表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/38

文化祭のトラブルは図書室で解決します ③

「誰かを困らせるつもりなんて、まったくなかったんだ」

「サプライズのつもりでさ」

「俺たち、文芸部でほとんどなにもしてなかったから、文化祭でなにかしたくて」


と、明日の文化祭の準備をしていた島田・田嶋のシマシマコンビを、図書準備室に呼び出して問い詰めたところ、あっさりと自分たちの犯行を認めたのだった。


「島田の親がやっているお店のクーポン券を『しおり』にして会誌に挟んでプレゼントすれば、少しは会誌の配布に貢献できるかなって、思いついて」

「親も店のいい宣伝になるからって、たくさんクーポン券をくれたし」

「みんなをびっくりさせたくて、内緒にしてただけなんだけど……」


「俺たち二人で会誌を刷った後に、用意した『クーポン型しおり』を挟みこんでいたら、展示用の教室で事故があって……」

「それで、そのまま会誌を図書室のほうに運んで、置いて帰ったんだけど」

「帰り道で、田嶋がクーポンのしおりの残りを眺めてて、加工したり穴を空けたら無効になるって書いているのに気づいて……」

「うちの部って展示予定だった教室で事故があって、今いろいろヤバいじゃん。

 そんな時に『お店で使えないクーポンを文化祭で配った』なんてことになったら、学校もお店も巻き込んでさらにヤバいことになるんじゃないかって話になって」


「慌てて学校に戻って、適当な名前でカギを借りて。

 会誌の入った段ボールを持ち出して、しおりを抜きとったんだけど、遅くなって図書室に戻せる時間がなくなって、見つかりやすそうな階段の下に置いてったんだ……」


 えーっと、そもそも、お店のクーポン券を無許可で学校で配るってだけで問題になりそうだけど。

 配ったあとに、お店に行った人がクーポン券として使えなかったとしたら、どんな炎上をしていたのか、想像するだけで恐ろしい。


 ただ、二人のやったことは頭が悪すぎるんだけど、文芸部のことを考えたうえでの行動だったし、幽霊部員がやる気を見せてくれてちょっとうれしかったし、なにより文芸部としてはこれ以上の問題を抱えたくないし……。


 ということで、シマシマコンビには、罰として文化祭の間は、しおり&POPづくり体験コーナーに常駐してもらうことにして、今回の件は不問にすることにした。

 まあ、今回も、私たちは裁く側の人間じゃないということで……。



 そしてついに、文化祭当日を迎えました!

 会誌から抜き取った「クーポン券のしおり」だけど、田嶋の両親にお店で使えるかどうかを確認して、学校にも配布許可をとり、改めて会誌に挟んでしおりをプレゼントすることにした。

 そうしたら大好評で、なんと! 文化祭開催中に会誌をすべて配り終えてしまい、急遽50冊、増刷することになったのだった!


 文芸部史上初の快挙だ! 増刷は三年生の先輩も手伝ってくれたんだが、初の快挙をみんなで喜んでくれた。

 文芸部を危機的な状況に追い込んだかもしれないシマシマコンビも、もはや反省の色はなく、得意満面な顔で体験コーナーを二日間、完全に仕切っていた。


 体験コーナーは、生徒会から佐久間生徒会長ほか数人が参加してくれて、特に盛況だった。

 しおりは定番のきれいな和紙や折り紙のほかに、自分や家族・友人との写真を使ったり、あくまで私的利用の範囲内で使用することと念押しして! 推しアイドルやアニメのキャラクターの写真をプリントして「しおり」というか、推しグッズを作ったので大好評だった。


 なかには、佐久間君のファンの子たちがその場でいっしょに写真を撮って、それをしおりにしていた。佐久間君は撮影のポージングは慣れたもので、握手したり彼が作ったおすすめ本のPOPにサインをして渡したり、マジでアイドルみたいだった。


 確か、副会長の田辺さんが彼女のはずだけど、大丈夫なのかな? と心配になりつつも写真の撮影や佐久間君と握手したまま手を離さない女子生徒をゆっくりはがしたり、貴重な経験をできたといえばできたかなー。


 POPづくりのほうは、駅前にあるミナミ書店の、沖田店長をPOPづくり指導のゲストとして呼んで、手書きPOPの書き方を教えてもらったりした。

 最近人気のビヴリオバトル(自分の推し本をプレゼンして勝敗を競い合う大会)を意識して、自分の推し本をバトルカード風に書いてもらって対戦(審査員は沖田店長と司書の山口先生)することにしたら、意外と盛り上がったので、今後予定している読書会に取り入れるのもいいかもしれないと思ったけど、どうだろう?


