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でっかい俺とちいさな君  作者: 遠野 雪
第三章 目指すのは
35/40

佐木的飲み会脳内妄想

出先で直接書きしたので、誤字等ありましたらすみません。

本編書けよ、と怒られそうです。

本編のつなぎに、佐木のお馬鹿妄想をご覧ください(笑



「春だねぇ……」


頬杖をついて呟いた声を、隣の席の久坂が拾った。

「あんたの場合、365日毎日頭が春じゃない」

「……」

窓の向こう、花曇の空を見ていた俺は、のんびりした気持ちを邪魔された気分になって横目で久坂を見る。

「お前の場合、365日毎日頭が噴火中だよな」

「――溶岩流してあげようか?」

「……すみません、何でもありません」

溶岩=攻撃

久坂を怒らせることはすまい、面倒だから。


「佐木先輩、合コンしません?」

久坂から視線を外して再び窓の外に戻した俺の横に、後輩の伊藤が立った。

得意げに携帯を俺に見せてくる伊藤に、ばかじゃねぇの、という視線を送ってみた。

「しません。つか、お前彼女持ちだろ? 手袋マフラー禁止の彼女はどうした」

まだ寒い冬の時期、手袋とマフラーを使うなって彼女に言われたとのろけてませんでしたっけね。

伊藤は携帯を操作しながら、別に、と答える。

「それはそれ、これはこれ。ふつーの飲み会と同じ様なもんっしょ」

合コンと名がつくだけで。そう続けた伊藤、お前、俺の横から殺人的な視線を向けられていることに気がつかねぇか、オイ。

「つか、そこ重要。合コンと名前がついただけで、お互い相手探しする気満々じゃねーか。嫌だね、そんなの」

「古っ、一体いつの時代の人間ですか、佐木先輩」

「現代人でーす」

「現代人への冒涜ですよ」


……お前、俺の方が年上って分かって言ってるんだろうな?


再び携帯に目を落とした伊藤を見上げて、椅子の背もたれに体重をかける。

「別に、合コン自体否定はしないよ。ただ、彼女持ちが出席すんのってどうよ。それに、俺はそういうので彼女作りたくないし」

「いいじゃないですか、行きましょうよ、ね? 楽しく酒飲んで、女の子と話せる場なんて最高じゃないですか」

「……伊藤くんて、見かけそのまま軽いのね」

俺の隣で殺人的オーラを発していた久坂が、我慢できなくなったのか内容とは裏腹のものすっごく明るい声で伊藤に声を掛ける。

「え~、見かけもそうですかね? でも重い男より、軽い方がいいなぁ。言われるなら」

そうか、伊藤は軽いと言われたいのか。

久坂は一瞬にして無表情に変わると、伊藤を一瞥して口端を持ち上げた。

「分かったわ。伊藤は軽い、脳内に焼き付けたから」

それだけ言うと、仕事に意識を向けたようだ。

キーボードを叩く音が、何気に不気味だ。


伊藤はまったく気にしていないようで、携帯を手にしたまま俺に向き直る。

つか、気にしたほうがいいぞ。

何気に久坂、お前のこと呼び捨てにしたからな?

てことは、お前の久坂的評価、すげぇ低くなったからな?


「参加してくださいよ、先輩。結構前から、先輩連れてこいって女の子達に言われてるんですから」

「あー? んなこと言われてもねぇ」


いかにもお膳立てされた場で、彼女捕まえるのって俺にはなぁ~

まぁ、それはそれでシチュエーション的に、おいしいところもあるかもしんないけどさー

俺はどっちかってーと……


「飲みには、好きな子と二人で行きたい」

なにやらかちかちと携帯を弄っている伊藤が、俺の言葉に顔を上げた。

「……また、なんかあるんですか。佐木さんのこだわりが」

「またってなんだよ、またって」

「……いえ、何でもありません。今の話、聞かなかったことにしてください」

手のひらを返すようにいきなり話を終えようとする伊藤を、のんびりと呼び止める。

「まぁまぁ、あるよ。こだわりならたくさん。つーかさー」

いやいやそうに振り返る伊藤を座ったまま見上げて、両腕を組む。


「ほんのり赤くなった好きな子の姿なんて、他の奴らに見せたくないだろ?」

その言葉に、伊藤が意外そうに幾度か瞬きをして体ごとこちらを向く。

「珍しく、普通の話っぽいですね。そりゃま、見せたくないとは思いますけど」

なんとなく引っ掛かる言葉があった気がするけれど、まぁいい。



「まず、好きな子を飲みに誘うところから始まるだろ?」



----------------------------------------------------------



目を瞑って、脳裏に思い浮かべる。

誰って、もちろん遥ちゃん!(仮)

