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一夜の魔法亭 1 ~ただ茶屋番外編~  作者: ゆずはらしの
夏至の夜の不思議な時間。
9/25

魔法使いと、●るねるねるね。3

 ティラミスたちがそちらに目をやると、そこではおばばが、バケツのような入れ物におたまを突っ込んで、中身をぐりぐりと練っている所だった。



「ほうれ。ね~るね~る、ね~るね~る、


ねええええええ~~~~~~る、ねええええ~~~~~るううううっっっ!」



 怪しげな掛け声と共に、ねりねり、ねりねり、とかき混ぜている。

 周囲のものもなぜか、一緒になって声を合わせ、



『ね~るね~る、ね~るね~る』



 と、叫んでいる。



「……」

「……」

「……」



 ティラミスたちは、無言でその様子を眺めた。



「ほれほれ。ね~るね~る、ね~るね~る」


『ね~るね~る、ね~るね~る』


「もう一つおまけに、ね~るね~る!」



 拍手喝采。

 なぜだ。



「あれって、『●るねるねるね』じゃない……?」



 ぼーっとその様子を見ながら、ティラミスが言った。



「あー、そうですよね。『ねる●るねるね』、ですよね、どう見ても。量が尋常じゃないけど」



 じんが同意する。



「なんだその、ね、ねる? ねるねる、とは」



 ウィルフレッドが首をひねった。



「駄菓子よ」

「駄菓子ですね。子どもが喜ぶたぐいの」



 ティラミスとじんの二人が答えると、ウィルフレッドの眉間にしわが寄った。



「あんな怪しげなものを、子どもが食べるのか」

「いや、あれは量がものすごいから、怪しげに見えるだけ……じゃ、ないのかな? ひょっとして」



 じんが否定しようとしたが、ねりねりしているおばばの姿に、否定しきれずそう言った。



「ちょびっとなら、そんなに怪しくないけど……良く考えたら、怪しいお菓子よね、あれ。どうしてあんな風に練る必要があるのかしら」



『ね~るね~る』と合唱する周囲の熱気も合わさって、ものすごく怪しい。



「何かの呪術のようにしか見えんぞ」



 ウィルフレッドがしごく真面目な顔をして言った。ティラミスもじんも、思わず納得しそうになった。



「ひっひっひ! ほうれ。ね~るね~る、ね~るね~る! わが生涯に、一片の悔いなしじゃ~!」



 なぜかハイテンションで、おばばが笑う。




 おばばの駄菓子ショーはそうして、拍手喝采のうちに、幕を閉じたのであった。


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