13話_バトルロワイアル_開戦
目が覚めた時、自分がいたのは霧深い森の中だった。
大きな木に寄りかかって眠っていたようだ。
寝ぼけた頭で思い出す。
確か自分そっくりな人間に襲われて、呼人神社へ逃げ込んで巫女さんからその正体がドッペルゲンガーだという真実を知ってから、小杉先輩の霊に襲われてもう一回殺した後に意識を失った。
で、今どこだ?
巫女さんから更に地獄が待ってるとかなんとか言われた気がした。
ポケットからスマートフォンを取り出して時刻を確認する。
朝の7:50分。スマホは圏外で連絡はできないようだ。
とりあえず、道らしきものを発見したので沿って歩く。
道と行ってもコンクリで舗装された道ではなく、土でできている田舎道だ。
かなり霧が濃く肌寒い。
200mほど先に人が何人か集まっている広場を発見したので向かった。
かなり開けた広場だ。遊具のない公園という感じか?
どうやらこの広場には100人ほどいて老若男女問わず人々が集まっていた。
中には子連れの母親までいる。
自分が広場に入ってきた事に気付いたのか、人がわらわらと集まってきた。
40代ほどの男性が話しかけてきた。
「君、ここがどこかわかるかい?」
「いいえ、全く。自分はこの道の先から歩いて来ました。」
「どこから来たんだい?最後にどこにいた?」
どうする?正直に話すか?
いや、でもこの状況自体が冗談みたいな状況だ。
ある程度正直に話してもいいかもしれない。
「変な話なんですが、神社で幽霊に襲われて応戦した後に意識を失い、気付いたらこの森の木に寄りかかって寝ていました。」
その証拠に、両腕を引っ掻かれた生々しい傷跡を見せる。
嘘は言っていない。
「そうか、やはりか。」
その反応は意外だった。
「あの、皆さんは?」
「私は電車で寝ていて、知らない駅に到着していた。そこから、化物に追われて意識を失い気が付いた時にはここにいました。」
1人の女性が、まだ周囲を不安そうな表情で見渡しながら身に起きた不可解な出来事を話した。
「他の人も同様だ。腕が何本も生えている化物に襲われて意識を失ってここにいる人や、奇妙な道に迷い込んでここに来た人、普段通り学校に行ったら誰も居なく、見たことのない用務員に襲われてここに連れてこられた子供もいる。」
「一体、なんなんでしょうね。」
「ああ、皆困惑している。だが超常現象のような物に遭遇してここにいるというのは共通している。」
「あの、誰か一人でもスマホの電波入っている方はいますか?自分のキャリアですと圏外になってしまうみたいで。」
私のは入らない、俺のも入らなかった。とりあえずここにいる全員は電波入らないようだ。
「私が話した人達も全員圏外だった。救援を呼ぶのは恐らく無理だ。」
何となく理解はした。
「あ、え~皆さん。広場へお集まりください。」
広場の中央からどでかい女の声が鳴り響いた。
どうやらメガホンを使っているようだ。
訳の分からない状況で招集がかかり、情報を集めようと皆中央へ集まった。
「は~い、みんなこっちだよ~集まって~。」
喋っていたのは、20代に行くか行かないかくらいの同年代の女が手を振っていた。
肩が丸出しの縄文土器のような模様の入っている中華風の着物を着用している。
どこの民族衣装なのかわからないが、なんとも見たことない奇妙な服装だ。
そしてその両脇には日本刀を携えた甚平の様な服を着ている白髪でセミロングの少女と、20台半ばほどのオールバックでスーツ姿の長身の男が一人。
計3人が学校の校庭にあるような高台の上に立っていた。
「え~初めまして。皆様お集まり頂きありがとうございます。」
「私、神亡呼詠と申しまして、この森に皆様を誘拐した黒幕でございます。」
「なっ!?」
周囲がどよめく。
「何の目的だよ!!」
「早く元居た場所に返してくれよ!!」
周囲の野次を無視して選挙の演説の様に、神亡呼詠は続けた。
「私が皆様を集めた理由は、ここにいる100人全員で最後の1人になるまで殺し合いをしてもらうためです。3日後までにもし1人以上生き残っていた場合、全員死んでもらいます。」
言っている事が理解できずに場に静寂が流れた。
「な、なにを言っているんですか?」
「そんな馬鹿げてる。」
常識人の反応がチラホラ出てきた。
「子供もいるんです、早く家に帰してください!」
本当に悲壮な感じの母子が嘆願の声を上げてたにも関わらず現実は非常であった。
「まぁ皆さん不満もありますよね。まぁご理解頂けなくてもやってもらいます。」
「100人が死ぬ事で最後の1人だけ生き残れるわ。みんな頑張って殺し合ってね。」
この女、すっごい適当に流しやがった。
っていうか今なんか人数計算が合わない事話してなかったか?
「おいゴラァ待てや、クソアマ!!!」
パンチパーマの筋肉質な男が怒鳴った。
どうやらヤクザの関係者なのか、龍の和彫りの刺青が右腕に入っている。
「何勝手に話進めてんだよ。」
ごもっともです。
「従わないと痛い目に遭うわよ?これから殺し合いするのに怪我するのは・・・」
女が言い終わらないうちに男が喋った。
「あ?何言ってんだテメー?」
ガンを飛ばしながら、男が台に近づいてきた。
どうやら一悶着ありそうだ。
「時間が惜しいわ、零花お願い。」
「はい。」
2人のやりとりの声が聞こえたと思ったら、白髪の少女が台から消えて男の懐の間合いにいた。
「なっいつの間に。テメェ!」
白髪の少女は男が存在に気付くや否や、男の腹部に刀の持ち手部分の頭を突き立てた。
ドスッといった鈍い音の後に、崩れ落ちる男。
「う、ぐ、があああああああああ」
完全に鳩尾に入ったようで、悶絶して地面を転げまわっている。
恐ろしいのは、刀を抜いていればもう死んでいたという事実だ。
少女がこちらを見渡し、大きく目を見開く。
何か巨大な圧を感じた。
自分が鈍感なのかその正体はよくわからないが、とても力強いものな気がする。
周囲の人はその圧を目の当たりにし、完全に怖気づいてしまっているた。
小さい子供を抱えているお母さんは、その場にへたれこんでしまった。
「他に意見のある人はいますか?」
「それでは、この霧が晴れたらスタートです。身を隠すなら今のうちですよ~。」
濃霧で視界が一気に悪くなり、ざわめく声だけが聞こえてくる。
一気に霧が濃くなり、目の前が1mほどしか見えなくなった。




