裏四話 ジャックとグレーテル
裏四話
ジャックとグレーテル
そこは、古びた屋敷だった。
「本当に、ここでやるのか?」
「はい……」
ただ眉をひそめて無言でいる先輩に、ジャックは頷いた。
「ここにいたいんです……」
「まあ、前例がないってわけでもないが……」
ジャック・オ・ランタンは、大抵世界を廻る。
世界を廻って、迷った霊を探すため。
逝けずに彷徨い続ける霊達がどこにいるか、ジャック・オ・ランタンにはわからない。
ただし、特例もある。
もともと、霊達が通りやすい霊道や、霊を集める魔術や魔法のかけられた場所、そこで、彷徨っている霊を待つ。
そんな者もいるのだ。
「ここなら……」
「妹が帰ってくると?」
「……まだ、グレーテルは逝って無い……なら」
「……」
「霊は、生前もっとも執着した場所や物、者に依る……なら、きっと、ここに戻ってくる」
もう、ここしか帰ることのできないグレーテルは、きっと……。
記憶を無くしても、悪霊になっても、きっとグレーテルはここに帰ってくる。
「それは、保障されない」
「っ」
先輩は厳しい目でジャックを見ていた。
「ここにいたところで、他の場所で悪霊化をしているかもしれない。他の場所で導かれてしまうかもしれない。誰かに滅せられてしまうかもしれない」
「でも、ここしか知らないから……」
「そうか」
青年は、頷いてもう何も言わなかった。
「……グレーテル」
ここに、来てくれるよね?
だから、それまで……ずっとここで待ってるから。
ねえ、グレーテル。
ずっと、ずっと……。
先輩が屋敷の外に出ると、姐さんが待っていた。
「大丈夫なのか?」
「……大丈夫だろう」
「その割には、心配そうな顔をしているけど?」
「当たり前だ。オレがスカウトしたやつが、一人立ちすんだ……」
「心配性だねえ」
姐さんは一人笑う。
それを、先輩は不機嫌そうに見ていた。
「お前の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も、教える事がなんにもなかったからね、グレイアンは。それより、この屋敷は大丈夫なのかい? 本当に、ここで迷い人を導けるのかい?」
「さあ? それはあいつ次第だろう」
「他人事に言うねえ」
「そうでもない」
もう一度館に振り替えると、そのまま姿を消した。
それを、姐さんは苦笑してみていた……。




