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《完結》 霊 感 聖 女  作者: 三條 凛花
第3章 悲の章
12/22

1.夢渡り

 それは、しゃぼん玉がぱちんと割れるような覚醒だった。


 自分がどこにいるのかわからずに、きょときょとあたりを見回していると、いまいましそうな顔をした人々が目についた。




「マルグレーテ!貴様との婚約は破棄する」


 燃えるような髪色の王子様っぽい服を着た男がぴしっと指さしたのは、青ざめた顔のお嬢様然とした女性だった。金髪を縦ロールにしている。男には、黒髪フリフリドレスの少女がひっついている。




「……うっわあ、なんてラノベ」


 思わず声に出てしまい、口元を押さえる。慌ててきょろきょろ辺りを見渡すが、だれもあたしに気づいていないようだ。ふむ。


「貴様は、ここにいるユリアをいじめたらしいな!

 ユリアは異世界から来たりし麗しの聖女なのだ! それを貴様は……」


 そう焦っている間にも、王子男はつらつらといじめがどうとか聖女がどうとか御託を並べている。

 周囲にいた貴族っぽい人たちもざわつきはじめた。





「まさか!マルグリット様が?」

「ありえませんわ。淑女の鑑のような方ですのに」

「それに、あちらの女性、ずいぶん古い型のドレスですね」

「ーー本当に聖女なのかしら?」

「そうですね。聖女といえばやはりヴォルハルト家の……」


 少しずつ場に慣れてきて、大広間を見渡す。なにかのパーティー会場のようだった。


 美しく盛りつけられたご馳走に目がいく。

 と同時に、ざわめく室内にはお構い無しで、料理に夢中になっている令嬢がひとり。


 桃色の髪に見覚えがあり……振り向いた美少女は、ぽかんと口を開けて「佐保里」とこぼす。

 龍花らしき少女の瞳が潤んでいる。


「会えてよかった……! この間は急に消えてしまうから……。そうだ。お守りをつくったの。まさかここで会えると思っていなかったから持ってきてないけれど……」

「……龍花」

「オロチは元気? 子猫は?」

「龍花!」

「それから、ーーほかにも誰かいない?」


 あたしは焦った。

 周囲の視線がこちらに向いている。()()()()()()()()()()()龍花に。


 湖畔の街での一件では、てっきりあたし自身が霊になってしまったのかと思ったが、あのあとふつうに目が覚めて、いつも通りの日常がはじまった。昼寝した程度の時間しか過ぎていなかった。


 あまりにも当たり前すぎて、今まで、都合のいい夢を見ていたんじゃないかと思っていたくらいには。


 でも、周りの反応を見るに、たぶん、今のあたしは「霊状態」である。死んでいなかったからたぶん生霊だ。あたしに話しかけるのはやめてほしい。


 それをなんとかジェスチャーで伝えようと動いていたけれど、龍花はこてりと首をかしげる。


 かわいい。ーーずっとかっこいい美女だった彼女がとてもかわいい。

 けれども、今はそれどころではない。





「あら? 聖女リュカ様が何もないところを……」


 周りにいたお嬢様たちがざわめいている!というかなんだ、聖女って。


「ま、まさか魔獣……」

「魔獣が学園内に?」


 人々は真っ青になる。


 その声がようやく届いたのだろう。リュカはつんとくちびるを尖らせ、「まあ、皆さま!」と振り返った。


(あの喋り! 一体だれなんだ……)


 変わり果てた親友の姿に、あたしは思わず頭を抱えた。

遅くなりましたが、異世界編に戻ります……!

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