冒険者ギルドで受付嬢として働いていますが助けてくれたパラディン様に心を奪われています
私はリーゼ、とある町の冒険者ギルドで働いています。
ギルドの仕事を始めて半年ようやく一通りの仕事をこなせるようになってきました。
仕事は主に窓口業務を担当しているのですが、これがかなり大変なんです。
一口に冒険者と言っても色々な方がいまして。
私は今日も冒険者ギルドの窓口で仕事をしていました。
それで駆け出しの冒険者が相談にやってきていたんです。
10代前半の若い男の子でした。
「すいません。お金がなくてポーションが買えないんです。」
「ギルドで登録された時に支度金をお渡ししたと思うんですが、支度金はどうされたんですか?」
「先に武器や防具を揃えたんで、お金が無くなりました。」
窓口に来ていた冒険者の男の子は支度金で先に強力な武器を買ってしまったためにポーション等のアイテムが買えなくなっていました。
「あー、駆け出しの冒険者さんがやりがちなミスなんですよね。」
「お願いします。ポーションをタダで分けてくれませんか?」
「配給場にポーションはありませんでしたか?」
「はい、もうなくなっていました。」
「最近配給用のポーションがなくなるのが早いんですよね。」
冒険者ギルドは冒険者がいてこそ成り立っている。
だから冒険者を支援する制度をいくつも用意しているのだ。
この冒険者ギルドでは登録した冒険者達に支度金を渡したり、ポーションなどの消耗品の無料配給などをしている。
でもこの日分の用意されていた配給用のポーションは他の冒険者達が持って行っており、1本も残ってはいなかったんです。
うーん、何とかしてあげたいな。
せっかく冒険者ギルドの門を叩いてくれたんだし、できる事はしてあげたい。
仕方ないな。
私は窓口の奥にある棚にあるポーション置き場から5本ほどポーションを取りに行った。
そしてそれを窓口の所に置いた。
「それじゃあこれを使ってください。」
冒険者の男の子は嬉しそうに言った。
「ありがとうございます。これでダンジョンに行けます。」
そして5本のポーションをカバンに詰めると私に向かってお辞儀をした。
そして冒険者ギルドより出かけて行った。
すると隣の窓口を担当しているメルが私の方を見ながら声を掛けてきた。
「良かったのリーゼ?明日の配給用のポーションが減ったら他の冒険者の人達が怒るよ?」
「私が後で減らしちゃった分のポーションは自腹で買ってくるから心配しないでメル。」
「もうお人よしなんだから。」
すると私の窓口に二人の冒険者がやってきました。
この冒険者達が本当に厄介でした。
この二人は兄弟で冒険者をしており、二人ともBランクの冒険者でした。
すると大柄な方の冒険者が私に声を掛けてきました。
「おい!!クエストの報酬についてだが!!!」
ああ報酬を受け取りにきたのだと思った私はクエスト内容を思い出しながら会話をしました。
「メルナ洞窟のダークビショップ討伐のクエストでしたね?」
「ああそうだ。」
「クエストの完了を伺っています。報酬額は6000ガルです。今ご用意しますのでお待ちください。」
すると大柄な方の冒険者が大きな声で私に言った。
「ちょっと待て!!」
「俺らはBランク冒険者だぞ??」
「はいそうですね。」
「Cランクのクエストで報酬がたったの6000ガルだぞ。これはBランクの仕事に相当する仕事だ。2万ガルでも安いぐらいだ。」
えっ??この人達は何を言ってるの??私は理解できないまま話を聞きました。
「このクエストの報酬を3万ガルに引き上げろ!!クエストのランクもBランクに格上げさせるんだ。これはBクラスのクエストが相当だ。」
「このクエストがBランクになれば俺は昇格する資格を満たせてAランク冒険者の仲間入りって訳だ!!」
な??この冒険者達は自分が受けたクエストに対して難癖をつけて報酬を吊り上げようとしているのだ。
すると隣の窓口に座っていたメルがその冒険者達に言いました。
「ふざけないでください。提示しているクエストを受けると承諾したという事は、提示している条件に合意しているという事です。承諾した後から難癖をつけるだなんて認められるわけないでしょう。」
「はあ!!俺の言った事が聞こえなかったのか!!!さっさと3万ガルとAランク冒険者の認定書を持ってこい!!!」
メルは相当頭にきているらしくその冒険者に言いました。
「分かってるんですか?あなた達がやっている事は恫喝ですよ??」
大柄な冒険者が大声で言いました。
「それがなんだ??おい!!ギルド受付ふぜいが調子こいてるんじゃねえぞ??」
だがメルも負けじと大柄の冒険者に言い返す。
「調子にのってるのはあなた達でしょう!!!そんな事がまかり通ると思ってるの!!」
メルはすごいな、こんな大柄な冒険者の男性相手でも全く引かない。
「まかり通すんだよ!!!」
大柄の冒険者はそういうと突然私の襟首を掴んで窓口の外に引きずりだそうとした。
私はすごい力で窓口の外に引きずり出されると、その大柄の冒険者に羽交い絞めにされた。
さらに弟の冒険者が斧を私の首元に突き付けてきた。
私は恐怖のあまり目を瞑っていた。
