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復讐者が征くゾンビサバイバル【第三章完】  作者: Mobyus
第三章 埼玉編
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第59話 石棺‐弐

注意

・第59話には普段よりもエグい表現が含まれています。とくにグロテスクな表現が苦手な方は読み飛ばすことを強くお勧めします。

・読み飛ばす方もいると思うので本日は同時に2話投稿しています。

 病院を出て先日食料の調達を行ったスーパーのある方へと向かう。道中には感染者が数体いたが、非アクティブな状態で立っていたため、障害になりそうな場所にいる個体は後方から近付いてマチェットで首を刎ねた。


「う、えぐぅ…」


 後方で、一番若いドライバーが半分ほど首が切られた感染者を見て、顔を青くしている。


「なるべく見ないようにしてください。見ても良いことなんてないですよ」

「そ、そりゃわかってるけどよぉ…」


 まあ、普通の人の反応だな。他の人たちも少々、いや結構顔を青くしている。

 それでも今は進むしかない。

 東へと進み、線路を渡る。そのまままっすぐ進み、今度は国道を渡る。


 そして少し歩いて、ようやく巨大な建物が見えてきた。確かに、デカい。こんな巨大な物流倉庫がこの地域に必要なのか、と突っ込みを入れたくなるくらいの大きさだ。

 幸いにも敷地内に感染者はいないようで、俺とドライバーの6人は難なく物流倉庫の建物へと近付いて行った。

 敷地に入ってすぐには、螺旋状のスロープがあり、大型トラックが何台も停まれる立体駐車場に繋がっている。関係者以外立入禁止と書かれているが、構わずにそのスロープを上がって行く。


 1階には駐車場がなかったため、2階へ。そこには6輪の大型トラックがズラッと並べられていた。


「ヨッシャ」


 と言って先に行こうとする花丸さんを止めて、後ろを警戒してくれとドライバーたちに頼み、俺はトラックを1台1台、車体の下や後方、トラックとトラックの間を念入りにクリアリングする。


 感染者はいない。俺は後ろで待機していたドライバーたちに安全を知らせるように、丸のハンドサインを出した。

 ドライバーたちはトラックのドアを開けようとするが、案の定、鍵が掛かっていた。念のため、と言って全ての車両を確認したが、もちろん全て施錠されていた。安全管理ヨシ!


「こういうのって、鍵はどうしてるんでしょうか」

「パッと見たところ、ここにあるトラックはこの倉庫の会社の物みたいだ。たぶん、どこかにまとめて保管してあるだろうな…」

「じゃあ探してきます。中の状況はわからないので、この奥のトラックの陰でじっとしていてください」

「お、おう。まあ、足手纏いになりそうだしな…」


 花丸さんはそう言って、他のドライバーたちを集めて駐車場の奥の方へと向かって行った。


 俺は駐車場の入り口辺りにあった建物内へと入れる扉へと向かう。だが案の定鍵が締まっており、頑丈な鉄製扉を強引にこじ開けることもできなさそうだった。

 俺は地上へと戻り、建物の周りをぐるっと歩いて行った。


 建物の裏側に行くと、非常階段があった。2階、3階、4階のそれぞれに続く扉がある。

 階段を上がり2階の扉に手を掛けるが、やはりこちらも鍵が締まっていた。念のため、3階も確認するがやはり施錠されている。


 …4階も、見とくか。階段を上がるのも少しだるいが、いちおう見ておかなければ…


 ガチャン。


「開くのかよ…」


 2階3階と施錠されていたのに、4階は開いている。何か、変だ。

 ショットガンとマチェットをいつでも取り出せるか確認し、重い非常用扉をゆっくりと引いた。


「ぅ゛ぅぅぁあ゛」


 感染者がいる。しかもかなり扉に近い場所にいたらしく、ゆっくりと開けた非常用扉の音に気が付いたようだ。作業着を着た感染者と目が合う。

 うめき声をあげながら、こちらを認識した感染者は両手をこちらに向けて歩き始めた。

 俺は片手で抑えていた扉を両手で掴み、タイミングを合わせて思いっきり閉める。


 ガゴヂャ。という音と扉が勢いよく閉まった音が周囲に響く。扉をもう一度開くと口から大量の血液を吐きながら活動を停止している感染者が倒れていた。顎が砕けて首が折れているようだ。

