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【一章完結】聖剣一族  作者: 横山
断章

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7/7

お引越し先(行くとは言ってない)

 天界にて、白いとしかわからない材質の丸い机の上、瓶は、いや、ヒィロはキィと向かい合っていた。

 両手の指を絡めて顎を乗せ、わずかに首を傾げて瓶を覗き込む黒髪の少年。毛先がそれに合わせてくるんと揺れた。


「次の場所、ハギーヒル王国なんてどうかな?」


 ヒィロを見つめて輝く黒い瞳には、隠しきれない反応を愉しむ光。


『何度目だこの提案。却下に決まってんだろ』


 瓶は呆れたようにチカリと瞬いた。


「え〜、あの子達と気心も知れてるし、居心地いいと思うんだけどね」


 間違ったことは言ってないのだが……気心が知れている対象が問題だった。


『王族はな、てか、お前、自分が嫌がるって知っててわざとだろ?』


「そんなことないですよ。きにしすぎじゃないでしょうか」


 済ましたような顔と口調でそんな事を言ったのちに、ちらりと瓶を見て、苦々しそうな輝きにニンマリと口端を上げた。


『……とにかくハギーヒルは無し、久しぶりにエルフの里近くとかどうかな?あそこは古い本もしっかり保管されてるし』


 気を取り直したようにヒィロが提案すると、キィが驚いたように目を見張る。


「あ〜、それは本当にしばらく平穏に暮らせそうだね。ちょっと世界にはあの一族から離れてもらおうか。最近爆発する間隔が短くなってたし」


『だな。提案してみるか』



---



「エルフの里?考えもしなかったな」


 ルインは目をぱちくりと瞬きながら応えた。


「俺もだよ、記録によると、住むってなったら三百年ぶりだな。あの辺りは皆好きだからな。反対はされないだろうさ」


 父がキィ兄ちゃんたちから提案されたという目的地候補。そのリストの一番上に書かれていた場所に対しての会話だ。


「前回は、周りの国がちょっかい出そうとしてきたから、エルフの里に迷惑かけたくなくてお引越ししたって習ったよ」


「あぁ、里の方達はかなり引き止めたって聞いたな」


 ルインは三年前に一族総出で向かったエルフの里のことを思い出していた。


「あ〜、確かに。ネルのじっちゃんとかその家族とか、すがってでも止めてきそう」


 住んではいないのだが、一族旅行の目的地として選ばれやすいエルフの里。彼らは大人数で押し寄せるにも関わらずいつも大歓迎をしてくれる。


「まずは周辺国の調査だな。僕たちが定住するとして、それが里に悪影響を及ぼさないかどうか。トール伯父さんに頼んで徹底的に調べてもらおう」


 僕の言葉に、父は悪戯を思いついたような顔。


「お、ほぼ決定か。リストの下の方にハギーヒル王国もあるんだが」


 ハギーヒル王国、ご親戚が王族をやってる国だ。

 昔何かあったらしく、できる限り定住先候補からは外すように言い伝えられている。


「……それ、絶対キィ兄ちゃんの悪戯でしょ。ハギーヒルにお引越しなんて決めたらヒィロ兄ちゃんが身体取り返してでも止めにくるよ」


「ははっ、確かにな。俺たちも宮廷作法なんてやりたくないしな」


 親子の会話はその後も続いた。


---



「大変だ!とんでもないことがわかったぞ!!」


「ハイハイ、後で読むから報告書はそこに置いておいて」


 避難所に用意されている執務室で、周囲の国からの嘆願書を片付けながらルインは応えた。


「きーけーよー!エルフの森の開発計画が進んでるらしいぞ」


「あ“?」


 かつてないほどガラの悪い声が当代の口からこぼれた。



---



「んだよそれ〜」


 机に突っ伏して疲れ切った声を出すルイン。

 感情の起伏に体力が持っていかれたらしい。


「ははは、驚いただろう?」


 愉快そうに笑う伯父はもう、全力で楽しんでいるのがよくわかる。


「僕たちが引っ越すかもって聞いてエルフのみんなが場所作り始めたってさ〜、これ絶対キィ兄ちゃんが先回りしてるよね」


「そうだな、そろそろ伝えに来るんじゃないか?」



---



 その日、トールソンが丁寧に一族全員を回り、エルフの森事件という情報を利用した感情の揺さぶりによって、敷地内の至る所でぐったりとしている一族が散見されたとか、されなかったとか。



---



「ぶふっ!すご、あの子達が軒並み戦闘不能になってる」


 水鏡で一族の死屍累々を眺め、キィはひたすら笑っていた。

 腰元では呆れたように光る瓶。


『お前な〜、ちょっとひどすぎるだろ、トールにも入れ知恵しやがって』


 エルフの里の情報をこっそりトールソンへと伝えたのはもちろんキィである。

 この最高神はご丁寧に情報の出し方を細かく指導して、高みの見物をかましていた。


「あはは、こんなになるなんて思ってなかったんだよ。さすがヒィロの子孫だ」


『なんで自分が関係してるんだよ。この激しさはアリルの方の家系かもだろ?』


 不服そうなゆっくりとした強い輝き。ヒィロは一族の祖の1人、かつてのパーティ仲間のせいだと主張したのだが……。


「え〜、僕がヒィロを閉じ込めた後にすっごく怒鳴ってたじゃない『うちの子供達に手を出すな!!』ってさ」


 キィが持ち出した千年ほど前の出来事に、光の揺らぎがぴたりと止まった。


『……あれに関してはまだ根に持ってる』


「ごめんって。何度無理やり眠らせても起きた時絶対怒ってたし。ちょっとうるさかったけどあれはあれで楽しかったな〜」


 ちりちりと、弾けるかのような小さな赤い光。


『……』


「おーいヒィロ、聞いてる?……拗ねちゃった。まぁいいか。あの子たちにはトールが伝えてくれたし、っぷ!疲れてるみたいだから会いに行くのはまた今度にしよ」

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