魔法使いと、●るねるねるね。3
ティラミスたちがそちらに目をやると、そこではおばばが、バケツのような入れ物におたまを突っ込んで、中身をぐりぐりと練っている所だった。
「ほうれ。ね~るね~る、ね~るね~る、
ねええええええ~~~~~~る、ねええええ~~~~~るううううっっっ!」
怪しげな掛け声と共に、ねりねり、ねりねり、とかき混ぜている。
周囲のものもなぜか、一緒になって声を合わせ、
『ね~るね~る、ね~るね~る』
と、叫んでいる。
「……」
「……」
「……」
ティラミスたちは、無言でその様子を眺めた。
「ほれほれ。ね~るね~る、ね~るね~る」
『ね~るね~る、ね~るね~る』
「もう一つおまけに、ね~るね~る!」
拍手喝采。
なぜだ。
「あれって、『●るねるねるね』じゃない……?」
ぼーっとその様子を見ながら、ティラミスが言った。
「あー、そうですよね。『ねる●るねるね』、ですよね、どう見ても。量が尋常じゃないけど」
じんが同意する。
「なんだその、ね、ねる? ねるねる、とは」
ウィルフレッドが首をひねった。
「駄菓子よ」
「駄菓子ですね。子どもが喜ぶたぐいの」
ティラミスとじんの二人が答えると、ウィルフレッドの眉間にしわが寄った。
「あんな怪しげなものを、子どもが食べるのか」
「いや、あれは量がものすごいから、怪しげに見えるだけ……じゃ、ないのかな? ひょっとして」
じんが否定しようとしたが、ねりねりしているおばばの姿に、否定しきれずそう言った。
「ちょびっとなら、そんなに怪しくないけど……良く考えたら、怪しいお菓子よね、あれ。どうしてあんな風に練る必要があるのかしら」
『ね~るね~る』と合唱する周囲の熱気も合わさって、ものすごく怪しい。
「何かの呪術のようにしか見えんぞ」
ウィルフレッドがしごく真面目な顔をして言った。ティラミスもじんも、思わず納得しそうになった。
「ひっひっひ! ほうれ。ね~るね~る、ね~るね~る! わが生涯に、一片の悔いなしじゃ~!」
なぜかハイテンションで、おばばが笑う。
おばばの駄菓子ショーはそうして、拍手喝采のうちに、幕を閉じたのであった。