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無断で写真を撮るのはルール違反です ②

「すみません。荒井さんを盗撮したっていうのは、本当に誤解で。

 僕は本の名作のあらすじが載っているページを撮りたかっただけなんです」


 うつむいてた佐々木の頭がゆっくりとあがり、こちらを向いて観念した表情で罪の告白を始めた(大げさ?)。


「それも規則違反だけどな」と田村。


 鈴木君の話だと、私たちの推理どおりで。

 冬休みに読書感想文を書くために本を借りに図書室に来た鈴木君は、朝読書用に借りた本の返却の延滞で、本が借りられなくなっていたことに気づいた。

 そこで、名作を紹介している本から、よさげな本のあらすじを写真にとって、それで読書感想文を書こうとと思ったらしい。


 あきれた声で田村が、

「いまどきそんな方法を取らなくても。もっと簡単な方法があるだろ。

 適当に生成AIに書いてもらって提出すればよかったのに」

 と不謹慎なことを言う。

 おい! 田村! 君はそれでも脚本家志望者か!

 生成AIがいろいろと問題になっているの知らないの!?


 すると、くやしそうな表情で鈴木が、

「信じてもらえないかもしれないけど、あらすじを撮った本はだいぶ前に読んだことがあった本なんです。

 手元にあらすじがあれば、内容を思い出せて感想をかけるんじゃないかと思ったんです。

 今日は、図書室の騒がしいからスマホで本を撮っても気づかれないかと思って。

 それで、机の上に本を置いて撮影してみたんだけど、場所が暗くてページが真っ黒になっちゃったんで。

 本を持ち上げて、明るいところで撮ろうとしていたら、荒川さんに見られて。

 本ごしに荒川さんを撮ろうとしているって、誤解されちゃったんです」

 と涙ながらに贖罪してきた。


 ほんとかなー。怪しいなー。

 朝読書で借りたかどうか、図書カードの履歴を見ればすぐわかるんだけど!

 まあ、女子生徒への盗撮じゃなかったし、図書説内でスマホで写真を撮ったことは認めたし、山口先生が戻ってきたら、報告して先生にどうするか判断してもらおう!


 そして、会議から戻ってきた山口先生に真相を報告したところ、

「女子生徒への盗撮は誤解だったものの、紛らわしいふるまいで、荒川さんを不安にさせたことは反省してほしい。

 それに、図書室のなかで本のページを勝手に撮影したのは、さっき説明したように図書室のルール違反だし、書店で行った場合は、俗に『デジタル万引き』と呼ばれる行為になります」

と、しっかりと注意を受けた。


 ただ、そうはいっても図書室で自撮りをしている生徒は他にたくさんいるし……、 

 正直、いちいち問題にしていたら、図書室に生徒がこなくなりそうだ……。

 でも、図書室で騒ぎになったわけで、なにもしないのは荒川さんも納得しないだろうし、鈴木君にはしっかり反省してほしいな。

 山口先生から、冬休み中に新しく読んだ本で読書感想文書くことと、休み明けに今回の件の反省文を提出することですむように、学校には報告するということになりました(パチパチ)。


 荒川さんには、私からスマホに連絡して事情を説明して、彼女を撮影した写真はなかったことと、休み明けに鈴木君が提出した反省文を見てもらうことで、納得してもらいました。

 これで一件落着!

 すっかり遅くなっちゃったけど、図書室の閉館作業をして帰ろう!


「遅くなったから、おなかすいたー!

 ねー、深津さん。田村君、終業日だし、ファミレスによって帰らない?

 家に連絡して、夕飯を遅くしてもらってさ!

「えー、ファミレスの後で夕飯も食べるの?」と田村。

「そりゃ、ママが作った料理は無駄にしませんよ!」と私。

 うなずく深津さん。


 で、図書準備室を出たところで、まだ残っている生徒が一人いたんだけど。

 演劇部の子で、とっても美人な子が、田村に「マサ君……」と話しかける。


 その様子を見た私たち二人はあわてて、

「田村君、じゃあ図書室の閉館作業は任せたね。さようなら!」

と、何か言いたげな田村をぶっちぎって図書室を退出しました。


 いやー、あれが噂の演劇部の彼女か。

 文化祭のお芝居でヒロインを演じているのは見たけど、本当に彼女だったんだ。

 あんな美人な彼女がいて、田村、うらやましー。

 まあ私には、負けないくらい美人の深津さんが隣にいるけどねー!


「深津さん、それじゃあ二人で駅前のファミレスに行こうか」

「はい、よろこんで」

と二人で、駅前のファミレスに向かったのだった。


 二学期の最後に少し大変だったけど事件が解決して、すっきりとした新年を迎えられそう!

 深津さん、約束した通り、図書館デートしたり、お泊りで勉強したり、正月に近くの神社に行ったりしようねー。

 それで、来年も図書委員会で、よろしくね!

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