 死体を跨いで中に入る。


 暗いな。窓がない廊下はほぼ暗闇だ。非常用扉に挟んだ感染者だった遺体の腕、その隙間から僅かに入る光を頼りに奥へと進んでいく。

 エレベーターがあるが既に物言わぬ箱だろう。その先に階段に続く扉を見つけた。

 扉を音を立てないように慎重に開く。扉の向こうは俺がいる廊下よりも明るいようで、開いた隙間から僅かに光が漏れて来ている。

 扉の向こうには感染者はおらず、比較的明るい階段があった。ここには各踊り場に光を取り込む用の窓があるおかげか、明るかった。

 俺は1階まで階段を降り、廊下へと続くと思われる扉を開ける。


「…ぅ」


 感染者の声か。そんなに多くない。

 ゆっくりとなるべく音を立てないように慎重に扉を開き、その隙間から廊下を覗き込んだ。

 10メートル先、感染者が扉をまっすぐに見据えて弱く唸っている。


 こっちに気付かないな。

 俺は階段側から入る光を頼りにするため、自分の身体をドアストッパーにした状態でショットガンを構えた。照準を突っ立っている感染者の頭に定めてトリガーを引いた。

 散弾が数発頭部を直撃し、感染者は扉に頭をぶつけるようにして倒れた。


 先に進むため、扉から離れる。すると身体で抑えつけていた扉は自然と閉まるわけだが、扉が閉まると廊下は一切の視界のない暗闇へと変わった。

 俺は急いで階段と廊下を隔てる扉へと戻り、背負っていたバックパックを扉に挟んで照明を確保した。


 再度、廊下を進む。感染者が扉の前で血だまりに倒れている。その足元に懐中電灯が落ちていた。

 俺はそれを拾い上げて、スライド式のスイッチを動かした。


「うお、眩し」


 予想外に光量が大きく、一瞬だけ視界が塞がれるが、瞳孔が動いてすぐに眩しさはなくなる。

 壊れて、いないな。病院ではほぼ全ての電子機器が壊れて使えなくなっていたが、これは使える。

 やはり俺の仮説は正しかったのか。鉄筋コンクリート造りの大型建造物の中なら外部からの強烈な電磁波を防げたんだろう。


 扉に懐中電灯の光を当てる。休憩室、か。

 俺は警戒しながらも足元に転がる遺体を足で押して動かし、可動域を確保してから扉を開けた。

 中は懐中電灯で照らさなくとも明るかった。ソファーとテーブルがあり、テーブルの上にLEDランタンが置かれており光源になっていた。


 そして遺体が、2つある。


 感染者ではないようで、俺が音を立ててもピクリとも動かなかった。


 俺は近付いて様子を見る。1つ目の遺体は男性、30代か40代くらいで頬骨が出るほど痩せこけており、口から顎にかけて黒ずんだ何かが付着している。そして2つ目の遺体は女性でテーブルの上に置かれており、遺体の腹部が損壊している。

























「………食ったな」






 扉を感染者に塞がれ、出れなくなったんだろう。何日もこの狭い休憩室に閉じ込められ、食料もなく、やがて飢えて、片方が死んだか動けなくなり、もう1人が飢餓に耐えられなくなり手を染めてしまったんだろう、禁忌に。

 だが結局、何らかの理由で死に至った。報われないな。




「なんて、ことだ」


 しかし…扉の外にいたのは感染者1体、2人いれば素手でも感染者を倒して外へ出ることは不可能ではなかったはずだ。

 あまりの恐怖で動けなかったのか、同僚の顔をした感染者を仕留めることができなかったのか…。




 俺はその休憩室を出た。








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