メルの私の心配する声が聞こえてくる。
「リーゼ!!!」
後ろから冒険者二人の声が響いてくる。
「さあこいつを真っ二つにされたくなければさっさと3万ガルと認定書を持ってこい!!」
「これいいアイデアですよ。さすが兄貴です。」
「だろう!!ちまちまクエストなんてやらなくて良かったのさ!!こうすれば簡単にAランク冒険者の仲間入りだ!!!はっはっはっ!!」
すると扉が開く音が聞こえた。
小柄の冒険者の声が響いた。
「兄貴、ようやくAランク冒険者になれますね。」
大柄の冒険者の声が響いた。
「全くだ、俺様のような人間はAランク冒険者こそふさわしい!!」
それから聞き覚えのある声が聞こえた。
「あなたたちがAランク冒険者にふさわしい人間とはとても思えませんが?」
声の主を確認したかったが羽交い絞めにされており確認できなかった。
だがその声を聞いただけで私はとても安心できたのだった。
「あん??なんだテメエは??」
「ラグタスと申します。」
バキ!!バン!!!
数回何か大きな音が聞こえたと思うと次の瞬間私は自由になった。
解放された事に気がついた私は慌ててカウンターの中へと逃げ帰る。
メルに抱き止められて私は後ろを振り返った。
そこには倒れ込んでいる大柄の冒険者と顔を青くしている弟の小柄な冒険者。
そして粉々になった斧の破片が周囲に飛び散った。
そして私が心を奪われているあの方がそこにいました。
黒髪で凛々しい顔立ちのあの方がそこにいました。
あの方がきてくれたんです。
あの方は落ち着いた様子で私に尋ねた。
「リーゼさん、大丈夫ですか?」
私はあの方に話しかけられて慌てて答えた。
「は、は、はい、大丈夫です。」
またあの方に助けてもらちゃった。
すると大柄の冒険者が起き上ってきて大声を上げた。
「テメエ!!ふざけやがって!!」
あの方は冷静に受け答えをする。
「武器を壊した事と殴った事はすいません、ですが脅迫はいけませんよ。」
「テメエさっきから聞いていれば何様のつもりだ!!!俺たちはBランク冒険者様だぞ!!」
すると弟の冒険者が大柄の冒険者に言った。
「兄貴??こいつ鋼拳のパラディンじゃないですか?」
「な??鋼拳のパラディンって言ったら、魔王を倒した勇者パーティの一人だぞ??」
弟が兄貴に言った。
「そうだ、鋼拳のラグタスですよ!!」
「確かに私の事をそう呼ぶ方々もいますね。」
するとあの方がメルに話しかけました。
「メルさん??一つお聞きしたい事があるんですがよろしいですか?」
「何ですか?」
「この方達のクエストの報酬はいくらですか?」
「えっと6000ガルです。」
「6000ガルですか。ありがとうございます。」
あの方はメルに一礼すると懐から布袋を取り出しました。
そしてそれを近くのテーブルに置いたのです。
そして大柄の冒険者に話しかけました。
「この袋には1万ガルが入っています。先ほどの私が壊してしまったバトルアックスも4000ガルもあれば買えるはずです。それを差し上げますのでここから立ち去ってもらえませんかね?」
「何だと??ふざけるんじゃねえ!!こっちはもう3万ガルを当てにして使い込んでるんだ!!今さら引けるか!!」
「兄貴!!これで手をうちましょう!!!鋼拳のパラディン相手じゃ分が悪すぎますよ!!」
「ええい!!くそ!!!」
Bランク冒険者達はテーブルに置かれたお金の入った布袋をわし掴みにすると乱暴にドアを開けてギルドの外へと出て行った。
冒険者ギルドから兄弟冒険者が立ち去って安堵に包まれました。
メルが怒りくるった様子で言いました。
「あいつら、好き放題やって!!ギルド登録を抹消してやるんだから!!」
メルがラグタス様に振り返って言いました。
「助かりました。ラグタス様!!ありがとうございました。」
「いえいえ、皆さんが冒険者の為に日々頑張ってくれている事を知っていますし、友人を助けるのは当然の事ですよ。」
「リーゼさんも大変でしたね??」
ラグタス様に話しかけられて、私は慌てて答えました。
「えっとえっと、あの??はい??えーと??大丈夫です。ありがとうございます。」
ダメだ。ラグタス様に話しかけられると、いつも緊張してしまう。
もっとうまくラグタス様とお話したいのに。
パラディンのラグタス様は、冒険が大好きで少し前まで世界中を回っていたらしいです。
魔王を倒した勇者パティーの一人でSランク冒険者でもあります。
謙虚なのにとても強いパラディンなんです。
私はさきほどまで人質にされていた事すら忘れてしまうほど、緊張していました。
なにせ愛しのパラディン様が目の前にいるんです。
緊張するなという方が無理な相談です。
さっきも緊張はしていましたが、今はさっきよりももっと緊張しています。
心臓の脈拍が大きくなり、ドクドクと鼓動が耳に聞こえてきます。
ううやばい、緊張して話しかけられない。
せっかくラグタス様とお話しできるチャンスなのに。
うう口をひらけ私、もっとラグタス様とお話しがしたい。
でもやっとの思いで出した言葉はこれでした。
「ほ、報酬??」
ラグタス様が私の言葉を尋ねてきました。
「報酬というのは???」
わ、馬鹿!私何言ってるんだ??
