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モーフリング 〜新しい人類の発生とその使い道について考えた〜  作者: ゆずさくら


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連絡先にいた者

 林さんが蓮の示した電話番号にかける。

 スピーカーに切り替えて、三人でスマフォの画面を見守っていた。

 すると、呼び出し音が止まる。電話に出たのだ。

「もしもし!」

 林さんがスマフォを耳に当てて話し始める。

「ねぇ、今どこにいるの? なんで教えてくれた番号に掛けたのに出なかったの?」

 俺と蓮は、林さんの方に耳を寄せる。

「ああ、ごめん。今、瑛人は電話に出れない」

「じゃあ、瑛人はどこにいるの」

「その前に、うんと……  君たちは誰?」

 蓮が林さんを差し置いて言う。

「息子だよ」

「そう…… なら、これからいう住所に来てよ。そこで如月瑛人の知り合いだって言うんだ」

 林さんが相手の言葉を復唱し、俺が紙と鉛筆でメモをとった。

 林さんに確認してもらうと、頷いた。

「今からは遅いので、明日行きますから」

 電話を切った。

 蓮は不満げな声で言う。

「明日なの?」

「蓮、今日はもう遅い。今から行く電車は動いていない」

「忠さん車の免許持ってたでしょ」

「免許はある、けど、ペーパードライバーなんだ」

 メモを取った住所を検索したらしく、スマフォの画面を見せて言う。

「電車だとここまで行き着けないわ。駅からレンタカーを借りないと」

「運転は久しぶりだけど、交通量の少ない田舎なら大丈夫だろう」


 美月……

 俺は見たことがない自分の娘の夢を見た。

 如月遥香と同じ年齢に見える。夢だからか、体型も、顔つきも、表情まで遥香そっくりだった。

 パパ、と言って抱きついてくるその娘を、俺も抱き返す。

 それだけではない。俺は娘を押し倒し、行為(・・)に及んでいる。背徳的な、退廃的な雰囲気が、重く夢の中に漂っていた。


 目が覚めると、まだ当たりは暗かった。

 あまりの気持ちよさに、人生で初めて夢精していた。

 このままもう一度眠りにつくことはできない、俺はそう思って居間に行きパソコンを開いた。

 蓮が開いたページを見てみる。

 遥香の子供たち、『ラジオくん』たちについてのことが書かれている。

 彼らは、人間のようで、人間でないモノに変質した生物だ。

 自分たち同士で性交しても妊娠しないと書いてある。自らでは生殖できないから、俺たちを利用して、数を増やすしかない。もし自分たち同士の性交で増えることが出来たら、人はあっという間に駆逐されただろう。

 俺がパソコンを閉じると、林さんが起きてきた。

「忠さん、まさか寝てないの?」

「いや、ちょっと前に起きただけ」

「何か書いてあった?」

 俺はノートパソコンを閉じた。

「彼らは、彼ら同士で子供をもうけることが出来ないらしい」

「……」

 林さんは言葉を返さなかった。

「そう。必ず、林さんみたいな被害者が出ると言うこと」

「忠さん、なんで美奈とか美奈子と呼んでくれないの? 私たちの関係はなんなの」

 俺は視線を逸らした。

 一回、関係を持っただけだ。そう言いたかった。だが、言えなかった。林さんの人生に関わりすぎるほど関わってしまっている。少なくとも他人ではいられない。

 林さんの見つめ返し、俺は言った。

「これは性格によるものだから、分かって欲しい」

「……」

 林さんの視線に耐えられず、顔を背けてしまった。

 居間に蓮が目をこすりながら入ってくる。

「パパ、起きた」

「ああ、この通り、起きたよ」

「もう行ける?」

 俺は立ち上がった。

「着替えれば行けるよ。けど、ママはまだ化粧をしたり支度に時間がかかるから待ってね」

「うん」


 駅から電車に乗り、隣県へと向かった。

 隣県ではあるが、住所の当たりはさらに次の県の県境に近い。

 特急で最寄りのターミナル駅に着くと、そこからレンタカーを借りた。

 蓮は電車の中で食べるお弁当が嬉しかったらしく、車の中でも、何度もその話を繰り返した。

 ナビによるともうすぐ目的地に着きそうなのだが、この先は山道らしくバリケードがあって道が塞がっていた。

「どうしよう」

 林さんがナビを見て言う。

「山だし、歩ける距離じゃないよね」

「……これをどかして車で入ろう」

 俺はバリケードを一旦どかし、車を入れてから、元に戻した。

 山道を慎重に進んでいくと、かなり山を登り降りしたらしく、何度か耳が痛くなった。

 高い木で囲まれた道を走っていると、太陽も見えず向いている方角が分かりにくい。

 森の中を進む細い道が終わると、急に駐車場にでた。

 駐車場と言っても、ただ木がなく平になっているだけだった。ただ、停めてある車はどれも高級そうな4WD車だった。やはり周りは高い木々で囲まれて風景を楽しむこともできない。

 そして駐車場の端に、大きなロッジのような建物がいくつか建っている。

「ここ、だよな」

 ナビを確認する。地図上に掲載されている道がないため、時折地図が飛んでしまう。

「蓮?」

 その声に振り返ると、蓮が林さんに抱きついている。

「ママ、怖い」

「怖い? 何が怖いの? 何か見えるの? ママに教えて」

「ううん、何も見えないけど」

 林さんは何かを感じたのか、言った。

「帰りましょう」

「あの建物を見てからでも」

「良いから引き返して、蓮が怖がってるんだから!」

 言い出したら聞かない。特に蓮のこととなると何を言ってもダメだ。

 俺は車を反転させて元来た山道に帰ろうとした。

「?」

 山道を塞ぐように車が一台止まっている。

 さっきまでは、別の場所に停車していたのに。

 クラクションを鳴らすが、車はどかない。

 気づくと、車の周りを迷彩服にサングラスを掛けた連中が囲んでいた。

 何も出来ないまま、その連中の手で車のドアが開けられた。

「降りろ」




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