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*51* ほっこりお世話タイムや〜

 たまたま見つけたちっちゃい怪獣さん。


 冒険者に商団ギルド関係者と、たくさんのひとが共同で生活する旧ブルーム城内において、人目につかないよう、わたしの部屋につれ帰ってきた。


「ところで、ワイバーンのこどもって、なに食べるの?」

「わっかんない!」


 そんなこんなではじまった、行き当たりばったりのお世話タイム。


 ノアが食堂からもらってきてくれたわたしたちのお昼ごはんの中から、おなかをすかせてピーピー泣いていたおこさまが食べてくれそうなものをチョイスする。


「はーい、お口あけて。あーん」


 正直、口に合うかな……なんて心配だったり。


 でも、わたしが声をかけるとぴたりと泣きやんで、くりくりとしたエメラルドの瞳をかがやかせながら見上げてきたドラゴンもどきさんを前に、それは杞憂に終わった。



 パン、食べる。

 サラダ、食べる。

 ベーコン、食べる。

 スープ、飲む。


 結論、好き嫌いせず、なんでも食べる。


「なんだ、ただのよいこか」

「ガウガウ」


 わたしでさえ苦手な食べもの(レバーとか臭みの強いもの)があるのに、すごいな。


 テーブルについたわたしのおひざで、うしろからぎゅっとされている腹ぺこさん。


 お行儀よくちょこんとおすわりして、みじかいおててでかかえた真っ赤なリンゴを、夢中ではぐはぐしている。


 お昼ごはんを食べたあと、泣き疲れたのと、おなかがいっぱいになって安心したのとで、すぐに眠りこけてしまったんだけど、起きたら起きたで、おやつにあげたリンゴを丸かじりしてるし。今日いちばんの食いつきだ。


 もしかしたら、リンゴが大好物なのかも?


「ほんとよく食べるよねぇ。こら、こっちはリオの分なんだから、だめ」

「ンギャッ」


 テーブル上のバスケットに入った残りのリンゴを見つめていたドラゴンもどきさんの眉間を、向かいの席のノアが指先ではじく。


 それから頬杖をついて、呆れ顔だ。


「リオも、このおちびを甘やかしすぎちゃだめだよ? じぶんの食べるものがなくなっちゃう」

「あはは……すみません」


 ランチのとき、手あたりしだいに食べものを与えていたからか、ノアのストップがかかった。


「俺はそんなに食べなくても大丈夫だから、リオが食べて」って、ちびっこ食いしんぼうさんに平らげられてしまったわたしのパンやスープの代わりに、じぶんの分を分けてくれた経緯がある。


 なのでリオさん、ノアくんには頭が上がらないのであります、はい。


「って、あたたた、なんか噛まれてる、それわたしの手です、おーい!」


 ノアとやりとりをしているあいだに、リンゴを芯だけにしたドラゴンもどきさんが、こんどはわたしの右手に顔を寄せて、はぐはぐしていた。


 どうも、私の手に飛び散っていた果汁が気になるようで。


「ガウゥ……」


 そんなマイペースさんも、噛む力がだんだんと弱まっていく。


 どうしたものかとのぞき込んでみると、ドラゴンもどきさんはこくり、こくりと船をこいでいた。おねむらしい。


「食べて寝るだけとか、ぜいたくなもんだね。ま、おとなしくなるならそれに越したことはないか」


 マイペースなちびっこの様子を呆れたようにながめていたノアも、ここにきてにやりと口角をあげる。


「こいつの世話もこのくらいにして、リーオ?」


 俺の言いたいこと、わかるよね? と。


 ただでさえイケメンなご尊顔でにっこりとスマイルを炸裂させられたら、わたしも苦笑するしかない。


 椅子から立ちあがり、すやすやと眠ってしまったちっちゃい怪獣さんをベッドに寝かせたら、やることはひとつだ。


「それじゃあ約束どおり、テストしますか!」

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