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謎解きは高校最後の夏休みに ②

 謎のメッセージの件は、残念ながら一度では収まらなかった。

 最初のメッセージから数日後、今度は図書室のはじのはじ、図書カウンターからは死角になる机の上に、また本が数冊積まれているのが発見されたのだった。


 図書室にいる、いつものメンバーで机の上に積まれた証拠品の本を調べてみる。

 積まれた本のタイトルの頭文字をとって並べると、

「う・ら・ぎ・り・も・の、うらぎりもの、裏切り者」

と簡単に解読することができた。


「裏切り者ってなんだろう。

 誰のことを指しているのかな」

と田村が言うと、なんとなく表情が曇ったのが深津さんと伊藤。

 えっ、あれっ? 二人ともなにか心当たりでもあるの?


「これ、田村先輩のことなんじゃないですかぁ」

と、場の空気を読まずにニヤニヤしながら言い出したのが畑中。

「はっ、なんのことだよ、畑中」

「大畑先輩と別れたのって、演劇部の部員は、みんな知ってますよ」

「ばっばか、こんなところで言うなよ!

 あれは向こうから別れたいって言ってきたんだ」

「浮気でもしたんじゃないですか―? だから裏切り者とか(笑)」

「黙れ、犯罪者!」

「犯罪者って! もう何回も謝ったでしょ!」

「いーや。お前は一生犯罪者だ!」


 はいはい、演劇部員同士のじゃれ合いはほっておくとして。

 積まれた本に関連性は今回も見つけられなかった。

 前回と同じように、本のタイトルの一文字目を取ると「裏切者」という単語になるために、本が選ばれただけのようだ。


 こころなしか、顔色がよくない深津さんが「私、ちょっと……」と席を外したので、

「大丈夫、体調が悪いの?

 いっしょに保健室にでも行こうか?」

と言ったんだけど。

「少し外の空気を吸ってくれば、大丈夫です」

と言って出て、図書室を出て行ってしまった。


 すると田村が深刻な顔で「犯人の狙いは深津さんかもしれない」などと言い出す。

 えっ、どういうことよ!


「深津さんをめぐって、またアニメーション部内でいざこざがあったらしい。

 深津さんとはまったく関係ないところで、男子部員の中で『深津さんが誰のことが好きか』でケンカになったんだけど、それで女子部員から深津さんに抗議があったらしい」

 なにそれ! なんで深津さんが責められるの? 意味不明なんだけど!


「深津さんもなー。あれだけ美人なのに、性格がおとなしすぎるんだよねー。

 あの性格じゃなきゃ、俺が演劇に俳優としてスカウトしたいのに」

と、田村が残念そうに言う。


 すると、清水さんが、

「深津先輩と同じ小学校だった人から聞いた話ですけど。

 深津先輩、小学校の頃は明るくて活発で学校でも有名だったらしいんです。

 だけど、小4ぐらいから男子人気がエグくなってって女子に嫌われるようになって、どんどんおとなしくなっていったらしいんです。

 そうなったらそうなったで、さらに男子に人気がでて、すごかったらしいんですよ」


 ……ということは、深津さんねらいの犯行の可能性も考えなければいけないのか。

 もしそうだったたら、許さない! 私が捕まえてやる!

 いったい誰が犯人なのよ!


 とりあえず、また証拠の写真にとって、本はそれぞれの棚に戻した(これだけで迷惑だけど!)。

 それから夕方まで図書準備室であれこれと話をしたが、これといった推理はでなかった。


 それから数日、監視体制を強化した私たち図書委員をあざ笑うかのように、図書室では積まれて放置されたま本が、何度も発見されることが続いたのだった。


 ただ、その後のメッセージの内容はおかしなもので、本の頭文字をつなげると、以下のようなメッセージが浮きあがってきたんだけど。


「好きです」

「腹減った」

「愛してる」

「なにかが起こる」

「後ろにいる」

「犯人はお前だ」


などなど。

 メッセージは一貫性がなくて、具体的な犯行予告にならないものばかり発見されたのだった(変なの)。


 犯人の尻尾を掴めないまま、ついに三年生としての一学期もあと少しになった。

 期末テスト終わり明け、読書マラソンの紹介と参加方法の説明、読書感想カードの書き方のコツなどを説明する夕方の読書活動、略して「夕読」を開催した。

 新聞部の塚本さんに告知に協力してもらったけど、読書会の反省から、無理をして人を集めたりしなかった。

 朝読で読書に目覚めた人が、より読書沼にハマるための会なので、元から読書好きな人は誘いづらいし、読書マラソンも個人で参加できるから、みんなで読書マラソンに参加したい参加者は、なかなか集まらなかったんだけど。

 清水さんの友だちの関さんや鈴木君とか、読書ハマってみたい人、普段は図書室に来ない人まで参加してくれて、あまり読書に興味のない人の意見を聞けたりして、貴重な機会になったかもしれない。

 

 夕読の会が終わり、一学期も残り少なくなったので、居残った図書委員のメンバー数人で、解決していない積読メッセージの件について話し合った。

 いつものように深津さんがホワイトボードに書いてくれる。


・犯人の目的はいまだ不明

・ターゲットは図書室なのか、図書委員会なのか、特定の個人なのか?

・メッセージの内容には一貫性がない

・本の書名の頭文字をそろえたメッセージは作るのに時間がかかる

・何度も犯行が行われているのに犯行の目撃情報がない


 これらのことから、犯人は複数ないし協力者がいる、複数犯人説が挙がってきた。

 うん、ここまで見つからないなると、組織的なものを感じる。


 その目的は謎のままで、狙いが図書室なのか、あうりは図書委員会、、誰か個人なのか?

 メッセージは具体的なことがなくて一貫性がないので、イタズラ目的の模倣犯説もでてきたぐらいだ。

 というのも、なんでか知らないが、一部の生徒にこの件が広まり、話題になり始めているらしく、まねをする生徒が出てるかもしれない!


 なお、最近いろいろあって元気がなかった深津さんとは、先日お泊り勉強会を開催したおかげか、ちょっと元気になってくれたけど(笑)。


 図書室に置かれた積読メッセージの件はなにも進展しないまま、一学期が終了し、私たちは高校生活最後の夏休みを迎えた。

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