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11/38

レントより遅く1

 熱い吐息を細く長く吐き出す。二人は、寄り添いあって微睡みの後のように薄目を開けた。快楽の渦はまたすぐ近くにあり、おきを持ってくすぶっている。チイナはそのおきに触れないようにつとめながら、なるべく平生に帰ろうとしていた。

 だがおきは心の中で燃えたまま、チイナの体を未だに火照らせている。


(だめだ……)


 チイナはかぶりを振った。また抗えない。しかも今度は、もう一度メルティ・イヤーを使ってしまいたい。

 ふいに、アオネコの手がチイナに伸びて、顎をとらえる。

 アオネコはチイナの顔をくるりと自分の方へ向かせると、その唇にキスをした。


「ん……!」


 いささか乱暴で、ぶっきらぼうなキスだった。アオネコの唇から、真っ赤な舌がちろりと飛び出し、チイナの唇を割って中に侵入する。


「ふっ……ぁ……っ」

「っ……ん……」


 アオネコの舌に誘い出されたチイナの舌が、絡む。

 二人は舌を絡み合わせながら、唇を深く重ね合わせた。思うさまチイナの口腔内を弄って、アオネコが、唇を離す。


「っ……うー……」


 苦し気にチイナが呻いた。アオネコが彼女の顎から手を離す。


「チイナ、落ち着いた……?」

「ふえ……」


 チイナが気の抜けた声を出す。二度目のキスだけど、また不意打ちされて、気持ちがそちらに動いてしまった。メルティ・イヤーのことが、何処かへ行ってしまった。チイナの頬が真っ赤になる。アオネコが頭を掻いて、チイナに謝った。


「ごめん、キスしなきゃ、やってられなかった」

「うー……いつもだけど、不意打ち、卑怯……」


 自分の頬に両手を当てて、チイナは文句をいった。そして、ふっと気が付いた。


(やってられない)


 やってられないと、アオネコは言った。


(もしかして、アオネコも、メルティ・イヤーをまた使いたかった?)


 それで、不安に駆られてキスをしたのかも知れなかった。チイナは、アオネコのバツが悪そうな顔を見つめる。

 チイナの手がアオネコの手に伸びて、ぎゅっと握りしめる。

 アオネコが、はっとしてチイナの手を握り返した。


「アオネコ、ありがと……」

「いや……何か、もっかいシたくて、堪らなくてさ。あとキスしたかったから……した」

「なにそれ」


 ぷっと、チイナが噴き出す。何だ、単純な理由もあったのだ。

 アオネコも、ぎこちなく微笑む。

 チイナは思う。アオネコはチイナを好きと言った。きっと、チイナの【好き】とアオネコの【好き】は違う。チイナの好きは友情として。アオネコの好きは……愛情の方だ。

 お互いの好きは微妙に違う。そこだけが、チイナとアオネコのズレだった。

 でも。


「でも、ありがと、えへへ」

「うん?……ふふっ」


 チイナとアオネコは、滑り台の下で二人寄り添いながら、微笑み合う。


 しばらくして、チイナが中腰になり滑り台の下から這い出た。

 アオネコも後に続く。チイナがくるりと振り向いた。カバンの中に手を入れて中を探る。

 ややあって、カバンから四角いものが顔を覗かせた。

 それは、小型の一眼レフだった。


「アオネコ!写真撮ろ!」


 チイナがカメラを構える。アオネコが、髪をかきあげて言った。


「ん?久しぶりだね」

「えへへ!何か、気持ちが湧いてきてさ!ブランコ乗ってー!」

「はいはい」


 アオネコはゆっくりとブランコに向かって行き、二本のチェーンを握りしめると、座板に足をかけた。

 そろそろとアオネコがブランコを漕ぎ始める。チイナが、パシャりとカメラのシャッターを押した。


 まるでメルティ・イヤーを使う以前に戻ったような気がして、二人は、日が暮れるまでそうして戯れていた。










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