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でっかい俺とちいさな君  作者: 遠野 雪
第三章 目指すのは
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「……」


静かな空気が部屋に流れた。

誰も返事をしないこの状態。

遥ちゃんと目が合った俺は、久坂に視線を移して頬を指先で掻いた。


「まて、久坂。変態と呼ぶと、返事をする人間が複数いるのだが」

「えー、私達は別に変態じゃないよね? 透」

俺の言葉に祥子が首をかしげ。

「一緒にしないで欲しいんだけど。ここで変態と言うなら、悠斗か祥子だろう?」

透がくすりと笑って、目を細める。


久坂はだいぶ焦れてきたのか、ソファに座ってそろえていた足をゆっくりと組んだ。

っち、お前までなんでジーンズ穿いてんだよ……じゃないじゃない。

思わず足を見てしまった俺は、久坂から冷たい視線を投げかけられて目を逸らす。




「ていうか、どこからばれた」


俺が恐る恐る問いかけると、久坂は両腕を組んで半目で俺を見た。

「佐倉さんから、今日連絡をもらったのよ。いい同期を持ったわねって」

……言葉は嬉しいけど、凄い余計なお世話ですよ~佐倉さん~。

脳裏に浮かんだ綺麗な笑顔に、内心ぶつぶつと文句をぶち当てる。

「で、あんたに朝電話したけど繋がらないし? もしかしてって思って遥に聞いたら、案の定だったわね」

「すみません、話してしまって」

久坂の隣で、俺達に向かって頭を下げる遥ちゃんに慌てて手を降る。

「遥ちゃん、悪くないし。こっちこそ巻き込んでごめん」

「そう、遥は悪くないわ。鎌掛けて聞き出しただけだから」

久坂がそう言って、遥ちゃんの頭を撫でた。

「久坂先輩……」

久坂を見つめる遥ちゃん。

つーか、そこでいい雰囲気作り出すんじゃねぇ。


別に二人の雰囲気を壊したいわけではなく、とりあえず話が進まないことには……と俺は調べたことを久坂に伝えた。

とりあえず話がややこしくなるから、過去、祥子と高橋の間にあったことは後回しで。


最初冷たい目でこっちをじっと見ていた久坂は、俺が話し終えた後、小さく息を吐いて目を瞑った。

その仕草に葛西と一度目を合わせて、再び久坂を見る。




「なぁ、久坂。お前、高橋に何された?」

「……」


しんとなる、部屋。


久坂、と重ねて名を呼ぶと、目を瞑ったまま口を開いた。


「……まだ、高橋部長に何かされたなんて言ってない」

「部長!?」


……


どれだけの人数の声が、重なっただろう。

俺は思わず身を乗り出して、ローテーブルに手をついた。



「何、あいつ。二十七歳で部長? 人生舐めてんのか?!」

「うっわ、生意気ー。高橋の癖に」

「へぇ? あれで部長になれるなんて、私なら社長になれそうだね。代わって差し上げたいくらい」

口々に文句を言う俺達を、久坂はもとより遥ちゃんも不思議そうに見ていて。

首を傾げながら遥ちゃんが小さく手を挙げた。

「あのっ。佐木さん達、相手の方のこと、ご存知なんですか?」

「ご存知と言うかなんというか、はい、祥子。バトンタッチ」

遥ちゃんに答えながら、祥子に視線を向ける。


俺につられるように久坂たちも顔を向けた。


いきなり全員の視線を受けた祥子は小さく肩を竦めて、テーブルにあった封筒から一枚紙を出した。

「うわー、懐かしいなそれ。まだ持ってたのか」

昔見たことのあるその紙に、思わず声を上げる。

祥子はそれを広げてローテーブルに滑らせると、あたりまえでしょと頬杖をついた。


「使えるもの、捨てないわよ」


くすり、と笑う。


うん。怖いよ、従兄でも。


祥子はさばさばしてるしそんなに人を嫌いになる人間じゃないけれど、嫌いになったらとことん嫌う。

どれだけ謝っても許さない程度には嫌う。それでも凄いけど。

高橋はあっさり祥子の堪忍袋の緒どころかそのものを叩き切った感じだから、心底嫌いだしどうでもいい人間として処理されているはず。



「私、高橋 大樹は、佐木 祥子様に二度と近づきません。約束を破った場合は、いかようにも処分を受けます」



身を乗り出した葛西が、淡々と読み終えてその内容に押し黙る。

俺はそれを聞きながら、この紙を書かせた場面を思い出して苦笑した。

いやー、自信満々な男の縮こまる姿は大変楽しゅうございました。

自分のことを紙面上だというのに、様付けを強要する祥子もすげぇと思ったけどね。



「どういうこと?」

久坂の言葉に、祥子は頬杖をやめてにっこりと笑った。

「大学時代先輩だった高橋に告白されて、あっさり蹴ったら嫌がらせされた過去を持ってたりします」

内容とは裏腹の、とても明るい声で。

「え?」

少し戸惑ったように俺に視線を向けた久坂に、小さく頷く。

「途中ストーカーっぽくなって、それでも拒否したら悪意のある噂流されて。だから俺と祥子でちょっと……な?」

ニヤリと笑いながら祥子を見ると、同じ様な笑みを返される。

「あれは、楽しかったわねぇ。ふふ」

二人で思い出し笑いをしていたら、おずおずという風に遥ちゃんが口を開いた。

「何を、した……んです、か?」

その言葉に、ふたりでにっこりと笑いかける。



「秘密」



しん、と部屋が静まり返ったのは言うまでもない。

俺と祥子で楽しくやり返しさせて頂ましたよ、ねぇ?




「私も手伝ったけれど、この二人の鬼畜さには辟易したね」

透が呆れたように肩を竦めるのを、恐ろしいものでも見るように遥ちゃんが視線を向けているのが可愛い。

じゃ、なくて。


「まぁそこらへんはあれだけど、とにかく久坂! 素直になれってぇ。高橋に何されたのか言ってみろよ。悪いようにはしないからさぁ」




あんた、楽しんでるでしょ。


そう睨まれたのは、完全スルーさせて頂きました!



久々の投稿になります。

うん、も少しペース上げたいなと思う今日この頃。

どうも、すみません。



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