【109】 二学期(旅行①)
初めて時間軸を前後させた書き方してみた。
「さて奈々美。景ちゃん呼んできてもらえる?」
「別に伝えなくてもいいんじゃないかな......?」
「ダメよ。ちゃんと区切りは必要でしょう」
私達は一泊二日の温泉旅行に来ている。
ちーちゃんと私が同室で隣の部屋が景と成君。
この旅館は外湯の温泉に浸かりながら海を見渡すことができると有名で、同僚からクーポン券と特別予約券を頂いたので羽切家を誘った。
実際、温泉は最高で食事もメチャクチャ美味しくて大満足だし、羽切家と関わるのは私としてもやっぱり楽しい。
しかし日本にいれるのは残り五日。
当日は景達の学校で文化祭があるからそこで景の学校の様子を見て夜には飛行機でイギリスへ向かう。
羽切君が日本に残るための条件が達成できず、その期限が来てしまった。
本当はもっと前にその期限が来ていたいんだけど、頑張ってる景に中々その事実を伝えられずにここまで来た。
そんな私を見て、ちーちゃんは今から自分で伝えるつもりらしい。
「じゃあ呼んでくる」
私は立ち上がり、部屋を出た。
この旅館は建物自体が和風で、廊下の地面は石造りとなっている。
しかしながら流石にセキュリティー的な配慮もあるから部屋には最初一般的なドアが取り付けられていて、その向こう側には靴を脱ぐ場所。そして横開きの襖と奥には和室。
私は景達のドアを開けて内側へと入る。
「ちょっとナル君何してっ......ああんっ!」
するとすぐに景の卑猥な声が聞こえた。
一瞬で心臓の音が跳ね上がり、帰るどころか何が行われているのか確認したくて襖をほんの少し開けて中を見る。
畳の中央には浴衣姿の景が仰向けに寝ていて、その下半身は大きく盛り上がっている。
よく見るとその内側には成君の頭が入っていて、景はその頭を両手で押し返そうとするが押し返せずにいるのが見えた。
私も経験したことがあるが、股の深くに頭を入れられると、手で押し返すのは無理。
ってそんな事を考えている場合じゃない。
今私が見ている光景は景がク◯ニをされている現場ではないか。
あの景が成君にアソコを舌や唇で刺激されている......?
えっ、そんなに関係進んじゃったの?
そういう行為は夫婦でもする人少ないよ?
頭が混乱しすぎて固まっていると、羽切君の頭が景の下半身から出て来た。
「すごい膨らんでる」
「わ、わかったから離れてっ!」
「応急処置しなきゃだから我慢して」
「応急処置って何を.......ひゃっ!」
再度成君の頭が景の股へと隠れ、景の体がビクンと小さく跳ねて悲鳴を上げた。
私は見てはいけないものを見てしまった驚きで後退り、廊下に出て自分の部屋へと急いで戻る。
「どうしたの?」
部屋で待っていたちーちゃんと目が合うと、驚いた表情で問いかけて来た。
「景が成君にク◯ニされてた」
「.......え、なんて言ったの?」
「景が成君にク◯ニされてたっ!!!」
私がそう言うと、ちーちゃんは口元を歪ませて固まった。
そして手に持つ湯呑みがカターンと音を立てて机に落ち、中のお茶が机いっぱいに広がっていく。
「冗談よね?」
「マジ」
「.......」
沈黙。
唖然としてしまったのもそうだが、隣との壁を意識してして何か卑猥な音や声が聞こえるんじゃないかと五感を無意識に集中させたからというのもある。
しかし何も聞こえない。
当然だ。そんなに壁は薄くないし、叫ばない限り音は貫通してこない。
「お母さーん」
しばらく沈黙していると襖の向こう側から声が聞こえた。
心臓が飛び跳ね、振り向く。
襖が開かれて中に入って来たのは景。
少し乱れた浴衣に真っ赤な顔。
浴衣の股の部分には湿った跡があり、乱れている浴衣から見える脚には上の方から流れたであろう透明の液体がスゥーッと落ちていくのが見える。
「どどどどどうしたの!?」
「ちょっと問題が......」