ご飯食べに行かない? なら言いやすいけど、飲みに行かない? は、結構ハードルが高い。

例えば凄く仲がいいとか、飲まなきゃやってられないような相談ごととかそんなものがあればいいけど、ある意味信頼関係が少しでもないと、飲み屋には行かないと思う。

酒が入れば、どうしても口は軽くなるし行動もおおらか……といえば聞こえがいいけど、無防備に近づくからね。

それをクリアしたとして、飲み屋に到着。


「ごめんな、いきなり誘って」

ビールを飲みながら軽く謝ると、サワーかカクテル(限定。遥ちゃん(仮)がビールをジョッキで飲むところはちょっと見たくない。久坂なら有りだが)を両手で持ちながら小さく頭を横に振る。

{いえ、そんなことないです}

微かに笑うその表情に、思わずにやけそうになるのを止める。

取り留めのない会話をしながら緊張のほぐれてきた彼女は、楽しいのか少し飲みすぎてしまう。


まったく酔っていない俺は、そんな彼女を優しく見つめて。←ここ重要。自分が酔っ払ったら意味がない


ほんのりと赤く染まった頬を両手で隠すように押さえて、遥ちゃん(仮)は恥ずかしそうにはにかむ。

{すみません、ちょっと飲みすぎちゃって}

「ん? 謝ることじゃないよ。反対に嬉しいかな、楽しんでくれていれば」

 遥ちゃん(仮)は、両手を頬に当てたまま視線だけをあげて俺を見る。

{楽しい、です}

へへ、とはにかむ。


ほんのり染まった目元、赤みのさした頬。

恥ずかしそうに俯く仕草、上目遣いの目線。

何もかもが、すげぇ可愛い。

誰にも見せたくない。



---------------------------------------------------------



「……やべぇ、佐木先輩の妄想に頷きたくなる俺がいる……っ」

ショックを受けたような伊藤の声に、意識を浮上させる。

携帯を握り締めたままその手を震わせている伊藤に、久坂が冷たい視線を送っているけれどそれは気にしない。

「頷け、頷け。いいだろ? こーいうシチュエーションは二人きりじゃないと堪能できない」

組んだままだった腕を解いて、片腕を机につく。

そうやって見上げる伊藤は、ホンキでショックを受けているように見えて、若干複雑だがまぁいい。

「でも……」

伊藤が聞きたいような聞きたくないような、好奇心の混ざった視線を向けてきた。

「佐木先輩のことだから、続きがあるんすよね……?」

「続き?」

続きって、店出てからってことか?

