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記憶喪失の恋人を、もう一度僕に恋させる  作者: 久遠遼
第一章:残念イケメンと記憶喪失の少女
20/39

20初教室

 案の定、学校につくなり僕達は注目の的となった。


 ただえさえ、学校で有名な美男美女。そして、幼馴染みの二人。

 様々な感情が向けられるが、全てに“やっぱりそうなるよね“といったものが含まれていた。


 まあ、それもそうだろう。

 元々が人見知りもあって、サラは僕以外との男子と接するときは、仲良くしていてもかなり線引きや距離感はシビアだった。


 高校入学時は正直異性として見てくれているかは怪しかったけど、クリスマスイブに告白する1ヶ月前くらいからは明らかに様子が違った。


 幼馴染みなこともあり、関わる距離感は近かったけど、それに加えて僕が他の女の子と話していると、露骨に間に入ってきたり、今まで以上に側にいることが多くなった。


 その他にも色々な要素はあったけど、翔真曰く周りからみても幼馴染み以上、恋人一歩手前のような状態だったようだ。


 そして、さっきまでサラは服を摘まんで引っ張るような感じだったのが、今は制服の裾を摘まんだまま僕に身を寄せるようにして歩いている。


 端からみれば関係性が変わったように見えるのは当然だった。

 実際には記憶喪失、思考と感情が別々、人見知りの発動と様々な要因によってのこの状況なのだけど、恋人なのは紛れもない事実ではある。


 だから、僕はいっそ開きなおって堂々と恋人アピールをしながら教室へ向かうことにした。

 

