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一夜の魔法亭 1 ~ただ茶屋番外編~  作者: ゆずはらしの
夏至の夜の不思議な時間。
10/25

魔法使いと、●るねるねるね。4



* * *



 その後、ねりねりされた駄菓子は、一口ずつ配られた。



「……」



 ウィルフレッドは、渡された物体を眺めたまま、動かない。



「あの、……たぶん、そんなに変な食べ物じゃないから」



 ティラミスがなだめるように言った。じんは厨房に戻ってしまい、ここにはいなかった。



「本当に食えるのか。これは」

「子どもが食べるものだから」

「口にした途端、体が虹色になったり、トサカが生えたりせんだろうな」



 なぜ、トサカ。



「なんじゃ、失礼な若造じゃのう。わしがねりねりした駄菓子じゃぞ。

 そんなけったいな効果をつけるわけがなかろう」



 そこで、声をかけた者がいた。オレンジ色のスーツ。



「おばばさま」

「おう、外の。わしの駄菓子ショーはどうじゃった? なかなかであったろ?」

「えーと、……熱気がこもってて、面白かったです」



 この流れで怪しかったとは言えず、ティラミスはそう言った。

 実際、面白かった。大喜びで盛り上がっている人を見ていると、笑いだしたくなるような面白さを、確かに感じたのだ。



「そうじゃろう。楽しく過ごすために持ってきたからのう」



 かかか、と笑っておばばは、ウィルフレッドが持ったままの駄菓子をひょい、と取り上げた。

 それから男の顎をぐっ、とつかむと口を開けさせ、中身をぽいと放り込むと、無理やりしめた。



「! ! !」



 ぎょっとした男がふごふご、うーうーとうめいているが、気にした様子はなく、あいた方の手でばこっ、と頭をなぐる。



 ごくり。



 はずみでウィルフレッドの喉が動いた。



「あ」



 飲み込んだらしい。



「ひひひ。うまかろう。わしが手ずからねりねりしたのじゃ!」



 得意気に言って手を離したおばばに、ウィルフレッドは口元を押さえ、恨めしげな顔で体を丸くした。



「おばばさま、そんな、いきなり飲み込ませるなんて。喉につめたらどうするんですか!」

「おー、そうじゃの。危なかったかの? ほれほれ。飲み物ならあるぞ」



 そう言って、おばばはカクテルのグラスを差し出した。しかしウィルフレッドは恨めしげな顔をするばかりで、受け取ろうとしない。



「サー・ウィル、大丈夫……、お酒じゃだめよ。あたし、水もらってくる」



 ティラミスはそう言うと立ち上がり、厨房に向かって走った。


 後ろでおばばとウィルフレッドが何か言う声が聞こえたが、とにかく水をもらおうという事しか、ティラミスの頭にはなかった。


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