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【95話】 二学期⑭(鹿沼母)

あけましておめでとうございます!


9日ぶりという過去最高の遅さで申し訳ない。

年始から地震に飛行機の事故とまあスタート大変な2024年ですが、今年も頑張っていきましょう。


 時刻は22時30分。

 一ヶ月ぶりに娘の景の顔を見るために家に帰ってきたのだが、玄関の扉を開けると中は真っ暗だった。

 隣の羽切家も電気が全くついていなかったのを見るに、景と成君は一緒にどこかへ出掛けているのかもしれない。

 


 私は玄関に上がり、リビングへ行く。

 鞄をソファーに置いてスーツを脱ぎ景の部屋に入ると、私の予想に反してベッドには愛娘、景が寝ていた。



 寝ようよして寝たんじゃなくて、ベッドに寝転んでたらいつの間にか寝てしまったかの様な体勢。

 横向きに半分うつ伏せで、スマホを左手に握り締めた状態で景は寝ている。

 こんな時間に寝るのは少し早すぎるし、部屋も真っ暗。

 それにパジャマじゃない普段着。

 


 何だか違和感を感じた私は起こさないように隣に寝て顔を観察する。

 私の可愛い愛娘、景。

 自分の娘とは思えないくらい可愛くて、ちゃんと女の体に育った。

 性格も優しくて思いやりのある子。



 見れば見るほど愛らしくて全身で抱きしめたい欲求に駆られ、私はゆっくりと近づき体を密着させ全身で娘を感じる。

 ニオイ、柔らかさ、顔立ち、髪色。

 全部が私の知ってる景で、久々に感じる親心の様な感情が芽生えてしまい少し不安な気持ちになってしまった。



 景に死んでほしくない。

 最後まで健康的で幸せに生きてほしい。



 もちろん今、景は病気しているわけでも事故に遭って意識不明の状態ってわけじゃない。

 だけど超低確率だとしてもその可能性が今後ないわけじゃないという漠然とした不安が、最近ふとした瞬間に襲いかかってくる様になった。

 それはお父さんが病気で亡くなり、私も来月にはイギリスに行ってしまうことで景を本当の意味で一人ぼっちにしてしまうという不安からなのか、それともたった一人の娘で過保護になってしまっているのかは分からない。

 ただ一つ言えるのは、私は景をこの世の誰よりも、何よりも愛しているという事。

 


 お父さんが亡くなって、私は今まで景に苦労をかけてきた。

 せめてお金に困らない様にと私も頑張って働いた。

 次はイギリスに行っちゃうけど、私の中で決めている事がある。

 予定ではイギリスへは二年間出張する事になっているが、その後はもう会社を辞めるつもりだ。



 日本で再就職をして、ちゃんと忙しくない毎日を送る。

 貯金もあるし一軒家を買って、できれば景と一緒に過ごせなかった時間を埋め合わせたい。

 もしその時に愛し合う異性がいて同棲するならば、せめていつでも帰ってこれる場所を構えたい。



「ん……」



 景を抱きしめて顔を観察していると、モゾモゾと動きゆっくりと瞼が開いた。



「お母さん……?」

「おはよう」

「帰って来たんだ」

「残った有休は全部日本で使う予定よ」

「じゃあ、いつもよりも多く帰ってこれる?」

「うん」

「嬉しい」



 優しく微笑む景を見てズキンと胸が痛んだ。

 私は景より仕事を選んだ。

 それは生活のためでも景のためでもあったから。

 だけど景の表情を見て、今になってその選択が正しかったのかと疑問に感じてしまっている。



「ほら、もう寝なさい」



 そう言うと景は私の腰に腕を回し、私の胸に顔を押し付けてきた。

 狂おしいほど愛おしい。



「お母さん」

「うん?」

「今日ナル君ね、クラスの女子とデート行ってたの」

「そう……」

 

 

 さっき観察してわかったのだが、景の瞼の内側が少し赤く腫れていた。

 景は成君に対する色んな感情にかき乱されて涙を流してしまったんだと思う。

 高校生になったいま恋のもどかしさ、苦しさに直面しているらしい。

 そういう経験が出来るのは良い事だし、成長にもつながる。

 

 

「それで泣いちゃったのね」

「ナル君が他の女子とデート行ってるのは今まで何度も聞いてきたけど、今日初めて隠れてナル君のデートについて行ってみたの。そしたらすごく楽しそうで、私じゃなくても良いんだって思ったら辛くて……」