「だ、大丈夫! 浴衣も布団も弁償するからっ、思う存分楽しみなさい!?」
「弁償? 何の話?」
「あっ、そそそそっかコンドームがないって話ね!? 大丈夫、今買ってくるからっ」
私は立ち上がり歩き出そうとすると、景に浴衣を強く引っ張られて止められた。
「お母さん落ち着いて!」
あんなものを見せられて落ち着けるわけがない。
「奈々美、落ち着いて景ちゃんの話を聞きましょう」
「わかった。どうしたの?」
「実はーー」
「え?」
全く見当違いのワードが出てきたことで急速に興奮が冷めた。
これは旅館に着いて2時間後の出来事である。
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旅館に着いたのは20時50分。
家を出たのが17時40分ごろだから三時間くらい車で走った事になる。
母さん達は二部屋予約したみたいで、羽切家と鹿沼家で分けるのかと思っていたが、話し合った結果親と子供で部屋を分ける事になった。
母さんも奈々美さんもまるで修学旅行に来ているかのようにテンションが高いし、鹿沼さんと同室は気まずい。
旅館に着いてすぐ部屋に荷物を置いて隣の母さん達の部屋へと移動すると、そこには遅めの夕食が運ばれていて、一つのテーブルを囲って夕食を食べ始めた。
「はえー、今年の出生数は70万人を下回るらしいよ。少子化のスピードすごいわねぇ」
テレビに映るニュース速報を見て菜々美さんが言った。
「いっそのこと一夫多妻制にしたらいいのに」
「景は好きな相手が自分以外の女を何人も孕ませて、愛情を向けてるの我慢できる?」
「私はできないけど、例えば経済的に物凄く豊かで自分とその子供を確実に養っていける男性って分かれば愛情とか抜きにして子供作りたいって女性もいるんじゃない?」
「いわゆる経済的な安心を求めて男性の子供を孕むってわけね?」
「うん」
結婚や子供を作るという選択は、必ずしも愛だけで行えるものじゃない。
やっぱり経済的な豊かさの有無は判断の一つになり得る。
これがまさに日本の少子化が進んでいる原因。
日本の少子化が進んでいる大きな原因の一つは、そもそも婚姻数が減ってきたという背景がある。
ちなみに生涯未婚率という統計があり、それによると50歳までに一度も結婚しなかった男性は約28%。女性は18%となっている。
つまり男性の約3分の1は生涯未婚で女性は4人に一人が生涯未婚。
婚姻数が減った原因は男性の所得の低下にあると言われていて、所得が低下した理由は色々あるけれど、それによって起きている事は男性側の自信の低下だと思う。
やはり年収というのは昔から男性の能力を測る指数であるわけで、それが低いというのは自分に魅力がないと思い込んでしまうし、現実に年収が高いというのは男女共に魅力的に映るものだ。
女性視点で言えば、経済的に豊かで年収の高い男性を選びたい。
しかし年功序列の文化がまだまだ残る日本社会では一般的なサラリーマンで年収の高い人間は一部を除いて上の世代に多く、よって女性の望む優秀で若い男性像というのは超少数派で、なかなか出会う機会はない。
「一夫多妻制になったら、成君ならどうする?」
「そりゃ良い女を片っ端から抱きまくりますよ」
「やっぱそうだよねー。ちなみに成君の思う良い女ってどんなのかな?」
「そりゃ抱く前提なら良い顔、健康的な体ですかね」
「大抵の男子ならそう答えるわね。じゃあ現実世界で成君の好きなタイプの女性ってどんなの?」
「うーん」
好きなタイプの女性。
女優だったりアイドルだったりと雑誌やらテレビやらで何度も見た事があるけど、本当の意味でこの子タイプだなみたいに思った事はない。
「わかりません」
「じゃあ質問を変えるわ。景に足りないものってなにかしら?」
「ちょっ、お母さん!」
「いいからいいから」
鹿沼さんに足りないもの......?
