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復讐者が征くゾンビサバイバル【第三章完】  作者: Mobyus
第三章 埼玉編
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第52話 狩人-弐

 川幅数メートル程度の小森川を横目に、川沿いの道を歩く。この道を進んでいけば目的の保養所がある。


 あと200メートル程度の距離までやって来た。目的の建物はまだ見えない。が…


 道路脇にある茂みに覆われた朽ち果てた小屋で何かが光る。

 そのまま1秒ほど歩き続けた後、肩に掛けていたライフルを手に持ちながら急速に身体を右へと逸らす。


 バヂュン―――――


 耳をつんざくようなソニックブームで一瞬視界が霞むが、ライフルを構えてスコープを覗く。

 70メートルほど前方の道路右脇のボロ小屋の窓に、ボルトハンドルを引いて薬莢を排出している狙撃手が映る。排莢を終えて再度スコープを覗きこちらを視認し、口を半開きにしている。

 狙撃手のあほ面に照準を合わせ、迷わずトリガーを引く。銃口がバットで殴られでもしたような強烈な反動がライフルを持つ両腕に伝わって来る。それとほぼ同時にライフルの右側面から.30-06の薬莢が無造作な回転をしながら飛び出していく。

 射撃体勢を解き、肉眼でボロ小屋を見る。窓から見える小屋内は、ここからでもよく見えるくらい鮮血に染まっていた。


 川向こうの山肌やらなんやらに反響していた銃声が鳴り止み、数秒前までの静けさが戻って来る。


 俺は急ぎガードレールを越えて川岸に降り、深さ30センチもない小森川を渡って行き、川向こうにある山肌を駆け上がった。この辺りは整備された杉林のようで傾斜は緩やかだ。

 杉の木で半身を隠しながら、ライフルのスコープは使わずに肉眼で狙撃手のいたボロ小屋を監視する。距離はおおよそ120メートルほど。


 3分ほど待っていると、5人ほどの集団がやって来た。全員白い服を身に纏っている。元凶なのは確実だな。流石に狙撃手は白い服を着ていなかったため、無関係の人をやってしまった可能性を考えて内心冷や冷やしていた。まぁ、躊躇いなく撃ってきた時点で敵ではあるのだが。


 白服の5人は茂みを掻き分けてボロ小屋へと近付いて行き、1人が窓を覗き中の惨状に驚いてひっくり返っている。そりゃ、頭をぶち抜かれて鮮血をボロ小屋内のそこらじゅうにばら撒かれているんだから驚きもするだろう。

 残りの4人も何事かと走って近付いて行き、中の様子を確認し動きを止めた。3人は窓を立った状態で覗いたまま止まり、1人は驚いて尻餅をついたまま、そしてもう1人は尻餅をついた者を落ち着かせようと肩を掴んでいる。


 ライフルを構え、スコープを覗く。未だに大きな動きはない。

 立ったまま窓から小屋を覗いている1人の後頭部に照準を合わせてトリガーを引く。


 強烈なマズルファイアと共に銃口から射出される弾頭は850メートル毎秒の速度で飛翔し、標的へと向かって行く。

 弾は外から窓の中を見ていた白服の男の後頭部に直撃し、そのまま男の腰から上を小屋の中へ押し込み、腰から下は窓の外に残った。白一色の服のためか干された布団のように見えなくもない。


 反動を抑え込み、再度スコープで小屋を捉える。立った状態で窓の中を見ていた残りの2人は自分の状況を把握したのか小屋の窓の中へと飛び込んだ。尻餅をついている者は未だに取り乱しており、それを落ち着かせようとしていた者は銃声に驚いて固まっている。

 銃声に驚き、銃声の発生源であるこちらを唖然とした状態で見ている顔面に、照準を合わせてトリガーを引く。


 反動で持ち上がった銃口を再度ボロ小屋に向け、スコープを覗く。尻餅をついていた男は、そのまま尻をずりずり地面に擦り付けながら、手と足を動かしなんとか身体をボロ小屋の陰へと退避させようとしている。

 照準を合わせトリガーを引く。


 スコープを再度覗き、戦果を確認する。ボロ小屋の中で鮮血をまき散らし死んでいる狙撃手、ボロ小屋の窓に干された布団の如き死に様の白服、小屋の外で頭部を撃ち抜かれ死んでいる白服、尻餅をついたまま移動していた白服は腹部に銃弾を受けて服を真っ赤に染めながらも僅かに動いている。死亡3、瀕死1。


 トドメを刺す必要はないと判断し、ライフルを肩に下げて移動を開始。大体のこちらの位置を掴んでいるボロ小屋の中に逃げた2人はしばらく射線には出てこないだろう。

 山肌を登り、林道に出る。ここまで来ると僅かに木々の隙間から川が見てる程度で、川の反対側までは見えない。


 そのまま林道を小森川上流方面に進む。


 30分弱歩き、ようやく対岸に渡る橋が見つかった。その橋を渡り、襲撃した地点から真逆の方向から再接近していく。

 保養所と思われる場所、おそらく元々はこちらが正面入り口だったのだろう。敷地を囲う低いコンクリート製の壁の上には急造で拵えた木造の壁が増設されているようだ。

 こちらを監視している者はいない。

 30分前に俺が起こした襲撃に対処するために、こちら側は明らかに手薄になっている。


 正面入り口から堂々と静かに、俺は保養所の敷地へと入って行った。






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