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謎解きは高校最後の夏休みに ③

 図書室に積まれた本のメッセージの件はなんの進展がしないまま、一学期が終了し、私たちは高校生活最後の夏休みを過ごし始めた。


 学校によるだろうけど、夏休み中も図書室は自習室として解放され、貸出業務は山口先生が担当してくれる。

 そしてクソ暑い夏の日の今日は、年1回、図書室で行われる「蔵書点検」の日、別名「棚卸し」の日だ。


【蔵書点検】

蔵書点検とは、図書室にある図書の有無やその場所について確認する作業のことで一般企業の「棚卸し」に相当する。棚卸しとは、企業やお店が保有する製品や商品などの在庫や状態を確認する作業のこと。


 棚卸しのために、図書委員会の三役はもちろん、山口先生や伊藤、清水さん、畑中といった図書委員、佐久間君を筆頭にした生徒会の有志、江藤ほか文芸部の有志、演劇部・写真部・放送部・アニメーション部などの見知った人たちが手伝いとして集まってくれた。

 クソ暑い夏休み中に、集まってくれて、みんなありがとう!


 二年生の関さんも清水さんに聞いたらしく、図書委員会にお礼がしたいと言ってきて手伝いにくれた! うれしい!

 そしてなぜか文芸部の後輩たちに交じって、元・新聞部員で元・迷惑系炎上ユーチューバーの金井、里崎の二人も交じってて。

 こいつら、またなにかやらかすつもりなんじゃないかと警戒したんだけど。


 会うなり「この前はすみませんでした!」って私と清水さんに謝ってきた。

 おまけに棚卸しの作業が始まると、なぜか文芸部部長の江藤の子分みたいに命令をハイハイ言うことを聞いてるので、大丈夫なのかなー。

 しかし、いつの間に江藤があの二人を手懐けたんだ? サイン会の件がきっかけかな?


 不思議に思いながらも数人のメンバーに分かれて、手分けして各棚の本と蔵書リストの付け合わせ作業を始めたんだけど、すぐにおかしなことが起こって……。

 棚卸し作業によって、続々と図書室の蔵本リストにない本があることが報告されたのだ。


 えっ、なんで知らないうちに図書室の本が増えているの?

 蔵書リストになかった本は、図書フィルムが貼られて図書ラベルも張られているのに、図書室のデータベースには登録がされていない! どういこと?

 そして、そういう不思議な本は、数十冊も見つかったのだった。


 棚卸し作業は山口先生が指示出しているので、みんなに作業を続けてもらいながら、私たち三人だけで集まってなにが起こっているのか、図書準備室で話し合うことにした。

 いつものように深津さんがホワイトボードにまとめていく。


・棚卸し作業は、無くなっている本がないかどうかを探すのが目的

・登録されていない本が増えているのは、どういうことなのか?

・これが、本に隠されたメッセージにあった「なにかが起こる」ということ?

・図書室で、本が増えたら喜ぶだけで、困ったことにはならないのでは?


 最初、本はどこか他の図書館から盗まれたものではないかと思ったんだけど。

 それで、盗んだ本を私たちのしわざに偽装しようとしてるとか!?

 でも、どの本も新刊みたいできれいな本ばかりだ。


 貼られている図書フィルムも図書ラベルも管理用のバーコードも、うちで使っているものっぽいのに、なぜか図書室のデータベース(蔵本リスト)には本が登録されていない。


 誰かが、わざわざ新しく図書フィルムと図書ラベルを貼って、図書室に忍び込んで、数十冊もの本を棚に挟み込んでいったの? 誰にも見つからずに?


 これだけ大がかりな作業になると、積読本のメッセージは、やはり複数犯による犯行なのかな?

 本にはうちの図書室で使っている図書ラベルと図書フィルムと同じものが使われてて、貼り方も手慣れている。

 ってことは、図書委員の誰かが犯人なのか、協力者がいるのかな……?


 繰り返しになるけど、本は古びてないし、もし市の図書館のものなら、防犯用タグとかがついてるはず。

 犯人が複数でないと、こんな大掛かりなことできないはず。

 図書委員が関与?

 組織ぐるみ?

 組織ってなに? 組織には誰がいるの?

 うん?


 そのとき、ハッとして、図書準備室を飛び出す、私。

 驚きながらも、私に付いてくる田村と深津さん。

 そして、図書室で作業をしている見知った面々を見つめる。

 私の視線に気づいて作業を止める、みんな、みんな。


「犯人は、この中にいるはず……」


 そう、思わずつぶやいた声が聞こえた人からを、驚いた表情をする、顔、顔、顔。

 周りを見渡すと、左には不思議そうな顔を浮かべる田村と、右には心配そうな顔を浮かべている深津さん。

 そして、目の前にいる佐久間君に、江藤に、伊藤に、山口先生に、畑中に、清水さんに、見知った顔の数々……。


 思わず両隣の田村と深津さんの二人の肩をガッとつかんで引き寄せて、再び周りを見渡して。


「……犯人は、私たち三人以外の、全員……?」


と、声をしぼりだしたとたん、


「「「「「ウワッーーーー!」」」」」


っと、歓声が普段は静かな図書室に鳴り響いた。


「よくわかったな!」

「朝日先輩、すごい!」

「えー、絶対ばれないと思っていたのに!

 信じられない!」

「くそー、サプライズでバラすつもりだったのに!」

 口々に話し出すみんなと、事情が呑み込めない田村と深津さん。


「犯人は俺たち以外、全員?」

「どういうことでしょうか?」


 みんなを代表して文芸部部長の江藤が、

「このあとみんなで『犯人は私たちでした〜』って声をそろえて言う予定だったのに。

 まさか気づかれるとは。

 ねえ、朝日、どうして気づいたのか教えてくれない?」

とたずねてきたので。


 私が、みんなの前で今回の事件の謎解きをすることになった。

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