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ヘンゼルと迷いみこ  作者: 絢無晴蘿
ジャック・オ・ランタン
25/51

裏八話 嗚呼、魔女は私たちを太らせて殺す気だ

裏八話

嗚呼、魔女は私たちを太らせて殺す気だ



グレーテルは、まだよくならなかった。

話だけするなら元気そうなのだが、熱がまだ続いていた。

「まだ、よくならないのか……」

「ごめんね、お兄ちゃん」

「別に、気にしてない。ただ……」

ハンスは信用してもいいと思う。

ここ数日過ごして、思った。

人さらいに売るならすぐになにかしらしただろうし、町の人々からは慕われているし。

なんでも、どっかの偉い先生だったとか。

まあ、そんなの知らないけど。

「お兄ちゃん?」

「いや、なんでもない」

グレーテルは、やっぱりここにいたほうが……。


「おーい、ちょっと出かけてくるぞ」


ハンスの声だった。

二階の子供部屋にまで届くように叫んだハンスは、どこかに出かけた。

「……グレーテル、おとなしく寝てろよ」

「うん」

グレーテルが布団を被るのを見た後、僕は急いで外に出た。


ハンスは、すぐに見つかった。

見た事のない青年と共に、歩いていく。

それを、こっそりと追った。

どこに行くのか興味があった。

入り組んだ道を、前を行く二人は颯爽と歩いていく。

しかし、そのまま見失ってしまった。



「……撒いたか?」

「そうみたいだね」

ハンスは青年に頷いた。

「で、なんだい? 君たちとはもう縁を切ったはずだけど、プルート?」

厳しい目でプルートと呼ばれた青年を見た。

「そう言う事でもないだろう。私達は、君の腕をかっているんだ。それで、これを見て欲しくてね」

「……?」

渡されたのは、魔術論理の書かれた用紙だった。

魔術の使用方法、その効果、その発動方法、そんなものが書かれたそれを見て、そして青年を見る。

「嘘だろう」

「嘘じゃない」

「……」

「どうだ?」

「確かに、これなら君たちの望む奇跡は起こるかもしれない」

そう言って、もう一度その用紙を見た。

「でも、なぜオレに?」

「……」

プルートは、何も言わなかった。

ただ、嗤って後ろを向いてしまった。

「そう言えば、君は子どもを拾ったそうだね」

「だからどうした?」

「よくそれを見てごらんよ。じゃあ、また会おう」

「……」

それをじっと見つめた後、ハンスはそれを握りつぶし……捨てる事も出来ずにポケットにねじ込んだ。


なんだかんだで一年……僕らはハンスと共に過ごした。

グレーテルの風が直った後も、引きとめられて。

グレーテルは家事を手伝い、僕は子どもでも働ける場所を探して働いて。

ハンスはたびたびどこかに行って、その間家を僕らなんかに任せた。


「あーあ、ハンスさんいつ帰ってくるかな」

「知るか。それより、掃除」

「はーい」

この屋敷は、魔術師が住んでいるとだけあって、へんな部屋があったり魔術がかかっていた。

「ねえねえ、ほら見て。扉があるよっ」

「え?」

グレーテルが見つけたのは、地下へ続く扉だった。

「気にならない?」

「気にならない。それより掃除だろ」

「でもー」

嘘。

本当は少し気になっていた。

「せめて掃除が終わった後」

「ほんとっ?!」

明るく顔を輝かせたグレーテルに、ヘンゼルはそっと笑った。


「よし。行くよ! お兄ちゃん!」

「あー、はいはい」

「もうっ、なんでそんなに冷めてんの?」

「お前が張り切り過ぎなの」

「えー」

そんな事を言いながら、僕達は床の扉を開けた。

開けてしまった。

「あれ……?」

「……」

「なに、これ」

そこは、地下室で、暗くて……誰かを繋いであったような鎖と、血のような黒い跡があった。

そして、一番奥に、黒い棺が置かれていた。

そこに、しわしわになった紙が置かれていた。

所々読めなくて、でも、唯一読めた所には、



どうせ孤児なら、死んだところで誰も気づかない。

誰も、哀しまない。

なら、自分の為に殺してしまえばいい。




……僕達は、何を信じればいいのだろうか?







追加登場人物


プルート

不明






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