うまく話をつなぐんだ私!!
するとメルがラグタスに言った。
「そうだ報酬をお支払いしないと。ラグタス様のクエスト報酬が貯まってます、お支払いさせてもらってよろしいですか?」
「クエスト報酬なら別に結構ですよ。私が好きで首を突っ込んでるだけですから。」
「そういう訳にはいきません。ラグタス様はたくさんのクエストをクリアされてますから。」
「だったら駆け出しの冒険者達の為に使ってあげてください。駆け出しの頃は色々と物入りでしょうから。」
メルがラグタス様に尋ねました。
「本当によろしいんですか?」
ラグタス様は笑顔でメルに言いました。
「ええもちろんです。」
「いつも助けて頂いている上に、こんな事までして頂いて本当にすいません。」
「では仕事の邪魔をしてもいけないのでここで失礼しますね。明日の会議はよろしくお願い致します。」
ラグタス様はそういう言うと冒険者ギルドから出って行った。
うーあ!!また話せなかった!!!ラグタス様が行ってしまった。
メルは平然とラグタス様と会話できてるのに、なんで私はできないの??
そう私はこのパラディンのラグタス様に恋をしている。
初めてラグタス様に助けてもらったのはギルド職員になりたての頃だ。
ある地下迷宮の現場を確認しておこうと思って単身で確認しにいった時の事だ。
当時はまだギルドが出来たばかりで私も入ったばかりの頃だった。
今思い返すと危険極まりない行為だったな。
よくあんな危険な場所に単身で行ったものね。自分の事ながら呆れてしまう。
地下迷宮の中でコボルトに襲わそうな所をさっそうと現れたラグタス様に助けてもらったのだ。
もっともあの時は名前すら聞けずにラグタス様はすぐに立ち去ってしまったんですが。
私は助けてくれた方の名前をすぐに調べました。
彼はSランク冒険者の一人でパラディンのラグタス様だとすぐに分かりました。
私が彼に惹かれてしまったのは必然だったのかもしれません。
だってあれだけ強いのにとても謙虚なんですもん。まあ惹かれてしまいますね。
そんな事を考えているとメルが声を掛けてきました。
「ねえ??リーゼ??ラグタス様に告白しないの??」
「はあ??告白??」
「リーゼがラグタス様に惚れてるのなんてみんな知ってるから。」
「そうなの??」
「だってリーゼの反応見てたらまるわかりじゃん。」
「うう、まるわかりかな??」
「うん、だからリーゼ、告白しといた方がいいよ??」
「そんな勇気ないよ。」
「明日の冒険者会議には来てくれると思うから、その時告りなさいよ。」
「だから無理だって。」
「私がお膳立てしてあげるから。ねえ??」
「でも。」
私の顔は恥ずかしさで真っ赤になっている事でしょう。
ラグタス様に告白なんてできるわけないよ。
そりゃメルならそういう事言えるだろうけどさ。
「もたもたしてたら他の子に先越されちゃうかもよ??ラグタス様って人気あるからねえ。今も告白しようか迷ってる子がいるかもねえ??」
「ええそうなの??」
「ラグタス様は人気があるから。誰かが告るのは時間の問題よ。」
そんなのやだ。ラグタス様の大事な人になりたいよ。
「リーゼ、覚悟を決めなさい!!」
「分かったメル!!わたしやってみる!!」
「それでこそ私の親友よ。」
よし明日ラグタス様に告白しよう。愛しのパラディン様に告白しよう!!私はそう決心したのです。