頬杖をついたままの体勢で、そうだなぁと呟く。


「もちろん会計で私も払います、いや俺が奢るから、的な問答をしてから店を出る」

もちろん、ここは奢りな。




-------------------------------------------------------------



酒が入ってふわふわしているのか、隣を歩きながら楽しそうに話す遥ちゃん(仮)と話しながら駅へと歩く。

どうしても身長差があるから、俺を見上げながら歩く遥ちゃん(仮)の足元は結構ふらふらしてて。

よろけそうになる彼女に、そっと腕を差し出す。

「危ないから、掴まりなよ」

あくまでさりげなく、あくまで親切そうに。

決して下心は、欠片も出しちゃいけない←最重要

遥ちゃん(仮)は少し驚いたように俺の腕と顔を交互に見る。

戸惑うようなその仕草に、ぽんっと頭に軽く手を乗せてにこりと笑う。

「転ばないでくれるならいいんだ。遥ちゃん(仮)が、怪我しなきゃそれでいいからさ」

そう言って歩き出すと、くんっと引っ張られて立ち止まる。


顔だけ後ろに向けると、遥ちゃん(仮)の指先が俺のスーツを掴んでいて。

「遥ちゃん(仮)?」

手元を見ていた遥ちゃん(仮)は、おずおずと視線を上げる。

{あの、ここ、掴ませてもらっても……いいですか?}



-----------------------------------------------------------



「いいに決まってる!! もう、いっそのことスーツの上着じゃなくてYシャツの裾にして欲しいっ!」


いきなり叫んだ伊藤の声に、びっくりして目を開ける。

「だろ? 腕より手より、上着の裾! そこを掴むだけでも恥ずかしそうにする、その仕草!」

「やべぇ、佐木先輩に毒されてきた俺ーっ」

頭を抱えて悶える伊藤を笑っていたら、声を掛けられてそちらに顔を向ける。

「ていうか、周りが嫌だな。今まで佐木だけだったのに、これからは伊藤まで参加するのか。佐木の脳内妄想に」

いつの間に来ていたのか、井上さんが自分の席で頬杖つきながら俺達を見ていた。

「俺だってショックっすよ」

「だよなー。しかし、佐木の話を聞いてると、相手の彼女、誰か想像してないか?」

「……え?」


井上さんの言葉に、思わず固まる。


そう、実は脳内では遥ちゃん(仮)としてるけど、口には出していない。

相手の女の子、もしくは彼女と言っているのだ。


「え、もしかして、佐木先輩……。好きな人、いるとか?」

「は?」


恐る恐る口に出すように、伊藤が頭から両手を離しながら俺を見下ろしてきた。


「だから、合コンこないとか?」

「いや、そういうわけじゃ……」


やべぇ、そんなことばれたら……


「おやおや、そんなことは気付いても言っちゃいけないよ、伊藤。佐木宛のバレンタインチョコの数、覚えてるだろ?」

頬杖をついたまま、井上さんがのほほんと伊藤を嗜めるように言う。

つーか、井上さん! 口火はあんただ!

伊藤は信じられないものを見るように俺を見て、うんうんと小さく頷いた。

「確かに。噂が流れるだけでも、大騒ぎになりそう……」

「んな、大げさな」

そこまでならないだろ、と笑う。

「おやぁ、そんなこと言ってられないかもしれないよ? 佐木」

そう言いながら井上さんが何かを指で指すから、それを視線でたどると……



「えっ、まさか? おい、ちょっと待てっ」


今まさにニヤニヤした顔を晒した同僚達が数人、フロアから走り去っていく姿だった。

思わず立ち上がった俺は、力が抜けて机に寄りかかる。

「佐木が対象から外れれば、チャンス増えるもんなぁ。皆、仕事が早い」

はっはっは、と楽しそうに笑う井上さんの声に、がっくりと肩を落とす。

「うわ、すげぇ面倒……。伊藤、てめー……」

胡乱げに睨むと、伊藤はそれどころじゃないらしくぶつぶつと何かを呟きながら席に戻っていく。

「……俺の思考が先輩と同じ……」

めっさ嫌そうに。



「爆弾落とすわ、人を貶すわ、伊藤の野郎……」

はぁぁっと大きく息を吐き出すと、今まで黙っていた久坂がくすりと笑った。

「ねぇ、佐木」

椅子の背もたれに体重をかけて足を組むと、ゆっくりと俺を見上げる。

綺麗に微笑む久坂と目が合う。


ぞくり


なぜか、背中に悪寒が走った。



「なんだよ……」


嫌な予感がするんだけど。

指先で呼ばれて、久坂に近づく。


「あのね、佐木」


「?」


「遥」


「……」


やばい、見透かされていた……


どきん、と鼓動が早まる。

俺の妄想に遥ちゃんを登場していたことを、よもや本人に言うつもりじゃ……




途端、綺麗に笑っていた久坂がにやりと口端をあげた。



「ホントの好物は、生ビール中ジョッキ」



ぽんっと、ジョッキを煽る遥ちゃんの姿が脳裏に浮かんだ。



「え、ジョッキ……?」


でも、梅酒飲んでたよね……?


前飲みに行った時のことを思い出すと、それを見越していたのか久坂の声が響く。


「ビールは飲みすぎてしまうから、梅酒にしてんの。弱いくせに、ジョッキを煽ってぷはーってしたいらしいわよ」

まるでサラリーマンのおっさんのように。


「マジで……?」

「マジで」


……、やべぇイメージが崩れ……


脳裏で、頬を染めた遥ちゃんが、ジョッキを煽ってぷはぁぁっと……


……



「……それもありかも」


にやぁとつい笑ってしまい、即座に久坂に叩かれた。




――ふんだりけったりだ



やっぱり、変態かもね(笑


本編、もうしばらくお待ちください。

出先だと、さすがに書けない……

話が繋がらなくなったりするので。

閑話は書けるんですけどね(笑

お待たせして、本当にすみません。


遠野 雪

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