「それは辛かったわね……でも景、成君は多分誰とでも平等に接するタイプの人間よ」

「わかってる」

「それに景は大好きな成君を転校させないために頑張ってるんじゃないの?」

「……」



 成君が日本に残るための条件。

 それは恋人が出来て、本人から転勤について行かないと言わせる事。

 景は成君のことが好きで一緒にいたいからその条件を遂行しようとしている。

 


「成君と一緒にいたくなくなっちゃった?」

「そんな事ないっ! だけど、それってナル君も望んでる事なのかなって最近思っちゃって」

「どういう事?」

「ナル君、イギリスに行く準備すごいしてる。ずっと英語の勉強してるし今回のテストも学年一位だった。それに転勤はもう懲り懲りみたいな事言ってたけど、イギリスに行くのちょっと楽しみみたいなの」

「困難な状況でも楽しめる精神の持ち主ね。良い男じゃない」

「私は成君に大切にされてるのを感じるし、色々お世話になったと思う。わがままな事も全部聞いてくれて……。そんな私がナル君が楽しみにしてるイギリス行きを阻止しようなんて本当はやっちゃいけない事なんじゃないかって。ナル君が望んでないのに私のエゴでそんな事するのは恩を仇で返す様な事じゃないかなって」



 景の言っている事は高校生の好きを超えていて、もはや愛に近い。

 側から見てても景と成君がお互いを大切に、尊重し合ってるのはわかる。ただ二人にはそれだけでは越えられない壁があるのも事実。

 その壁は私達親が作り出した分厚くて大きな壁。



 ……あーあ。

 こんな事なら、景もイギリスに連れて行く選択をもっと考慮するべきだった。

 そうすれば向こうで景と成君はもっともっと深い関係を築き上げたと思うし。

 私は良かれと思って景を日本に置いて行く判断をした。けど結局はその判断は間違っていたかもしれない。



 今更考えても無駄な事か。

 未来のことは誰にもわからないし、今から景を連れて行く予定変更はもう出来ない。

 それに親としては見守ってあげる事も大切かもしれない。

 親という漢字は「木」の上に「立」って「見」ると書く。

 景がこれからも自分の気持ちを押し通して成君にアタックし続けるのか、成君の気持ちを考慮して諦めるのか。

 私的には景と成君には結ばれてほしいから景にはアタックしてほしいが……それは景が決める事だ。

 親の私が口を出せば変に背中を押してしまうからそういう事は言わない方が良いだろう。



 私は景が初めての子供で何が正解なのかがわからないけど、年齢的に心も体も変化していく年頃だし色々な事にストレスを感じてる年頃なのは間違いない。

 成君と他女子のデートを隠れてついて行くストーカー気質な部分はちょっと気になるけれど、初めての恋でそんな現場を見たら浮き足立つのもよくわかる。

 今私にできる事はストレスのケアをしてあげて、今後も親子間でコミュニケーションを継続していくくらい。


 

「景、顔見せて」



 景は私の胸に顔を押し付けながら顔を左右に振ったが、肩を震わしている景の頭をしばらく撫でているとゆっくりとした動作で私の顔と同じ位置まで顔を離した。

 目元が真っ赤で顔をしわくちゃにした泣き顔。

 ずっと胸につっかえてたけど中々人に相談できなくてモヤモヤしてた感情を吐き出した事で、また泣いてしまったのかもしれない。

 景が泣いてる所なんてお父さんの葬式以降見た事が無いし、相当に堪えているんだろう。



「大丈夫よ。景がどんな選択をしてその結果どうなろうと、お母さんはいつでも景の味方だから」

「お母ぁさん……」



 私は景をずっと一人にして来たから正直親として与えるべきものを与えれてるか心配だった。

 無条件の愛、無条件の肯定。

 その二つがあった子と無かった子ではその後の人生で生きる難易度が天と地の差ができてしまう。

 無条件の愛を知っている子供というのは自己肯定感が高くその後の人生において多少の傷を負っても前に進むことができる。

 そしてなにより親から愛情を多く受けた子供は他者から愛される喜びや安心感を知っているため、他者に対して同じように愛情を注ぐ事ができる人に成長する。

 

 

 私の愛情は景にちゃんと伝わってるだろうか?

