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でっかい俺とちいさな君  作者: 遠野 雪
第三章 目指すのは
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「素敵!! 綺麗っ! おねーさま!」

「……佐木?」

おぉ、戸惑う久坂なんてめったなことじゃお目にかかれないぞー。


きゃぁきゃぁ声を上げる祥子と、声を上げられている久坂を遠巻きに見ながら傍にいるちっちゃな頭をゆっくりと撫でる。

「ごめんな、遥ちゃん。久坂に詰め寄られて怖かっただろ」

「え、と。あの……」

そういいながら、戸惑ったような声を上げる遥ちゃんの頭を撫で続ける。


久しぶりなんだぞ! 三週間くらいぶりなんだぞ!

遥ちゃんを補充して、何が悪い!

撫でるくらい許せ。

しかも遥ちゃん、避けたりとかしないし。

なんか当たり前のように撫でられてくれるのが嬉しい。

ふっふっふ、びくびくしていた小動物をやっと手なづけた感じ?

まぁ、諦められたといえばそうなんだろうけどなー。


「佐木、引かれてるぞ」

「あ」

あまりにもにやけていたらしく、遥ちゃんが少し身体をずらしたことに気付く。

「ごめんごめん、遥ちゃんがあまりにも可愛くて」

なんとかにやけ顔をおさめながら、ぽんぽんと軽く頭で手をバウンドさせてそれを下ろした。

遥ちゃんは苦笑しながら、いえ、と目を細める。


「……」


ぐぁぁぁっ、かわいいっ! 可愛いんですけどっ!!

ちょっと頼みますよ、お願いしますからこれ以上俺の変態度上げさせないで。


「佐木」

再び手がぴくぴくしてきた俺に、困惑したようなそれでも怒りものっけた声が名前を呼んだ。

顔を上げると、射殺されそうなくらいの視線と目が合いました。

それは、久坂。

いつの間にかデジカメを持ち出した、祥子に写真を撮られている。


「……祥子、やること早いな」

幸せそうに写真を撮っている祥子に声を掛けると、邪魔するなとばかりに睨まれた。

お前、年上の従兄さまに向かってなんちゅー態度だ。

「佐木」

祥子に胡乱な目を向けていたら、再び久坂に呼ばれて顔を上げた。

「あー、悪い悪い。少し付き合ってやってくれよ。祥子、リーマンとおねーさまが好物だから」

聞きようによっちゃ変態の烙印を押されたはずの祥子は、なんのダメージも受けていないようでフラッシュを大量にたいている。

うん、俺、ここまで変態じゃない。


すると横からするりと手が伸びて、遥ちゃんの肩を抱き寄せた。

「私はこの娘の方が、好きだけどな」

「は?」

その腕の先、そこには。

「透」

細身のジーンズにシャツを羽織った、透の姿。

透は口端を上げてくすりと笑うと、遥ちゃんを見下ろす。

「随分可愛い娘がうちにいるね。悠斗の彼女?」

「えっ? あのっ?」

肩を抱かれて驚いたように身体を竦めて透を見上げる遥ちゃんを、思いっきり奴から引き剥がす。

「おいおい、また人が増えた」

もう呆れて何もいえませんと言うか、驚きません状態の葛西が壁に寄りかかりながらぼやく。

俺は遥ちゃんの身体を後ろにやりながら、透を見下ろした。

「お前、いつの間に帰ってたんだよ。透のいない時間帯選んできたのに」

透はダイニングテーブルに寄りかかると、腕を組んでくすくすと笑う。

「祥子に呼ばれたから帰って来たんだけど、面倒がらずに来てよかった。可愛い娘に会えたからね」

にこりと透に笑いかけられて、遥ちゃんは少し頬を染めてもごもごと何かを呟いている。


って、ちょっと待て!


「……遥ちゃん、もしかして透が好み?」

何その、いかにも“恥ずかしい”みたいな態度。

俺にとったことないよね、そんな態度!

