でもそれはあなたが書いたものではないでしょう?
蔵出し。
その一言を告げられたアニタはわかりやすく固まった。
「素敵な作品でしたけど、それはあなたが書いたものではないでしょう?精霊のお力を借りたと聞きました」
アニタは精霊作家だ。
ペンを持ち、祈りと魔力を与えることで精霊を使役して作品を生み出す。
頭の中にあることを自分の代わりに精霊に書かせているのだ。
たしかに精霊の力を借りている。ただそれはペンと同じで道具として活用しているだけだと彼女は考えていた。
「精霊様を道具扱いですか」
始めの頃は不敬だという思いもあったが遠い昔だ。
「ではなぜ精霊様のお名前を著者名に書き添えないのですか」
アニタは自分の名前しか記載していない。
意図的にそうしていた。理由は本の評判が下がるからだ。
「精霊様のお手柄を横取りしているように思えますわ」
指摘する令嬢は容赦なかった。
正論だった。
アニタは作品を構築する時も清書する時も精霊魔法を使用している。
精霊が書いた方が早く仕上がるし毎日新しい作品を出すことも可能だ。
だがそれだとバレてしまう。
だからわざと2日に一度のペースを保っていたのになぜ気づかれたのか。
「鑑定魔法を使うと文字が光って見えるのです。ご存知なかったですか?」
初耳だった。そんな方法があったなんて。アニタはわかりやすく青ざめた。
「私たちが読みたいのはアニタ様ご自身の作品なのです。今日はそれをお伝えしたくて夜会に参加させていただきました。人が書いたものを読みたいのです。少しくらいうまくなくても熱がこもった文章を」
それだけ言い残して令嬢はアニタに背を向けるのだった。
それでもアニタは改心しなかった。




