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復讐者が征くゾンビサバイバル【第三章完】  作者: Mobyus
第三章 埼玉編
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第39話 憎悪

 半グレ集団を追うこと十数分。奴らは古い集合住宅の敷地へと入っていった。

 3階建てのアパートメントがいくつか集まっている団地のようだ。


 しかし、全く振り返らずにここまで来たな。感染者に喰われた仲間を心配する素振りが一度もなかった。

 俺は足音を立てないように気を付けながら、集団が入っていった建物へと近付いた。粗雑に横付けされたDQNカスタムのワンボックスが1台、ぼろい軽バンが1台停まっている。

 建物に近付くと、中から声が聞こえて来た。ギャハハという気色の悪い笑い声や呻き声、そして。


「おい、紙田も攫いに行くぞ、前から目付けてたんだ」

「いいっすねぇ!俺、あいつの家なら知ってますよ!」

「紙田か、へへ、デカいんだろ?」


 という誘拐を目論む声が聞こえて来た。強姦未遂を犯しているクズ共の会話であることを考えると、実行に移す可能性は十二分にあった。

 俺はマチェットから手を離し、ライフルのチャージングハンドルを引いて、弾倉から薬室内へと弾薬を送り込む。折り畳み式ストックを畳み、右手にライフル、左手にマチェットを持って建物の入り口へ進む。


『紙田()攫いに行く』その言葉、つまり既に攫って来ている人がいるということ。踏み込むことに戸惑いはなかった。

 1階の入って右側の扉に手を伸ばしてドアノブを降ろす。施錠はされておらず、音を立てずに玄関へと侵入した。


「へっへ、そうと決まればとっとと行く…」


 廊下に出て来たのは金髪で耳や鼻やらにピアスが大量についているガタイの良い男。俺と目が合って固まった。


「クズが」


 左手に持ったマチェットから手を離さず、左腕の上腕辺りにライフルのハンドガードを押し付けて支え、トリガーを引いた。


 破裂音、悲鳴、ドサリと崩れ落ちる男。

 何事かと廊下に飛び出て来るクズ共に、容赦なく銃弾を浴びせる。

 僅か数秒の間に廊下は4人の死体で埋まり、血の川を形成している。

 俺は土足のまま、死体を跨いで廊下を進む。


 廊下を進みリビングと思われる部屋に入る。中には3人いるが、全員が虚ろな目をしており、こちらを認識することもできていない様子だった。それぞれの手には吸引器具と思われるパイプ状のものが握られており、薬物の影響下にあるものと思われた。

 殺す価値もないと廊下を引き返すと、玄関から半グレの仲間たちが入って来ており、死体を見て愕然とした表情をしている。

 だが、構うことはない。トリガーを引いた。


 アパートメントの1階は死体と血の海になっていたが、構わず反対側の部屋へと突入した。

 廊下を抜けてリビングに入るが、そこは普通の部屋ではなかった。


「ラボ…か」


 ガスボンベ、燃料携行缶、フラスコ、薬品瓶などが並べられている大きな机が置かれている部屋。違法薬物を精製するための工場ラボのようだった。

 そこには驚いた様子もない若い男が1人。半分逝った目でこちらを見ながら、身体を震わせている。こいつも薬物の影響下にある様子で、動く気配もない。小さくうわ言のように口をパクパク動かしているが、声にすらなっていない。


 俺はすぐに引き返し、2階へと向かい次の部屋へと押し入る。

 廊下で薬物影響下にある1人、リビングで影響下にある5人がいた。こちらは注射器のようなものを握ったまま虚ろな目をして身体を震わせていた。全員、先ほど病院に来ていた者たちで、ここに到着してすぐに薬物を使用したものと思われる。


 しばらく動けないものだと判断し放置。次の部屋の玄関を開けようとするが、施錠されている。

 内部から足音が聞こえるため、騒ぎを聞いて施錠したものと判断。扉から少し離れてライフルを構え、ドアノブに向かって射撃する。

 何発か撃つと、ガゴンという音と共に玄関が勝手に開いた。すると中から男が飛び出して来た。

 金属バットを上段に構えながら扉を蹴飛ばして出て来た男は、そのまま金属バットを振り下ろした。

 咄嗟に後方に下がるが、バランスを崩し尻餅をついてしまう。


「死ねヤァァアアアアアアアア!」


 次の一撃が来る…!左手に持ったマチェーテを右手で支え、迫り来るバットを受け止める。そのままマチェーテの刃を滑らせて行き、バットを握る指を切り裂く。


「アギャァアアアアアアアア」


 バットが支えを失って倒れ、俺の胸に落ちて来るが、そんなことには構わずにマチェットを立てて、男の首に向かって持ち上げる。

 ゴボォ、グボッ、と声にならない音を出して血を噴き出す。大量の血を浴びながらも、息の根を止めるまで俺は力を緩めなかった。


 俺の上に倒れた男をどかし、ドアノブを破壊した扉を通って部屋の中へと入った。

 廊下を抜けてリビングに向かうと…


 虚ろな目をした少女が、衣服が乱れた状態で倒れていた。複数の裂傷、打撲痕なども見受けられる。

 薬物影響下にあるのか、精神的苦痛によるものかは不明だが、目の焦点はあっておらずこちらを認識している様子はない。


「クソ、クソが」


 悍ましい。背筋が冷え、頭の中がスゥっと白くなるような感覚を覚えた。

 少女の衣服を正し、背負った。そのまま建物の外へと連れだして、一度地面に降ろす。

 1階にあるドラッグラボに入り、ガソリン携行缶を手に取った。そして中身を部屋にばら撒いた。その間も、ドラッグラボ内にいた男は行動を起こす気配はなく、パクパクと口を動かしているだけだった。


「焼け死ね、ゴミ共が」


 玄関から見える場所にあったガスボンベに向かって銃弾を撃ち込む。

 パァンッ、という破裂音と共に帰化したガソリンに引火。赤い炎が一瞬で広がった。


 そして経過を見ることもなく、俺は今も虚ろな目をして反応を示さない少女を背負って、歩き始めた。

 家屋が燃える音を背にしながら、俺は病院へと続く道を急いで歩き始めた。






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