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書店で覆面作家のサイン会をお手伝い! ③

 もうすぐ、ぐみさばおり先生のサイン会が始まるタイミングで、西柏店の沖田店長が挨拶に来た !

 パーテーション仕切られたサイン会の入口で伊藤が止めてる間にあわててサイン会用の机に座っていた江藤と、清水さんが入れ替わる。

 入れ替わりを確認した伊藤が、沖田店長を入口から誘導してくる。


「はじめまして。

 ミナミ書店西柏店、店長の沖田健一と申します。

 本日は、当店までお越しいただきまして、本当にありがとうございます!」

と、沖田店長がサイン会の机に座っている清水さんに深々と挨拶する。

 清水さんとは文化祭や読書会で会ったことがあるはずだけど、まったく気づかれなかった。


 横には元・奥さんが立っているわけだが、江藤のことは伏せたまま、出版社に就職したことは知っている。

 その横には、娘の江藤もいるわけだが、それも事前に聞かされていたからか、二人に対してとくにリアクションをすることなく、清水さんと軽く新作のベタボメをしたら、なにも気づかずに仕事にもどってしまった。

 店長さん、ミステリー小説が好きなんだよね? 少しは気づけよ!


 で、サイン会が始まったんだけど、そのときは当然、江藤本人がサングラスにマスク姿で、差し出される本に次々とサインを行う。パネルで囲っているので、外からはサイン会の様子は見えない。

 仕切られたパーテーションから並んでいたファンが順番に入ってきて、嬉しそうに名前を書いた紙を差し出して、それを見てサインをする。一言、二言会話したら、サインした本を受け取り、握手をして、名残惜しそうに出口から出ていく。

 これを数百人繰り返すのか。結構大変だなー!

 アイドルとか声優さんはもっとすごいだろうなー!


 で、サイン会が始まって、ラノベだし、女子高校生作家なので、若い男子ファンが多いかと思っていたけど、女性も多く、年齢層も幅広くて、年配の人も結構いてファン層の幅広さに驚く。

 握手して泣いてる女の子もいて、作家っていうより、まるでアイドルみたい。


 サイン会の列は開始前から100人ぐらい並んでて大盛況だったんだけど。

 2時間ぐらいたってそろそろ終わりそうになったそのとき、外で整列しているはずの伊藤が入口から飛び込んできた。

「大変です! 列に田村先輩が並んでます!」

と周囲を配慮しつつ、私に報告してくる。

 えっえっ! なんで、田村が来るの?


 後日聞いたところによると、

「作家のサイン会に一度参加して経験してみたくて。

 握手会とか行ったことなかったし、ネタになるかなと思って。

 将来、俺がやるときの参考にもなるし」

ってことだったんだけど。


 やばい、ぐみさばおり先生の正体がバレちゃう!

 幸いサイン会の会場はパーテーションで仕切られてて、中は見られえないようにしているし……。


 重ねられたパーテーションとパーテーションの間から、伊藤に誘導されてサイン会の場所に田村が入ってきた。

 左には私が、右には江藤が立ってて、その真ん中の机に座っているのは、サングラスとマスクで顔を隠した江藤のお母さん……。


「え、あ、ぐみさばおり先生ですか……?

 あれ、高校生って噂を聞いてたんですけど……」

と、机に座った江藤ママを見てとまどう田村。


「こんなおばさんでごめんなさいね。

 ネットでおかしなうわさが広まっているらしいけど、実は結構年齢がいってて。

 でも、みんなの夢を壊したくないから、内緒にしててね」

と、なんとか答える江藤ママと、こわばった笑顔の私たち。


「あー……そうなんですね……。

 もちろん、誰にも言いませんよ!」

と力強く答える田村。


 なんとか田村にバレないように本にサインして、握手をする江藤ママ。

 複雑そうな表情を浮かべながらも、その場を去っていく田村。


 それから、なんとか無事に最後の一人までサインして、沖田店長にも再び挨拶して、サイン会は無事に終了した。


 それで、マスクとサングラスをしたままお店を出ると、お店に残ったファンの子たちに見つかるかもしれないということで。

 書店のバックステージで少し時間をつぶしてから、ファンがいないことを確認してお店の裏口から出たんだけど。

 そのとき、まさかの突撃を受けのだった!


「文芸部の江藤さん、あなたがぐみさばおりだったんですね!」

と、裏口の死角になっているところから、スマホをこちらに向けた男性二人が突撃してきたのだ!

 え、なになに?

 ぐみ先生のファン?

 スマホで何か撮っているの?

 これって動画を回してる!?

 あっ、こいつら。

 元・新聞部で、確か金井と里崎っていう、うちの学校の生徒だ!


「文芸部部長の江藤さんが、ぐみさばおり先生だったんですね!」

「なぜ正体を隠して作家をやっているんですか?」

「何か後ろめたいことでもあるんですか?」

「小説が売れてるんですよね?」

「アニメ化の噂がありますが?」

「小説を書くとお金ってどれくらい貰えるんですか?」

「税金対策とかしてますか?」

と、突撃してきた二人が次々と質問してくる。


 これも後で知ったけど、読者会のときに問題を起こした二人は新聞部を辞めたあと、自称・報道系ユーチューバーになったらしい。

 いや、やっていることは、どうみても迷惑系炎上ユーチューバーじゃん!


 やばい! ここは私が江頭を守らないと!

 ネットで見たけど、こういう時はなにかディズニーの曲を流せばいいんだっけ?

 ユーチューブで勝手にディズニーの曲を流すと動画が削除されて、お金にならないから、撮影されても大丈夫って、何かのネット記事に書かかれていた気が!


 なんてことを思い出してる場合じゃなかった! 江藤を守らないと!

 そう思って、江藤に詰め寄ってくる二人の間に、割って入ろうとしたんだけど。

 その前に、江藤ママが、勢いよく江藤と二人の間に割って入った。


「はじめまして(怒)。

 出版社の者です。私、ぐみ先生の担当編集者ですが。

 いまってスマホで撮影しています?

 これって盗撮ですよね?

 どこの生徒さんかしら、いまから学校に通報させてもらいます!」


「ぼ、僕たちはユーチューバーで、報道の自由があって、真実を伝える義務が……」

「うるさい!

 個人の盗撮は、報道なんかじゃありません。

 未成年に対するプライバシーの侵害と、わが社の出版活動に対する営業妨害で訴えますよ!」

 すると、とたんにビビり出す二人。

 江藤ママがさらに追い詰める。


「生徒手帳を出して! 写真に撮らせなさい! それと目の前で動画を削除して!

 それで許してあげる。

 でも、もしいま撮った動画がどこかで公開されたり、ぐみ先生の本名がネットに流出したら、全部あなたたちがやったことだと思って、親御さんか、学校か、警察に通報するからね!」

「そ、そんな無茶な……」

「どっちが無茶よ! 未成年の女の子に許可なく撮影して、許されると思っているの!」


 ママは強し!

 あっという間に迷惑系炎上ユーチューバーを撃退した。

 二人は、言われた通りにしてスゴスゴと帰っていきました。


 そのあとで、駅前のファミレスに行って、みんなで食事をしつつ、私は江藤ママに出版業界の話を、いろいろ聞かせてもらいました。

 とても勉強にはなったけど、やはり厳しい現実の話を聞き、出版業界を目指すのなら、そうとうな覚悟が必要だと、気持ちを引き締めることになりました。

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