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でっかい俺とちいさな君  作者: 遠野 雪
第一章 ちいさな人と遭遇
7/40

藤村さんを伴って俺達が入ったのは、駅近くのコーヒーショップ。

この時間なら、本当はご飯食べたいところなんだけど。

初対面の人だし、仕方ない。

そういいながら、ちゃっかりホットサンドも頼んだけどね。

藤村さんは葛西としゃべりながら、チャイのショートサイズを両手で包んでいる。


「……ふむ」


朝は焦りからかちゃんと見てなかったけど、白い肌に少し大きい目。

コートを脱いだその身体は、とても華奢で。

肩につくかどうかの長さの髪をゆるく横に結んでいるから、俺の目には白い首筋がばっちり見える。


――可愛いかも



……いやっ、俺はエロくないぞ。

つい見ちゃうのは、男だからだ!

そして、何よりも暇だからだ!



内心言い訳をしながら、ぼやっと目の前の二人を見る。



ここについて再び朝の事を謝られたけれど、既にクリーニングで口紅は落ちていたからそれを伝えるとほっと胸を撫で下ろしていた。

それから少しお互いの会社の話をしていたけれど、葛西がwebの話を振った途端、二人で盛り上がってしまったのだ。

仕方ないよな、だって取引してる部署だし。

二人とも、本職だし。

まぁ、ゆっくりホットサンド食べれたからさぁ、いいんだけど。

ちょっと疎外感を感じるのは、仕方ないとか思わない?


なので、観察は俺に許された特権だ!

暇な分、じっくり観察しようじゃないか!


「佐木、お前、目がヤバイ」

「……」


脳内思考から目覚めて再びうなじを見てやろうと視線を動かした途端、葛西の言葉に身体の動きを止められた。


……ちっ、ばれてたか……


きょとんとした顔で俺の方を見る藤村さんにばれないよう、ゆっくりと視線を動かして“何もしてませんよ”という顔を作ってみた。

「どうかなさったんですか?」

「……」


お願いします。無垢な顔のまま首傾げないで下さい。

おっさんには刺激が強いです。

あぁ、……ちょっとした罪悪感がっ。


俺はそんな事を思っているとはおくびにも出さず、少し眉を下げる。

「あー……と、その、俺はその手の話はからきしダメだから。凄いなぁ二人ともと思ってさ」

そして暇に任せて、君を観察中でした。ま、そこは内心に止めておくけど。

葛西は嘘付けと呆れた顔をしているが、そこは無視だ!



藤村さんは申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。

「すみません、どうも仕事の話になると止まらなくて。佐木さんにお詫びをするためにお時間を頂いたのに、失礼しました」

そう言って、頭を下げる。

その態度に、反対に俺が焦った。

「いや、失礼なものは何も無く! ていうかお願い、その敬語止めてくれない? なんだか、むず痒い」

「むず痒い、ですか?」

「うん」

「でも、年上の方ですし……」

困ったように呟く藤村さんに、畳み掛けるようにお願いと片手を拝むように上げた。

「俺の方が年上って言ったって、たった二つだろ?」

仕事でもあるまいし敬語で話されると、なんか返答に困る。


藤村さんは困惑顔で、葛西に視線を向けた。

って、おい。なんで葛西を見る。

葛西は助けでも出すように、いいんじゃない? と笑った。

「俺にもそうしてくれると、嬉しいなぁ」

ついでに、それもくっつけて。

って、おい。便乗してんじゃねぇっ。


俺の視線に気付いたのか、葛西はすぃっと視線を逸らして笑ってる。

藤村さんは葛西の言葉で決心がついたのか、分かりました、と俺を見た。

「流石に今すぐは無理ですけど、今後お会いした時には善処します」

全然、敬語じゃん……

思わず苦笑いしそうになって、思い止める。

まぁ、今度があるかどうかわかんないしね。

接点は電車だけど、もうすぐ俺、車通勤だし?

う~ん、ちょっと残念な気がする。


「うん、じゃあその時はよろしく」

「はい」


そう言って笑う藤村さんは、とても可愛くて。



もしかして、一目惚れしたとか? と、今、葛西に言われたら、もしかしたらほんのちょっとそんな気持ちかもしれないなんて答えていたかも。



やっぱり俺って、乙女思考?



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