14話_バトルロワイアル_原生林での死闘
霧が晴れ、周囲を見渡せるようになった。
わかには信じがたいが、広範囲に霧を自由に出したり消したりする装置を持っている奴が主催側にいるらしい。
一応広場から離れた木陰に身を隠してはいたが、まだ広場には状況を飲み込めずに突っ立っている人が何十人もいた。
別に自分もまだ飲み込んでいる訳ではないが、状況が状況なだけにとりあえず身の危険は回避する必要がある。
バトルロワイアルの基本は、周りが殺し合いしている中物資を集めて最後の生き残りを殺して漁夫の利を得ること。
しかし、これはゲームではない。
急に一般人が殺し合いしてくださいと言われてやりますとはならないのだ。
となれば、奴らは殺し合いをせざるを得ない状況にさせてくるはずだ。
そういう手段を取られる前に、脱出経路の確保を行う必要がある。
バトルロワイアルなんか誰が付き合うかっての。
広場とは反対側の森の方を見渡すと巨大な広葉樹が生い茂っており、巨大な岩には苔がむしていた。
真っ直ぐな杉の木のような人工的に植えられた木はないので、原生林という場所なのかもしれない。
草むらのような場所はなく、身を完全に隠せる場所は限られてくる。
今の手持ちの道具は、スマホ、財布、ベルトぐらいか。
使えそうなのはベルトだけだな。
その辺から、長さ50cm太さが二の腕ほどの広葉樹の木の枝と、拳ほどの大きさの石をいくつか拾ってきた。
木の棒に石を添えてベルトを巻き付けて固定し、即席の石斧を作成した。
試しに振ってみて、石がすっぽ抜けない事を確認した。
とりあえずこれで身は守れる。
脱出経路を探るべく電波が入らないスマホを開いてコンパスアプリを開く。
とりあえず、南に進むか。
どこの方角からどこの方角へ向かったという情報を得るのは役に立つはずだ。
方向を決めた矢先に、やけに濃い霧がまた発生して視界が悪くなっていた。
そして何よりも蒸し暑い。
まるで窯風呂の蒸気のようにこの霧は熱を持っていた。
こんな場所に長居していたら死んでしまう。
深い森を南下して1時間近く経ち、日の光が差し込む場所を見つけた。
そこは高さが100mはありそうな断崖絶壁の渓谷だった。
真下には川が流れているが深さもわからないし、とてもじゃないが飛び込んでいいような高さではない。
川が近いという事もあり、原生林の中にいるよりは涼しい。
何とかこの崖を降りられる場所を探るべくその崖沿いに歩くことにした。
だがどれだけ歩いても、この崖が緩やかになる事はなかった。
もしかしたらここは、出島のように出っ張っている場所なのかもしれない。
バトルロワイアルなら、逃げられない場所で殺し合いをさせるはずだ。
この高温の霧も、脱落者を出すための舞台装置って訳か。
かなり歩いたのと、窯風呂のような霧でかなり喉が乾いてしまった。
この時、ようやく自分が初動をミスった事に気付いた。
脱出経路よりも、水の確保が最優先だった。
ここは自販機がその辺にあるような場所でも、蛇口を捻れば水が出てくる場所でもない。
人間は水が飲めないと2~3日で死ぬというが、この場所に至ってはずっとサウナの中にいるようなもので数時間で死ぬだろう。
絶対に逃げられないという情報を得る代わりに、体力をかなり減らしてしまっていた。
まずは飲み水を探す事を優先した方が良い。
そう思い、方向を変えようとした瞬間。
ガサガサっという音が森の中から鳴り響いた。
・・・・誰かいる。
息を飲み、汗にまみれた石斧を握りしめて音の鳴った方向へ音を殺して足を進める。
「コリャ、大人しくせんか、この!」
木陰から覗き込むとそこには、汗だくの小学5,6年生くらいの少女と爺さんがいた。
爺さんは、息を荒くして少女に馬乗りになり殴りかかっている。
少女は既に何発か殴られたようで顔面は汗と涙と鼻血でまみれており、両腕で爺さんのパンチを防いでいた。
殺すにしては効率が悪い。
チョークスリーパーで絞めればもっと簡単に殺せるはずだ。
しばらく様子を見ていると、どうやら殺そうとしている訳ではない事がわかった。
「いやだ、誰か助けて!!お母さん!!」
少女が泣き叫ぶも虚しく、目が血走った爺さんが少女の衣服を破る。
「静かにせんかぁ!!」
少女の顔面にゲンコツがめり込み、滝のような鼻血と涙が溢れる。