 


「ほーら、泣かないで元気な景が私は見たいわ?」

「元気な私……?」

「久しぶりに飛行機してあげようか?」

「お母さん、私もう高校生だよ。多分無理だと思うけど」

「いいからいいから、ほら」



 飛行機というのは、景が小さい時によくやった遊びだ。

 ベッドの上で私が仰向けに寝て膝を曲げて両足を合わせた状態で天井に向ける。

 その足の裏に景がお腹を乗せて両手を繋いでいざ出発。

 膝を伸ばして景を高く上げて飛行機のようにバランスを取るという遊び。



 高校生になった景が足の裏に乗ったので、私は足と腰に力を入れる。



「お母さん、やっぱ無理だよ」

「行けるよっ!」

「うわわっ!?」



 30代の私が高校生になった娘を足と腰だけの力で持ち上げる事ができた。

 しかし上げた段階で筋肉の限界を迎え、すぐに景が私の上へと落ちて来た。

 至近距離で見る景の驚き顔。



「「ブッ……あはっはっはは」」



 何でかわからないけど心の奥底から笑いが込み上げて来た。

 景もまたさっきまで泣いてたとは思えないくらい肩を上下に跳ねらせて笑っている。



「景、重くなったわね」

「太ったわけじゃないからね!?」

「それはどうかしら」

「お母さんこそ、筋肉衰えてきたんじゃない?」

「まだ30代ですっ!」



 これからも景は成長するだろうし飛行機できるのはこれが最後だったかもしれない。

 その後も私は景とお喋りしたり、子供じみた遊びをしたりして親子のひと時を過ごした。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 景は寝てしまい、私は逆に目が覚めてしまった。

 景が言うには今日羽切君は同じクラスの女子の家でお泊まりをしているらしい。

 高校生の男女が二人でお泊まりするといったら当然そういった行為が行われるだろうし、時間的に今繋がってる頃だろう。

 スマホに表示された時刻は3時15分。

 


 私は景と成君は近い将来、お互いの初めてを掛けて愛し合うと勝手に想像してた。

 景と成君は一緒に成長していくパートナーになると本気で思ってた。

 なのに成君は景を差し置いて抜け駆けのような形で今この瞬間にも大人の階段を登っている。



 そんな事を考えている少し胸の奥に熱いものが込み上げて来たのを感じた。

 これは怒りだ。

 成君は景をたぶらかして、焦らしに焦らして、涙まで流させて今、女と肌を重ね快感に身を委ねている。

 こんな可愛くて良い体してて、性格も良くて、いつもラブラブしてる女の子がいつもここにいるのに。



 私はムカムカを通り越してもはや成君に教えてやりたい気持ちになった。

 景がいかに素晴らしいかという事を。

 そして自覚させなくてはいけない。

 成君も景の事好いていて、本当は他の男に取られたくはないだろという事を。



 私はスマホを取り出し、動画をオンにする。

 そして景のシャツをまくりブラジャーに包まれた景の胸を映し出す。



「ひっひっひ、こりゃ良い体してまんなぁ」



 低い男っぽい声で私は語りかける。

 そして今度はスボンを太ももまで脱がし、上下をほとんど下着姿にして胸に手を伸ばす。

 もう成君はブラジャーの上から揉んだ事があるらしいので、私は直に行くことにした。

 ブラジャーの隙間から手を入れて内側の大きくて柔らかいものを軽く揉む。



「こりぁでっかいし柔ケェ。後でじっくり味見するとするかぁ」



 まるで景が変な男に犯されているかのような演出に私もドキドキして来た。

 


「こっちはどんな感じかなぁ?」



 今度はパンツの中に手を滑り込ませて動画をストップした。

 何の音もない静かな夜が戻ってきて、何やってんだろ私と虚しくなってくる。

 しかしすぐにチャットを開き、成君へと送信してやった。

 お楽しみ中にこんな動画送られてあっちはあっちで正気に戻されたんじゃないかと思うと心の中でヒッヒッヒと悪い笑い声が聞こえたような気がした。



 送信した後、再度景を見ると私に服をひん剥かれてなお爆睡中。

 さっき胸を直に触って感じたのだが、既に私のサイズを超えている気がする。

 っていうか柔らかさといい肌のきめ細かさといい、ちょっと別次元だ。

 若かりし頃の私もこんな感じだったのだろうか。



 私は気になりすぎて、しっかり見てみたいという欲求に襲われる。

 そう、これは親として景の胸に異常や病気がないかのチェックだ。

 そんな言い訳を自分の頭の中で反復して、ブラを上にずらし中を拝見する。



「わあ」



 その内側にあった二つの双丘は、私の想像をはるかに超える女性的で綺麗なものだった。

 つ、次は下に異常がないかを……。 

 体の疲れ、脳の疲れ、心の疲れ。

 おかしくなった私は先ほどの大義名分を盾に景の体を隅々まで調べた。

 そう、親としてね。


もうすぐ100話かぁ。

これスタートさせたとき5話くらいで終わると思ってたんだけどなぁ。

まあ何事も経験か(フリーレン風)

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