正面に座る鹿沼さんをチラリと見てみる。
顔は整ってる。髪も綺麗。押し上げる胸も豊満。豊富な表情も魅力的。性格だって明るい。たまに元気ない時を見るとついつい手を差し伸べたくなるくらい魅惑的。
それに家事だって出来るし、俺が思いつく限り足りないものなんて無い。
だけどここで完璧だと言ってしまったら、なんかまた変な感じになりそうなので必死に頭を回して考えてみる。
そして当たり障りのない、誰でも当てはまりそうな回答を思いついた。
「経験ですかね」
「経験……?」
俺の回答に菜々美さんは目を丸くした。
鹿沼さんも俯いてモグモグご飯を食べていたが、俺の言葉に反応して顔を上げた。
「景さんは人生で初めて三年という時間を同じ場所で過ごすんです。普通の人なら小中と長年同じ場所にいる事に慣れてますが、俺達は違う。だからそういった経験が足らないと思います」
好きなタイプとか一夫多妻制とか面倒くさい話から大幅に話題を逸らした回答。
菜々美さんは自分の求めてるものとは違う回答をされてジトーっと俺を睨んできたが、もはやそんなことは関係なしに続ける。
「俺達には親友がいませんし、恋人だって出来たことがありません。だから長期的に人と付き合う経験が無いんです」
「でも今はちゃんとしたお友達いるんでしょ? 戸塚さんだっけ?」
「戸塚さんに関しては現状いい感じに関係を築けてると思いますが、まだ半年です」
「文化祭で会えるかしら」
「来たら会えますよ」
「どんな子か楽しみね」
話題が右往左往したが取り敢えず会話が終わった。
目の前の夕食も食べ終えてしばらくゆっくりしていると突然母さんが立ち上がった。
「さて、温泉に行きましょう!」
「晩酌しようよー!」
「お酒は温泉の後でもいいんじゃない?」
「少し飲んでから行って、入った後にも飲むのはどう?」
「それも悪くないわね」
本来の目的、温泉。
この旅行で一番楽しみなイベント。
そして大人達はお酒。
「じゃあ成、先に入ってきたら?」
「ああ、そうしようかな」
俺は立ち上がり、部屋を出た。
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この旅館の温泉は二種類ある。
一つは普通の温泉でもう一つが濁り湯の温泉。
どちらも外にあって、普通の方は脱衣所を出てすぐに見える場所にある。濁り湯の方は更に奥の坂になった石畳を歩いた先にある。
ここで有名なのはやはり濁り湯の方で、坂の先にあるから絶景が広がっているらしい。
「景ちゃん、お体洗いましょうか?」
シャンプーをしていると、後ろから羽切母の声がした。
旅館の備品という事もあっていつもよりシャンプを多めに使ってモコモコにいしているから目を開けられない。
「いいえ、自分で出来ますので」
お酒を嗜んで酔っ払い気味なのはここにくる前に分かっているし、そもそも今は頭を洗っているので拒否。
「いいじゃない景、洗ってもらいなさい」
「で、でも」
「大丈夫よ、優しくするから」
「そ、そういう問題じゃなくてですね......あっ」
私の説明を聞く事もせず、体を隠すタオルを剥がされたのがわかった。
「やっぱり綺麗で女性らしい体ね」
「......ッ!」
目を瞑っていて何も見えない状態で、羽切母に体を見られている。
同じ女とはいえ、流石に恥ずかしい。
羽切母がボディーソープを手に取ると、私の体を洗い出した。
「肌もモチモチできめ細かい。胸は奈々美に似てるけど、全然綺麗よ」
「ちょっとー? 私だって若い頃はそのくらい綺麗だったんだから!」
「でもサイズはもう負けてるんじゃない?」
「まあ......そうかもねっ!」
悔しがるお母さんの顔が頭に浮かんだ。
