表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一夜の魔法亭 1 ~ただ茶屋番外編~  作者: ゆずはらしの
夏至の夜の不思議な時間。
2/25

招待状は、突然に。2



 ほどなくしてティラミスは、『ただの茶屋』に到着した。店の中からは、光が漏れている。



「あれ?」



 そこで首をかしげる。どうも、外観が違っているような気がする。



「どうした」

「え、お店がいつもと違う……気がして」

「そうじゃろうな。夏至じゃし」



 夏至と何の関係が。



「夜に見ているからかなあ?」



 お店に来るの、いつもは朝だし。とティラミスは思った。それにしても、



「あの、おばばさま。なんか、お店が大きくなってません?」

「夏至じゃからな」

「窓の数が増えてるような」

「夏至じゃしな」

「屋根、あんなに高い所にありました?」

「うむ。正しく夏至じゃ」



 だから、夏至と何の関係が。



「入るぞ」

「あ、はい」



 首をひねっていたティラミスだったが、おばばに言われ、慌ててステップを昇った。

 階段には一段ごとに小さなランタンが置かれており、足元が暗くならないよう配慮されていた。



(あ、これ、さっきの街灯と同じだ)



 ゆらゆらと揺れる、やわらかな光。



「店主さんも、エコですねえ」

「なんじゃ? エコ?」



 思わずそう言うと、先に立っていたおばばが振り向いた。ティラミスは言った。



「こんなにLEDのランタン集めるの、大変だったんじゃないですか? まだそんなに普及していないし」



 おばばは沈黙した後ティラミスを見つめると、「えるいーでぃー?」とつぶやいた。



「前に見たことあるんですよ、こういうの。LED灯って言うんでしょ? 蛍光灯より柔らかくて、熱も少なくて済むから、エコなんですよね」

「明る過ぎる灯は、夜を傷つけるからの。それは、今夜のために客たちが集めたものじゃ」

「そうなんですか! みなさん、エコロジカルな暮らしを心がけているんですね!」

「エコロジカルと言えばエコロジカルじゃろうのう。そりゃ、大気中の力を集めたものじゃから」

「大気中? あ、太陽電池なんですね。自然な力を集めた感じですよね!」

「ああ、まあ、自然な力は集めとるわなあ」



 おばばは片手でばりばり、と頭を掻いた。



「まあ、良いわ。ほれ、招待状は。中に入るのに必要じゃろ」

「あ、そうですね。ええっと」



 ティラミスは、カードを取り出した。



「これ、受付の人に見せれば良いん……」



 そこで動きが止まる。



(あれ?)



 文面が、違っている気がする。



『夏至のお祝い 招待状  『一夜の魔法亭』店主 紅』



「この店って名前、『一夜の魔法亭』、でした?」



 おばばは、ん? という顔をしてから、ああ、という顔になってうなずいた。



「店だって、たまには名前ぐらい変えたいじゃろ」

「そういうものですか?」

「夏至じゃからな」



 だから、なぜすべてが夏至で片づけられるんだ。とティラミスは思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