 玄関につくと、目の前には翔真と詩織がちょうど靴を履き替えたところだった。


「おはよーてか二人とも朝からラブラブだね」


 ニヤニヤとした顔で詩織が声をかけてくる。


「おはよ! 詩織ちゃん!」


 さっきまで僕の身体で顔を隠すようにしていたけど、詩織を見るなり僕から離れて詩織の元にかけよった。


 それに少しだけ寂しさを感じつつも、サラが以前のように詩織に心を許している様子を見て安心する。


「お前学校で変にくっついたりバカップルみたいなことは避けるって言ってなかったか?」


 翔真が側に来て苦笑いを浮かべながら小声で話す。


「恋人アピールしながら学校に来るか、周りの人間に対して目潰しをして視界を奪うかの二択しかなかった」


「いや、その二択はね-から!」


 翔真がひきつった表情でつっこんでくる。


「まあ、半分冗談だよ。それはそうと二人とも今日から頼むね。

 僕達でうまくフォローしていこう」


「おう、任せとけ」


「分かってるわよ、だけどサラ少しくらいは頑張って喋ってね?」


「そこまで心配しなくても大丈夫だよ……たぶん?」


 サラは詩織の問いかに自信なさげに答える。

 彼女が極度の人見知りだったのは中学校までだ。今それがどの程度のものかは予想がつかない。

 結局のところは出たとこ勝負で、その場の状況に応じてフォローしていくしかない。


 学校につくまでの緩みきった気持ちを引き締め直して教室へと向かっていく。


「サラ大丈夫、きっとなんとなかなるよ」


「……うん、頑張る!」


 笑顔で答えるサラは少し緊張はあるものの、不安や恐怖といった様子はなく安心した。


 教室へ向かう途中、詩織が少しだけニヤけつつ小声で話しかけてきた。


「ねぇ、昨日とサラの様子違った?」


「やっぱりお前が何かサラに吹き込んだんだね?」


 昨日の今日でサラの距離が一気に近づいたのには何か理由があると思ったけど、思い当たるのはフードコートでサラの様子が少しおかしかったことだ。

 やっぱり、あの時に詩織がサラに何かを吹き込んだのだろう。


「うーん、別に何も対したことは言ってないよ? もしそうだったとしたら余計だった?」


 少しだけ不安そうに伺ってきた詩織に、フッと笑ってから答える。


「いや、ありがとう。サラとの距離が縮まった気がするよ」


 それを聞いて安心したのか、いつもの調子に戻る。


「なら、なんかしてもらわないとね~」


「また、マフィンでも焼こうか? 前凄く気に入ってたし」


「あ、それいいね! 悠人のマフィン最高だからね」


 詩織にお礼として献上するものが決まった時だった。

 ズイと、僕と詩織の間にサラが入り込んできた。


「……私も市ノ瀬くんのマフィン食べたい」


 そう呟いたサラは、少しだけ口を尖らせて頬を膨らませていた。


「あら~ごめんね~サラ。彼氏とヒソヒソ話しちゃって。

 もしかして嫉妬しちゃった?」


 詩織は楽しそうに笑いながら、サラの頭を撫でる。


「もーちょっとやめて、そんなんじゃないもん!」


 サラは頬を赤くして、ますます膨れる。


「大丈夫だよ、サラ。僕は君だけのものだよ」


「もう! だから違うの! それにこんなとこでそんな台詞いわないの!」


 両手を握ってブンブンふって抗議するサラは、見た目の綺麗さに比べずいぶん幼く見え、そのギャップが彼女の魅力をより引き立てた。


「おーい、バカップル廊下でいちゃつくな~」


 少し後ろから呆れ笑いの翔真の言葉が飛んできた。


 そうこうしている内に自分達の教室へと到着した。

 ゆっくりと教室のドアを開けて入る。


「あ! 来たよビッグカップルが!」


 教室に入るなり、村人Cじゃなかった、大森佳奈が声をあげる。


 その声に気付いた教室の生徒たちがこっちを向く。

 その視線に気圧されて、サラが少しだけ僕の制服の裾を“きゅっ“と摘まむけど、後ろに隠れることなく僕の隣に並ぶ。


 やがてすぐに僕たちは、女子たちに囲まれる。


「佳奈ちゃんたちから聞いてたけど、本当に付き合いだしたんだね!」

「教室から外見てたけど、朝から見せつけてくれるね~」

「おめでとう! 遅かれ早かれこうなるとは思ったけど」


 好意的に声をかけてくれてはいるが、その勢いは凄いものだった。

 だけど、サラは小さい声ではあるがそれにちゃんと返事をする。


「……うん、みんなありがとう」


 前の明るくハキハキした受け答えではないけど、それを照れだと勘違いした女子たちはさらに盛り上がる。


「きゃ-照れてるかわいい!」

「いいな~いいな~」


 わいわいと盛り上りが収まらない様子にどうするべきかと少しだけ悩んでいると、“パン!“と手を叩く音がした後、詩織がずいと前に出る。


「はーい、できたてカップルの邪魔はしないの!

 今は二人をそっとしておかないと、あまりの初々しさといちゃつき感で胸焼けするわよ~」


 詩織がそう言うと、女子たちは収まらない熱はそのままだけど、素直に元々いた場所に戻っていった。


 詩織はその性格からクラスの女子の中でもかなり影響力をもつ。

 本当に頼りになるなと、アイコンタクトをしてお礼を伝えると、そのまま教室の窓側後の僕とサラの席へと向かった。


「サラの席はここだよ」


 そう言って、一番端の席を指し示す。このサラの席は僕があれこれと手を回して確保した。僕の近くかつ教室の端という、授業中に他の男子の目に触れにくい席を確保したのだけど、今のサラの状態にはとても都合がよかった。


「うん、ありがとう。ふぅー」


 席に着くとサラは大きく息を吐いた。


「よく頑張ったね」


 微笑みながらそう声をかけると。サラは嬉しそうに答える。


「えへへ、早く学校に慣れないといけないからね!」


 詩織の助けもあり、朝一の関門は突破することができた。

 翔真は女子の圧力に負けその場に立ち尽くすだけで全く役に立たなかった。

 

 

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