羽切母の手が首周りや肩、腕と洗い出し、遂に私の胸を触り出した。
しばらく我慢でしていると、今度はモミモミと揉みだす。
「柔らかい」
そして耳元でこう囁かれ、一気に我慢の限界に。
「ちょっ、千尋さん近いですって! それに痛いですっ!」
「乳がん健診はこれくらい痛いんだから」
「ちーちゃん、前に景が寝てる間に私が健診したから問題ないわ」
「あら、そうだったのね」
お母さんの説明にモミモミから再度スリスリへと変わり、胸から腹部へと手が移動した。
私は意識をそちらに向けながらも再度頭を洗うために手を動かす。
「下の毛は自分で整えてるの?」
「私結構、剛毛みたいで......」
「いいえ、若い頃は男性よりも女性の方が毛が生えやすいし普通よ普通。景ちゃんの場合、全然薄い方だし大丈夫よ」
「あの……全部剃った方が良いんですかね?」
「お尻とかアソコの周りは全部剃った方が清潔感があって良いわよ。だけど、上は人によって意見が分かれるわね。今みたいに上だけ少し残して全部剃った方が、景ちゃんの場合は清楚感とのギャップでエロいけど」
「男性側からしたら、どっちの方が良いんですかね......?」
「へー景ちゃん近々、男の人に見せる予定あるんだ?」
「いや、違くてですね……」
「誰かなー? うちの成かなー?」
「違いますっ!」
「成じゃないの? 私ショック」
「そうじゃなくて......ああっ、もう!」
私はシャワーを頭に浴びてシャンプーを瞬時に落とす。
そして両腕で胸を隠し、鏡越しに千尋さんを睨みつける。
「後は自分で洗います」
「ええー、もう少し景ちゃんを感じたかったのに」
「私ももう子供じゃ無いので、全部自分で出来ます」
「ムフフ、まあそうね。じゃあ私達は先に温泉入ってくるから後でおいで」
羽切母とお母さんは立ち上がって一緒に石畳の坂をまっすぐ歩き始めた。
どうやら最初から濁り湯の方に入るらしい。
私も頭と体をしっかりと洗って、体をタオルで隠しその道を歩き始める。
坂自体は緩やかだけど意外と距離があるし、なによりも温泉に来ているはずなのに木々の茂った道をタオル一枚で歩いているため、すごく変な気分。
もう10月も下旬で夜になると流石に寒い。
ピューピューと風は吹くし、灯りは小さなランタンしかないからちょっぴり怖い。
部外者がどこか別のルートから侵入してきて、この道を歩く女性を茂みに引きづり下ろしていかがわしい事をしたり、もしくは茂みに乗じて盗撮なんて事簡単に出来ちゃうんうんじゃ無いかみたいな不安を感じながら進むと、ようやく湯気が見えた。
「お母さーん!」
「こっちよー!」
私の呼びかけにお母さんが応答したので一気に安心してその湯気の方へと小走りで進む。
すると茂みが開けて、一気に壮大な景色が広がった。
暗いけど地平線まで海が広がっていて、手前は森。
さっきまで怖かった風で木々が揺れる音もここまでくると心地よくて、自然の匂いに心も体もリフレッシュされた気分になった。
そんな自然から視線を外して温泉の方へ見ると、三つの影がそこにはあった。
一つはお母さん。一つは千尋さん。
そしてーー。
「やあ」
最後の一つは羽切君だった。
「んなああああ!?」
頭が真っ白になり、おかしな声が空に反射して自分に聞こえてきた。
羽切君はお母さんと千尋さんの首に腕を回してくっつき、何故か堂々とした態度と表情でこちらを見ている。
「何してるの、ここ女湯だよ!?」
「だったら何?」
「変態! 覗き魔! 犯罪者っ!」
「景、ここは23時から混浴になるのよ」
「そうそう、つまり23時からは大人の時間って事よ。おいで景ちゃん」
「大人の時間......」
「あっ、タオルごと入るのはマナー違反よ? 必ず脱いで入りなさい」
脱いで入る......?