「しおり&POPづくり体験コーナー」には、私の中学三年生の妹、有香も参加しに来てくれたんだけど。

「カウンターにいるの伊藤先輩だよね? 陸上部で人気だった!?

 お姉ちゃんのことを聞いたら、『朝日先輩には、お世話になってます!』だって!」

って言われて、驚いたりしたけどね。

 文芸部や図書委員会の文化祭での活動を見て 「おねえちゃん、すごい!」って有香の中でなったようで、尊敬されたことなんてあまりないから、少しうれしい(笑)。


 教室でのアクシデントから急遽、図書室を文芸部に貸すだけのはずが、いつのまにか文芸部と図書委員会のコラボ企画のような話になってて。

 文化祭の様子は「図書だより」に載せるだけのはすが、新聞部から取材の申し込みがあり、ミナミ書店の沖田店長にも後日インタビューを受けてもらうことになったりした。



 文化祭、二日目。

 シマシマコンビに体験コーナーを任せて、田村が脚本・演出を担当した演劇部の公演『冬が来る前に』を、津田さんといっしょに見にいったんだけど。

 内容がまさかの「学校の図書室で、本の下巻だけが紛失する話」で!

 オチをどうするのかと思ったら、設定を1990年代に変更してて、謎ときのヒントに紙の図書カードが使われていたんだけど。

 途中から、事件のカギになった生徒が実は未来人で、タイムリープしていたことが判明し、急に内容がSFになって下巻の図書カードがトリガーになって事件が解決して、面白かったのは面白かったんだけど……。


 さすがに、ミステリーと思って見ていたら、急にSFになる展開には賛否があったようだけど、結局「さすが鬼才!」と話題になって、田村の名声が高まる結果となったらしい(なんかムカつく)。


 そして、あまり時間がなかったけど、津田さんにアニメーション部の展示室を案内してもらった。

 文芸部の展示とは比較にならないぐらい、立派な会誌の配布やオリジナル作品の上映、華やかなイラストの展示、缶バッジの制作体験コーナー、昔の家庭用ゲーム機の展示や有名ラノベ作家のサインの展示など、文芸部&図書室の展示が大好評とか言っているのが恥ずかしくなる大盛況ぶりだったけど。


 アニメーション部の展示を見ていると、「これ著作権的に大丈夫?」「本当に学校のOKは出てるの?」 と心配になる点がないわけでもなく、それは私が生真面目な文芸部員だからか、図書委員だからなのか。

 この問題は、いずれ誰かがメスをいれないといけなくなる日がくるのかもしれないが、それは今日ではなさそうだ(苦笑)。


 演劇とアニメーション部の展示を見て、そろそろ文化祭も終わりそうなので、図書室に戻って、図書カウンターにいた伊藤に声をかけた。


「伊藤君、図書室の展示の管理を、任せっぱなしになってしまってごめんね!」

「いえ。僕は帰宅部だしクラスでもたいした役割を担当していないので、大丈夫です。図書委員じゃないけど、畑中も手伝ってくれたし。

 うちの学校は一般の人に貸出を行っていないことを知らなくてごねる人もいましたが、ほとんど山口先生が対応してくれたんで……。

 図書員会や文芸部のOBの人とか訪ねてきて差し入れをもらったりして、三年生の先輩も見に来てくれて、意外と楽しかったですよ」


 伊藤、ありがとう!

 そうそう、そのお礼じゃないけど、文芸部の会誌『はとらく』を伊藤に手渡そうとしたら、カウンターの机の上にすでに会誌が置いてあった。

 伊藤が、会誌を手に取って、

「朝日先輩の『うすいさえこ』の作品評論を読みましたよ。

 うすい先生が、もともとライトノベルでデビューして、本格的なミステリーに転向してた話とか知らなかったので面白かったです。

 いまだと普通な気がするけど、当時は珍しかったんですか? 畑中も読んだらしく、『うすいさえこ』ファン同士として、朝日先輩と今度話をしたいって言ってましたよ」

 キャー恥ずかしー! でもー、うれしいー!!

 こんなに楽しい文化祭は初めてかも!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