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亜麻色の髪の乙女1

「チイナ?」


 アオネコは、ベッドから降りてチイナを探した。チイナの姿はどこにも無い。

 ただ、脱ぎ捨てられた制服と、カバンだけが部屋に残されていた。

 アオネコは、カバンの前に座って、呆然とそれを眺めてから、ジッパーを引いた。

 中に手を入れて、チイナのスマートフォンを探す。スマホを持って、何処かへ行ってしまったのかも知れない。

 ふと、指先が、何か触りこごちのよいものに触れた。摘まんで、カバンの中から引き出す。

 それは、『アオネコへ』と宛名の書かれた手紙だった。

 アオネコはふるえる手で、その封を開けて、手紙を広げた。




 青生野寧仔あおの ねいこ


 これを読んでいるってことは、私はもういないんだね。


 本当は、こんな形で手紙を書くのは嫌だった。でも、いつかのときのために、ちゃんと伝えておいたかった。


 メルティ・イヤーを使い続けて、もし私に何かあった時のためにこの手紙を貴女に残します。


 ねぇ、アオネコ。 私は、あなたのことが大好きだよ。ずっと一緒にいたって思ってた。


 だからね。


 私のことを忘れなくてもいい。でも、あなたには、生きてほしい、この世界で。


 私のために時間を止めたりしないで。私のために人生を捨てたりしないで。


 私がいなくなったら、あなたには自由な人生を歩んでほしい。


 アオネコ。


 あなたは私の大切な人。

 誰よりも特別で、誰よりも大好きな人。


 でもね、私は願ってる。


 あなたが、私だけの世界に閉じこもらずに生きていくことを。


 私と過ごした時間は、かけがえのないものだった。

 でも、それだけがあなたのすべてじゃない。


 私たちが一緒にいた時間は、あなたの人生の"始まり"にすぎないんだよ。

 これから先、あなたはもっともっと広い世界に出て、たくさんの人と出会ってほしい。


 新しい友達を作って、いろんな人と笑い合って、傷ついて、それでもまた誰かを愛して。


 太陽の下で、風を感じながら、自由にのびのびと生きてほしい。


 あなたには、その権利があるんだから。


 私はもういないけど、あなたはこれからも生きていく。

 そして、あなたが幸せに生きてくれるなら、それが私にとっても最高の幸せだよ。


 だから、お願い。


 どうか、自由に生きて。


 どうか、あなたの人生を、あなた自身のものにして。


 なんだかすごく当たり前のことを言っているみたいだけど、私にとっては、それが一番の願いなんだ。



 ねえ、約束して。


 私の代わりに、生きて。


 私の代わりに、愛して、愛されて。


 私のことを、愛してくれてありがとう。


 そして、私のために、生きて。


 宇宮千生那うのみや ちいな


 PS 返事は、YES




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