チラリと再度羽切君を見ると、どこか勝ち誇った表情で私を見ていた。
「あっち向いて」
「いやだ」
「そんなに私の裸みたいの?」
「見たい」
「……ッ!」
羽切君も男だし、しょうがない。
だけどこんな直接言われるとすごく恥ずかしい。
冷たい風が吹き、濡れた私の体を徐々に冷やし始め「ハクシュ!」っとクシャミが出てズルズルっと鼻も出てきた。
「景風邪ひくから早く入りなさいよ」
「だって羽切君あっち向いてくれないし」
「わかったわかった。あっち向いてるから」
羽切君は首だけをお母さんの方へ向けて目を閉じた。
私は念のため後ろを向いてタオルを脱ぐ。
「ちょっ、母さん! 奈々美さん!」
羽切君の悲鳴が後ろで聞こえたけど、どうせ二人が羽切君の体に対して何か嫌がらせをしているに違いない。
そう思って正面を向く。
するとそこにはこちらを向いた状態の羽切君の顔があった。
お母さんと千尋さんに無理やり顔を正面に向かせられ、更に逆の手で瞼を無理やり開かされた無残な顔の羽切君。
しかしその眼球は私を向いていて、そして私は今、全裸でどこも隠していない。
「ひやああああああああああああっ!!!!」
私は瞬時に胸を隠し、濁り湯へと飛び込んだ。
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最高の景色に最高の湯がここにある。
肩まで浸かりながらしかし10月下旬の冷たい風が吹いていて、それがまた良い具合に温泉の良さを引き出している。
自然の匂い、海の匂い、風の音。
手や足を動かせば静寂な夜に水の音が響き渡り、自然とリラックスできる。
「成、お待たせ」
目を瞑って全身全霊でリラックスしていると、女の声がした。
それも知っている声で俺の名前を呼ばれた。
最初は聞き間違いかと思ったけど、目を開けるとそこには母さんと奈々美さん。
「はああああああ!? ここ男湯だぞ!?」
「23時から混浴になるのよ」
そんな話は初耳だ。
二時間ごとに男湯と女湯に変わるというシステムなのは知っていたが、まさか0時までの最後の一時間が混浴になるとは。
普通の温泉旅館なら女湯男湯に常に分かれているが、ここはそうではない。
何せ一番有名な絶景を見下ろしながらの濁り湯が一つしかないからだ。
「さーて、入りますか」
二人は俺の目の前でタオルを脱ぎ捨て、全裸になった。
母さんの体別に何とも思わないけど、奈々美さんを見て俺のアソコは瞬時に反応した。
やはり色々と綺麗だし、奈々美さんと鹿沼さんは親子な訳だから体の部分部分や下の毛の生え方などが似ているはず。
つまり目の前の奈々美さんの体≒鹿沼さんの体であると無意識に判断した結果、反応してしまったのだ。
「そんなジッと見られたら流石に私も恥ずかしいわ」
「し、失礼しましたっ!」
「40代のオバさんなんだから恥ずかしがることないのに」
「まだ30代だってばっ!」
そんな会話をしながら湯に入ってくる音が聞こえた。
濁り湯という事でやはりお湯から下は真っ白で何も見えない。
故に俺のアソコが反応している事すらも気づかれない。
安心して再度背中を湯を囲む岩に預けると、母さんと奈々美さんが俺の両隣へと移動してきた。
「何ですか?」
「実は景も混浴になってる事知らないみたいなの」
「だから?」
「驚かせちゃいましょ?」
うん、ちょっぴり面白そうな提案だ。
しかし親としてこれはどうなんだ。
「今、景さんは下で体を洗ってるわけですよね?」
「そうよ」
「混浴って事は男が入ってくる可能性もあるのに、一人にして大丈夫ですか?」
「だって発作は治ったんでしょ? じゃあ大丈夫じゃない?」
「いやいやいや、年頃の女性が知らないオッサンに体を見られるのは大問題でしょ」
「大丈夫、さっき見た時は髪も体も洗い終わってたし今はタオル巻いて歩いている頃よ」
「お母さーん!」
「こっちよー!」
奈々美さんの予想通り、ペタペタと足音が近づいてくるのが聞こえてくる。
そして何故か母さんと奈々美さんが俺の横にくっついてきた。
「何事!?」
「ほら、堂々とした態度で景ちゃんを驚かすのよ」
よく見ると母さんも奈々美さんもニヤけていて様子がいつもと違う。
そうか、さっきまで酒を飲んで酔っ払っているのかこの人達は。
まあ、面白けりゃ何でも良いか。
俺は母さんと奈々美さんの首に腕を回し、濁り湯の中で足を組む。
そして鹿沼さんを待ち構えた。
多分、普通に書いた方がよさそうだ。