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【5話】 一学期 (突然の来客)

 状況を整理しよう。

 玄関には制服姿の鹿沼さん。

 髪から靴まで雨でべちゃべちゃだ。

 自分を抱きかかえるようにして小刻みに震えている。

 

 

 そして泊めてほしいと言っている割に、その瞳には警戒色が漂っている。



「まぁ、上がれよ」

「床濡れちゃうけど……」

「いいよ別に」



 そういうと鹿沼さんはローファーを脱ぎ、上がる。

 近くで見ると制服が透けて肌が見えている。それが少しエロい。

 また、肩まで伸びる髪の毛は少し乱れていて、染められた黒髪からインナーの銀髪がちらほらと飛び出している。



 走って学校から帰ってきたのかもしれない。

 だが時間は19時30分。

 いくら何でも遅すぎる。



「とりあえず、風呂はいる?」

「……うん」



 俺は鹿沼さんに脱衣所に案内する。

 湯舟は帰ってきたときに沸かしておいたので、既に溜まっていた。

 自動で追い焚きしてくれるので、常に温かい。

 そこまで確認してから風呂場から出て、脱衣所に戻る。

 

 

 すると鹿沼さんは何か言いたげな表情でこちらを見ていた。

 


「何?」



 聞かないと何も始まらない。

 こんなに濡れていたら風邪ひくのも時間の問題だろう。

 鹿沼さんは体を横に向けながら、視線だけを俺に向けている。

 恥ずかしそうに自分の胸を隠すような姿勢で何かを訴えていて、すぐに何を求めてるかわかった。



「……下着か」



 鹿沼さんはこくりと頷く。


 

 俺は洗濯機の隣にある縄を編み上げたような引き出しの一番下を引き出す。

 そこには母親の下着と妹の下着が入っている。

 妹は親が離婚してから一度も会っていないが、万が一に備えて置いてある。



 目の前にある下着の山。

 だが、鹿沼さんのサイズ感がいまいちわからないので少し迷った。

 迷った末、取り出したのは妹のパンツ。

 明らかに女性用で飾り気のない純白のやつ。

 とりあえず俺はそれを鹿沼さんに差し出した。



「何、コレ……?」


 

 すると鹿沼さんは引き攣った表情をした。

 


「パンツだが」



 見ればわかるだろう。



「なんで女性用の下着を持っているんですか!?」

「普通持ってるだろ」



 普通、親の下着は家にある。

 男の家に入って、錯乱しているのだろうか?



「あ、あのですね。あなたが毎晩これを使ってするのは自由ですが、それを同級生の、しかも同クラスの私に履かせようとするなんて、どんなプレイですか!?」



 今度は俺の頭にクエッションマークが浮かんだ。

 毎晩、する、私、履かせる、プレイ。

 文章を細かく砕いて理解を試みるが、やっぱり意味が分からない。何を言ってるんだ、この人。



 しかし、わなわなと震えながら顔を赤くする鹿沼さんを見ていると、どうやらとんでもない事をやらかしたらしい。

 その理由を頑張って考える。考えて、考えて、得た結論。



「もしかして、いつもノーパンなの?」

「な、なわけないでしょ!?」



 鹿沼さんは俺の手から素早くパンツを取り上げた。

 もう一度引き出しに視線を戻し、再度下着の山を漁る。

 しかし女性経験の薄い俺にはどうしてもわからない事があったので、直接聞いてみることにした。



「お前、何カップ?」

「はいいい!?」


 母さんはDだと言っていた気がする。

 そもそも普通の女子高生が家で普段着を着ているとき、ブラをするのかどうか問題も俺の頭にはあったが、渡しておいて損はないと判断した。

 鹿沼さんの瞳の警戒色は強まっている。顔もより紅潮している。

 早くも雨が彼女の熱を奪い始めているのかも。

 そう思った俺は母さんのブラを一つ取り出す。



「これなんてどう?」

「自分が選んだものを私に着させれて、満足ですか!?」



 またもや素早く奪われた。


 

 とりあえず必要なものは揃った。

 そう思い立ち上がると、鹿沼さんから“はやく出ろ”という目配せがあったので、俺は脱衣所を後にした。

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