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生徒会長から最後に頼まれたこと ⑤

「待ってくれてたの! ありがとう! じゃあ行こうか!」

と、私が会議室に残ってくれていた深津さんと田村と話していると。

 生徒会長の佐久間君が、声をかけてきた。


「朝日さん。伊藤のこともだけど、この一年間、いろいろと本当にありがとう。

 朝日さんなら、図書委員長としてまじめに活動してくれるとは思っていたんだけど。

 こんなに、図書室を、図書委員会を、盛り上げてくれるとは思ってなかったよ」

とお礼を言われたので。


「こちらこそ!

 生徒会や他の委員会がこんなに学校活動の改善をがんばっていたなんて、今日の発表を聞くまで知らなかったよ!

 学校の形骸化したルールの撤廃や規制緩和とか、いじめ問題で学校へ要望を出ししたとか、新しい参加型イベントの開催とか、文化部と運動部の交流とか、いろいろやってたんだね! びっくり!

 佐久間君って、てっきり顔だけで選ばれた生徒会長だと思っていたから、驚いちゃった!

 図書委員会の活動も、たくさんバックアップしてくれて、ありがとう!」

と、私もお礼を返した。


 すると佐久間君は、

「朝日さん、僕のことをそんななふうに思ってたんだ(苦笑)。

 ……朝日さんって意外と口が悪いし、強気な人だよね。一年前はわかってなかったよ。

 あと、図書室と文芸部以外に興味なさすぎるよ(笑)。朝日さんや田村君、深津さんにも、もっと生徒会のほかの活動にも参加してほしかったな。

 それがちょっと残念。

 でも、これからは、生徒会関係なく、友だちとしてよろしく!」

と、最後までさわやかな笑顔で挨拶して、去っていった。


「じゃあ、帰ろうか。深津さん、田村君。

 でも山口先生に会議のこと報告したいから、ちょっと図書室に寄っていい?

 その後、駅前のファミレスに寄ってく?」

「朝日さん、それなら書店にも寄っていいかな?

 見たい演劇の雑誌が発売されているはずなんだ」

「演劇の雑誌なんて売ってるんだ……」

「あるよ! 失礼だな!

 まあたしかに、月刊誌じゃないけどさ」

「いやいやっ、この出版不況ど真ん中のご時世で、演劇の雑誌を刊行してるだけですごいことだよ!」

「朝日さん、江藤ママから影響を受けすぎじゃない?」

「いいですね。私も、アニメ雑誌と新作のラノベをチェックしたいです」

「じゃー、図書室に行って、書店に行って、ファミレス寄って帰ろうか!」


 これで私たちは、図書委員会の委員長、副委員長、書記ではなくなるけど、似たような進路で似たような大学を受験する仲間として。

 なにより普通の友だちとして、受験勉強をしつつ、これからの図書委員会の活躍を見守りたいと心に誓った、寒い冬を前にした10月のある日だった。


Fin.

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