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謎解きは高校最後の夏休みに ①

「朝日さん、朝日さん、起きてください。

 もう図書室を閉める時間を過ぎていますよ」


と、私の肩をやんわりとゆすってくる人がいて。

「誰だよ……」と思いながら、目を開けると。

 そこには困った顔をしている深津さんがいた(やっぱりかわいい)。


 梅雨もすっかり明けてクソ暑い日が続く7月。

 先日の図書委員会の会議でやることが決まった「夕読」こと、放課後の読書活動の準備に忙しい図書委員たちのために。

 優しい図書委員長として、図書室のカウンター当番を代わりにやってあげながら、英語の参考書を読んでいたはずなんだけど。


 しまった! 最近、受験勉強で寝不足気味だったからかウトウトして、いつの間にか図書カウンターに突っ伏して寝てしまってたようで……。

 部活終わりに、図書室の様子を見に来た深津さんにやさしく起こされる。

 うわー、参考書によだれがついてる!


 あわててハンカチを取り出して、ごしごしと口の回りを拭いていると。

 深津さんがなにかを見つけたようで、再び私の肩をゆすってきて、

「あれはなんですか?」

と図書カンターの上にあるなにかを指さした。

 まだ頭がはっきりとしないまま図書カウンターを見てみると、そこには積まれた何冊かの本が置かれていた。


「あれっ! やばい!

 私が寝ているうちに借りようとしてカウンターに本を持ってきた人がいたのかな?

 それで、借りられなくて置いていったのかも?」

「目の前に本を置かれても気づかなかったんですかね?

 朝日さん、だいぶ疲れているんじゃないですか?

 受験勉強をがんばりすぎなんじゃ……」


 なんて、閉館時間を過ぎた図書室で、深津さんとワチャワチャしていると、図書室の入口のほうで「ガタッ」と音がして、ビクっとなる二人。

 深津さんが「どなたですか?」と入口のほうに声をかけたけど。

 なんの反応もなく二人でおそるおそる様子を見に行って、入口からのぞいてみた薄暗い3階の廊下には、誰もいなかった……。


 それで、図書カウンターに置かれた本については、次の日に誰かが借りにくるかもしれないと思い、そのまま一日保管しておいたけど。

 とくに借りにくる生徒もいなかったので、スマホで証拠写真を撮るってから、すべての本を書棚に戻した。



 演劇部の活動で忙しかったのか、久しぶりに図書室に顔を出した田村に、この話をして写真も見せたんだけど。

 本は全部で6冊で、上から順に、次のような本が並んでいた。


『ねじまき鳥クロニクル』(村上春樹)

『ライフシフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)

『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)

『冷静と情熱のあいだ』(辻仁成・江國香織)

鉄道員ぽっぽや』(浅田次郎)

『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果)


 うーん、種類も本の大きさもページ数もバラバラで、共通点を見つけることができない。

 すると、写真をじっと見つめていた田村が、

「真実は一つ!」

と叫んで、こっちを指さしてきた。

 またぁ? 今度はなに?


「朝日さん、受験勉強のしすぎで寝ぼけすぎてるんじゃない?

 こんなのすぐわかるよ!

 本のタイトルの頭の一文字ずつを下から読んでみて!」


 いったいなんなのよ。ええっと、

「ね・ら・わ・れ・て・る?

 ねらわれてる?

 狙われてる!?」


 あっ、ほんとだ! えー、なんで気づけなかったんだろう!

 えっ!「狙われてる」って、どういうこと?

 深津さんも気付いたようで、

「これは、なにかのメッセージでしょうか?」

と深刻そうにたずねてくる。


「メッセージだとすると。眠っていた朝日さんあてへのメッセージかな?」

「それでは、誰かが朝日さんを狙っているってことでしょうか?」

「狙っている人って誰だ?

 朝日さんが誰かの恨みを買ってるってこと?」

 えー! それは嫌かも!


 困惑した表情の深津さんが、

「朝日さんに恨みを持つ人なんているのでしょうか?」

とうれしいことを言ってくれると田村も、

「確かに。

 じゃあ、図書室か図書委員会に恨みのある人間の仕業とか?

 たとえば、図書室で下巻の本だけなくなった事件の犯人だったことを突き止められたやつとか?」

「いやっ、田村先輩、僕なわけないじゃないですか!」

と、その場にいた畑中が叫んだ。


 畑中は、例の件以来、図書室に入り浸るようになり、もともと伊藤とも仲が良かったわけだけど、図書館によくいる田村とも仲良くなって、演劇部に入部したのだった。そして、二年生なって図書委員にもなり、今日も図書室にいた。


「じゃあ、文化祭で、ひと悶着あったシマシマコンビ?」

「田嶋と島田の二人は、あれから文芸部によく来るようになって、いまはもう私より文芸部で熱心に活動しているよ(苦笑)」と私。


「じゃあ、朝読嫌いの図書委員か?」

「それ、私じゃないですか!」

と、今度は清水さんが叫んで、田村をキッとにらむ。

 清水さんも、朝読書のメモの件がある前から図書室によく来てて、図書委員の仕事を積極的にやってくれてる。最近は、夕方の読書活動こと、夕読の準備で忙しい。


 みんなー!

 ここが図書室ってわかってるかなー! 静かにしてください!

「田村先輩、ふざけないでください!」

とお怒りの清水さんをなだめつつ田村が、

「じゃあ、あれか? 新聞部をやめた二人?」

と言う。


 そういえば、田村と伊藤には話してなかったなと、

「名前は確か金井と里崎だったけ?

 実はこの前ちょっともめたから、それはありえるかも」

と、サイン会の後にトラブルがあったことをみんなに話すと。


 伊藤が、

「それなら、辞めたうちの一人が逆恨みしてなにを起こそうとして、もう一人が心配して警告してきたとか?」

 と推理する。

 なるほどー、ありそう!

 だけどそこで田村が、これまでの話をひっくり返す一言を。


「考えてみたら、図書館の本って著者名順で並んでいて、書名では並んでないよな?

 朝日さんが寝てて、いつ起きるのかわらないのに、その間に書名の頭文字を並べて意味が通るように選んで、カウンターに置いておくのって、時間的に無理がないか?」

 いや田村、お前が言い出したやつ!

 とはいっても、確かに一理あるかな?


「そうなると、委員長や図書委員会とは関係のないメッセージなのかな?」

「これだけの情報だけじゃなんとも……。

 だれかのイタズラかもしれないし、山口先生には報告して、各図書委員にだけ注意するように警告して、あとは様子を観よう」

と、話をまとめる私と、うなずくみんな。

 単なるイタズラだといいんだけど。と、この時は思っていたんだけど。


 それが、あんなことになるなんて……。

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