記憶はあるのか」

「……」

どちらにせよ、彼女は天国に逝ってしまいました。

彼女は、ジャックの言った嘘で救われたのかもしれません。

「で、いつまでここにいるつもりだ」

「何時まで? さあ、何時まででしょうか?」

「さっさと、どっかいけえっ!!」

「何処って、何処ですか?」

「知るかっ!!」



私はまだ知らなかったのです。

なぜ、私はここにいるのか。

なぜ、ジャック君はここにいるのか。

そして……舞い散る埃は、部屋はいつきれいに掃除されるのか。

あっ、ここ、重要ですよ!!









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