ジャックとグレーテル
第十話
ジャックとグレーテル
昨日、アルト君が遊びに来ました。
生きてる人を待っている幽霊って、暇らしいです。
まあ、私とジャック君と同じ。
そんなアルト君は、面白い事を教えてくれました。
「さあさあさあ! 見てください、さぁ!!」
「……は?」
みなさん、見てください!!
キャンディーは、この度、掃除をできるようになりました!!
「どうです? 物を持てるようになりました!!」
「あいつ、余計な事を……」
みなさん、知ってましたか?
幽霊とかって、霊力が強ければ物を持ったりする事が出来るんです!!
そう、掃除ができる!!
私、霊力が強いらしいようで、こんなことができるみたいです。
なんだか、得した気分。
「どうです? どうです? もう、ニートとかひきこもりとか、言われませんよ、私」
「は?」
「ふふふふ」
「……客が来たから、他の所でやってくれ」
ジャックの前に、幽霊さんが居ました。
「もう」
最近優しくなったと思ったのに、気のせいだったのかしら?
仕方ありませんね。
他の部屋を掃除するとしましょうか。
こう見えても、この屋敷には部屋がとてもたくさんあるのです。
キッチンに、ダイニング、寝室、子ども部屋が二つ、図書室……。
そこを、一つ一つ掃除していきます。
そう言えば、この家には誰が住んでいたのかしら?
ジャック君だけにしては、子ども部屋が二つもあるし……?
時間は、刻一刻過ぎていきます
それにしても、一階も二階も、汚いわ。
「もう、ほんとに掃除してないのね」
最後の部屋を掃除する事にしました。
けっこう前にジャック君が入って行った部屋です。
「まあ、酷い」
中は、ガラクタだらけ。
どこかの民族衣装や仮面、キャンドル、ひょうたん、枯れたバラ、薬草、壺、変な本、用途のわからない謎の物体。
「これは、掃除のしがいがあるわね」
ほこりだらけのその部屋で、キャンディーとほこりとの宿命対決が起るのでした。
「……おや? おやおやおや?」
隊長! 此処に、ここに何やら不思議な物が!!
部屋を片付けている内に、床に秘密の扉を発見しました!!
「おおおおっ。私、天才!」
なんという事でしょう。
この屋敷の謎を、解明できるかも!
ほこりだらけだった床と扉をふきふきふき。
綺麗になった扉を開けてみます。
「かい、だん……?」
下に、続いているようです。
やはり、ほこりだらけ――と思いきや、ごく最近誰かが通ったような足跡がありました。
「ジャック君でしょうか?」
そう言えば、ジャック君はこの前この部屋に入って行ったような。
「よし、行ってみましょう」
その先に何があるかも知らずに、私は行きました。
――その先には、二つの遺体がありました。
暗い部屋の中。
ムッとした匂い。
黒く汚れていた石壁。
頬を掠める生ぬるい風。
不自然なほど静かな地下室。
白いチョークで描かれた歪な円。
ねっとりと絡みついて来る様な空気。
複雑に崩されアナグラムにされた古語。
壁に繋がれた鎖の先には小さな子供の遺体。
肉は干からび、所々に骨が見え隠れしていた。
右目を短剣で刺された少年と、彼の手を握るように手を添える少女。
その、白骨した遺体。
「……う、そ」
なんで?
言葉を無くした私は、しりもちをついてただそれを見ました。
死体、でした。
それも、かなりの時間が経過した。
「キャンディー」
「……ジャック君」
すこし、怒ったような顔。
いつの間にかジャック君が後ろに居ました。
ジャック君は、無表情で私を見ていました。
「……少しは懲りろ!!」
「えぇっ?!」
「この前は町で迷子になって、悪霊と遊んで、もっと気をつけろ! こんな場所に、一人で入るな!!」
「だって、秘密の部屋ですよ? 気になるじゃないですか!! それよりも、この遺体は……」
「……それは」
ジャック君は顔をそむけて言いました。
「オレとグレーテルだ」