遥ちゃんはぴくりと肩を揺らすと、目線だけ俺に向けてきた。

「あの、好みと申しますか……」

何、その謙譲語。


「佐木って、男の従弟もいるのか」

「「え?」」

葛西の言葉に思わず声を上げると、斜め下からも不思議そうな声が上がって顔を見合わせる。

遥ちゃんは俺たちに見られて少しおどおどしながら、ゆっくりと背後の透を振り返った。

透は表情も変えず、相変わらずにこにこと笑っている。

「女性の方ですよね?」

「え」

遥ちゃんの声に驚いたのは、葛西。

「女? え、マジで?」

おもいっきりガン見状態になった葛西と対照的に、透はぴくりと片眉を上げただけで組んでいた腕を崩して緩く握った拳を口元に当てた。

「やっぱりいいね、この娘。可愛いだけじゃなくて、冷静」

「透。お前、そういうもの言いするから、男と間違えられるんだぞ?」

「別に? 私は自分から男だと言ってるわけじゃないよ? 勝手に勘違いする方が悪いんだ。ねぇ? 遥ちゃん」

目を少し細めて見下ろす透から、遥ちゃんを隠す。

「だからお前のいない時間、狙ってきたんだよ」

「ふふ、彼女が私の好みだから?」

「お前に持っていかれたら、男として落ち込む」

「おや、自信のない」

透はまだ笑いながら、視線を上げた。


「とりあえず、そろそろ祥子を止めたほうがいいんじゃない?」

「え?」

その言葉に顔を上げると、今までに見たことがないくらいおっそろしい表情の久坂が鎮座ましていました。

「格好いいっ! ステキッ!」

響く、祥子の声。

つーか、祥子。

お前……よくこの状況で写真撮れるな。最強だよ……。




さっき久坂から連絡が来た後、勝手に動いていた事がばれたことを知った俺は祥子に車を借りて早々に迎えに行った。

ばれたならさっさと吐き出して、楽になりたい。

犯罪者の心理のようだ。

ちなみに葛西はえさとして祥子に与えてね。

久坂は遥ちゃんと一緒に駅で待っていて、二人を乗せて帰ってきた時、白衣を着た葛西がすげー恨みがましそうな顔で俺を見たけど完全スルーした。

うん。

俺は、久坂の方が怖いからね。

そうしたら、久坂を見た祥子が変態領域に思考を飛ばしちゃってこれまた話がまったくできなくなった。

葛西を最初に見た時の状態。

その隙に、遥ちゃんをなでなでできたから俺的には幸せだったけどねー。



で、今に至る。



向かい合わせのソファに、俺と葛西、遥ちゃんと久坂が座り、祥子と透は傍のダイニングテーブルの椅子に座った。


それぞれ、今更ながらに自己紹介。

「佐木 祥子です、どうぞよろしく」

「佐木 透。一応祥子の姉」


姉!? そう叫んだ久坂。いや、大丈夫だ。

十中八九、皆同じ反応を示すから。


「変態佐木一族……」

ぼそりと言った声、おい葛西、聞こえてるぞこら。

「もう、他に登場人物増えねぇだろうな?」

葛西が玄関の方を見ながら言った言葉に、祥子をみる。

「綾音は?」

祥子は壁掛け時計を見て、図書館と答えた。

「今頃、読書の時間ね。しばらくは帰ってこないかな」

その答えを受けて、葛西に視線を戻す。

「もう一人従妹がいるけど、出かけてるってさ」

「変態一族四人組……」

まてこら、佐木、が消えたぞ。佐木が。

変態を消せ、せめて。



「で? 最初から説明してもらおうじゃないの、この変態」



葛西を睨みつけようとした俺は、久坂の声にフリーズした。




お待たせしました……、といいつつ、あまり進んでいない本編、すみませんm--m

とりあえず、やっとヒロイン遥が登場^^;

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