爆発
「あ、爆発した」
『あ、やっちまったな、隣国。よりにもよって商隊の、ピンポイントであの子の取り寄せた本積んでるとこに手を出すとは……キィ、お前なんか手とか回してないよな?』
「純然たる偶然だね。僕だって驚いてる」
『はぁ、何でうちの子らはこう運が悪いんだろうなぁ』
「遺伝だね、間違いない」
『……自分に対する当てつけやめろ。まぁ、これで今回の騒動も……!?』
「え、そうくる?考えなしだね~」
『うちの一族に軍隊仕向けるとか、あ?この国なに素通りさせちゃってんの?』
「さて、当主であるあの子がいない状態。どうなるかな~」
「うっわぁ、鮮やか~。一切の躊躇もなく全部捨てて一族総逃走か」
『避難訓練も徹底してるからなぁ。が、後が怖いぞ、これ』
「久しぶりに聖剣争奪戦が見られるね!」
『……やっぱりお前の仕組みか!』
「ちょっとだけね、最近同じことの繰り返しで退屈してたんだよ。今回はどんな結末かな~。前回はじゃんけん大会だったでしょ?前々回はくじ引き。久しぶりにトーナメント観たいかも。実質世界一決定戦だし」
『あの辺りの地形が変わっても知らんぞ?』
「いいじゃん、大きな湖とかできたら遊びに行こう?」
『……怒られるのに付き合うくらいはしてやるよ』
商隊を襲った小隊を削り終え、残骸を、かろうじて形を残していた本の燃えかすを埋葬してから、自宅へと戻った僕が見たものは、大量の兵士に囲まれ、半壊した我が家だった。
いまだにもうもうと上がり続ける白煙。笑顔で何やら話をしている平兵たち。
かろうじて残った背の高い物見台には隣国の旗が大きく掲げられていた。
「ま、さか、僕の代で起きるなんて」
この先に待ち構えていることの後始末に肩を落として、一族がそろっているであろう避難所へと足を向け……おい。図書室、崩れてんだが?本棚むき出しなんだが?
今すぐにでも殴り込みたい衝動を抑えながら、僕は避難所へと駆け出した。
避難所へ到着した僕を取り囲んだのは一族の成人たちだった。
「おかえり、ルイン」
おばが優しく微笑みながら手を差し出す。
「私の盆栽、全部壊されちゃったらしいの。剣、渡してくれる?」
その言葉にすかさず前に出るおじ。
「あ、ずるいぞ姉さん!俺が先だ!!」
「えー、私だって怒ってるんだよ!?」
今度は従姉。
「ボクもちょっと今回は参加させて欲しいな」
普段はおとなしい再従兄までもが皆、聖剣を渡せと詰め寄ってくる。
確かに大切なものを台無しにされたという怒りも感じるが、どこか嬉しそうというか、何かに期待しているというか。
いっせいに口を開き収集がつかなくなりかけた頃、ようやく長老達が口を開いた。
「みな、こんな時にどうするかはすでに定まっておる」
最年長のじっちゃんが朗々と宣言をした。
「第263回、聖剣争奪戦、開催じゃ!!」
一斉に、歓声が上がった。
聖剣争奪戦、それは一族総出の復讐戦を行う前に開かれる、出撃順を決めるための一大イベントである。
その時の長老衆が集まって内容を話し合っている間に、こっちで今回の復讐範囲を明確にする必要がある。
つまり、僕は避難所へ帰って早々事務仕事に追われている。
「隣国は確定、範囲制限なし。
この国は……首謀者は第二王子?でも、王家も関わってたんだろ?敵国の軍を素通りさせるとか。他の貴族家はわからないからまだ保留。少なくとも王都までは許可」
こんな時は伯父さんが役に立つ。
情報を集めるのが趣味の伯父は、人脈がとにかく広いのだ。
今回見事に裏をかかれたけど。
トロンが伯父さんからの伝言を持ってきた。
第二王子の血縁から派閥の一覧を書き出していく。
これは……ずいぶんうちを嫌ってる家が多いな。
母は側妃の元公爵令嬢。
派閥には結構有力な貴族もいるけど、それらは何かしらうちと因縁がある家々だ。
そういえば、王太子、第一王子の母親は隣国の元王女だったな?
……いやいや、考えすぎか?うちを政権闘争に巻き込もうなんて馬鹿な真似、しないよな?
「トロン!話し中だとは思うけど、じいちゃん達呼んできて、いや、僕が行くって伝えて。これだけまとめたら行くって」
「わかったよ~、どした、しかめっ面して?」
「なんかややこしいことになってるかも」
「あ、じゃあ俺聞かないことにするよ。じゃ、行ってくる」
あっさりと興味をなくして去っていくトロンにため息を吐いた。
「ほんっと、うちの一族は……」