少女は抵抗を諦めたのか、四肢の力が抜けぐったりとしていた。
爺さんはズボンを下して下半身を露わにする。
少女はこれから訪れる運命を悟り、目を瞑っていた。
爺さんは、隆起したそれを幼女の股間に突き刺した。
「い"っ・・・・」
「あぁ~気持ちええ、夢見心地じゃぁ」
股間からは、血が流れ出る。
そのまま10分近く性交は行われ、突然爺さんの腰の動きが激しくなる。
「もう限界じゃ!中に出すぞ!!」
「やだぁ、嫌だぁああああああ!!!」
「あああああ!!!」
突然、爺さんの腰の動きが静止した。
「全部出るまで、我慢せぃ・・・」
「う、っうぅ・・・・」
どうやらこの爺さんはこの暑さにより、死の淵を悟って小さい女の子に自分の種を仕込んだようだ。
自分はその様子をずっと木陰からぼーっと観察していた。
そんな異様な光景を目の当たりにしても、何をすれば水分を補給できるかだけ考えていた。
水分不足により、まともに思考が巡らない。
既に口の中はパサパサに乾燥しており、少し頭痛までしている。
時間が経つにつれてこの霧の温度が上がっているし、このまま水分が補給できなければだとあと1時間で何もせずとも死ぬ。
サウナに1時間も居続けたら意識を失うのと同じ状況だ。
これから水源を探して彷徨い歩いている余裕もない。
そこで閃いてしまった。
簡単に水分を補給する方法。
爺さんの事が終わると共に、ザッザッザッと、森の奥から2人に向かって全速力で誰か走ってくる音が聞こえてきた。
ドスっと肉を蹴り飛ばす音と共に爺さんが地面を転がる。
高校生くらいの少年が怒りを露わにしていた。
そして服も体もボロボロの少女を目の当たりにし、少年は絶句する。
「なんてことを・・・この爺、自分が何をしているかわかっているのか!?」
「う、うぅ・・ゴホッ、ガハッ」
「大丈夫かい?」
少年は上着を脱いでうずくまっている幼女にかける。
「う、うぅ・・・ヒック、怖い・・・」
幼女はただ泣くしかできないようだ。
その様子を見て少年は激昂した。
「お前は、絶対に許さない!!!」
正直、爺と少女なら簡単に殺せる。
だけどこの少年は少し手こずりそうだ。
憤ってお爺さんに襲い掛かろうとした瞬間に、身を隠していた木陰から斧を全力で投げつけた。
今が絶好のチャンス。
「なっ!?」
間一髪少年は身をよじって躱す。
「凄いね、あれ躱すんだ。失敗しちゃった。」
「どういうつもりだ?」
「お前を殺すつもりだ。」
「なっ・・・!?」
「理由は言わなくてもわかるよな?」
「お前もこの子に、危害を加えていたのか?」
少年の目の奥に、憎しみの炎が燃え盛るのを感じた。
「別にやっていないけど、信じてもらう必要もないか。」
少年はあの窯風呂のような森の中を走ってせいか、肩で息をして汗だくだ。
お互い消耗しているが、殺すなら今しかない。
少年へ向かって全力で突っ込む。
いきなり俺が全力で突っ込んでくるのを意図しなかったのか、少年の体がビクッと強張るのを見逃さなかった。
両腕で髪の毛を掴んで、膝蹴りを数発顔面と腹部にかます。
身をよじって逃げようとすると自分の頭皮が痛むデッドロックが完成する。
そのまま大人しくなるまで膝蹴りを続けた。
そして転がっている手斧を拾ってぐったりしている少年の後頭部に思いっきり振り下ろした。
後頭部から血液が流れ出て、血だまりになる。
「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
少女の金切り声で、存在を思い出した。
少女と老人の方を向くと少女は、あまりの恐怖で泡を噴いて意識を失っていた。
老人は既に事切れているのかうずくまったままだ。
とりあえず危険はないと判断し、血だまりに顔を近づけた。
これから自分が行おうとする事を想像すると、吐き気が止まらない。
しかし、ここで飲まないと間違いなく死ぬ。
人間は水を飲まなければ生きていけない。
水分欲しさに文字通り死に物狂いの奪い合いを起こせる。
このバトルロワイアルの本質は、他人から殺される殺されないとかじゃない。
この環境で生き残れるか否かだ。
極限状態になっても、小さな子供を守ろうとしたこの少年に敬意を払い
「頂きます」
そう呟いて血だまりに口をつけて、血を口に含んで飲み込んだ。




