表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐者が征くゾンビサバイバル【第三章完】  作者: Mobyus
第一章 東京編
18/87

第17話 懸案

「よくお戻りになりました。生存者とトラック1台分の食料までおまけで付いて来るとは思ってもいませんでしたが…これでどうにかなりそうですよ」


 避難所へと戻って来た俺はさっそく多田野さんに迎え入れられた。生存者2人も感染の有無を確認してから避難所へと通されている。

 しかし、どうにかなりそうとは何の話だ。


「実は今日予定されていた上野からの避難民の移動が延期になりました。明日の代々木からの移動も1日ずれることになります」

「すべての日程が1日遅れるということですか」

「ええ、向井さんたちが持ち帰ってくれた食料があればここの避難所の食事事情は大丈夫です。とはいえ、代々木の方は…」


 そうだろうな、どこだって食料の余裕はないだろう。それに何も食べていない一般人が数キロを早足で移動することは難しいと言わざるを得ない。子どもや老人、怪我人や病人も少なからずいるはずだ。


「ところで、上野で延期になった理由はなんですか?」


 俺が気になったことを聞いてみると、多田野さんは渋面になって答え始めた。


「向井さん、以前に話した感染発生の原因を覚えていますか?」

「ええ、テロの可能性が濃厚だと言ってましたね」

「そのテロリスト集団が上野に強襲を仕掛けてきたのです」


 は?なんだって?


「自衛隊のいる場所にテロリストが強襲を…?そ、それで被害は」

「あまり大きな声では言えませんが…殉職者2名、一般市民が10名犠牲になりました…銃器と爆発物を所持していたため被害は大きかったです」

「それで、そいつら、テロリストたちはどうなりました」

「恐らく捨て身の攻撃です。自爆テロに近いものでしたから、全員がその場で死亡しています」


 何というか…日本でそんなことが起きるなんてな。いや、そもそもゾンビ化する感染症が発生して拡大している時点で異常なのだが。それもこれもテロだったとなると、目的は何だ。

 まず日本の中心である国会や官邸が狙われていることからして、目的は社会秩序の破壊とかか。営利目的であれば人質を取ったりするものだがそれもなし。それにゾンビ化する感染症などばら撒く必要もない

 さらに生存者を減らす目的で爆破テロなどを繰り返している可能性が高い。俺がアウトブレイク1日目に経験した爆発も同じ集団によるもので、上野の強襲も同じだろう。

 つまり奴らの狙いは人間社会の破壊、だろうか。それ以外の目的があるように思えない。


「どうしてこんなことに…」


 俺はため息を吐いて呟いた。多田野さんも同じように物憂う顔をしている。


「向井さん」

「はい?」

「戻って来て早々、申し訳ないのですが…」


 また頼み事か。急ぎの用事でなければ少し休んでいきたいとこだな。


「まず、先の上野の件で気になることが1つあるのです」

「何か?」

「実は先日、公安を名乗る人物から連絡を受けまして…」


 多田野さん曰く、公安を名乗る人物は避難所へのテロ実行の可能性が高いと警告してきたのだそう。そしてその警告通りにテロが起こった。公安はテロ組織側に潜入でもしてるのではないかと多田野さんは考えているようだ。

 さらにその公安を名乗る人物は応援要請をして来たとも言う。テロ組織の拠点の位置情報を添えて。

 多田野さんも最初は信用していなかったが、上野でのテロを鑑みて信用に足ると考えを改めたという。


「では、応援を送ると?」

「ええ。向井さん、お願いできますか?」

「俺が、ですか」

「はい。どうやら向井さんとこの事件、繋がっているかもしれないんですよ」

「えっと、どういう?」

「テロ組織の拠点がある場所、それは渋谷です。あなたが最初に感染者に出会った場所、そしておそらくあなたが記憶を失った場所ですよ」


 多田野さんの言いたいことはよくわかる。俺は明らかに不審人物だ。銃器の扱いに長けていて、異常な精神力で冷静さを保っている。それでいて記憶がなく自衛隊に協力的だ。敵なのか味方なのかすらあやふやな存在。それがいた渋谷という場所との繋がりがあるものはテロ組織くらいだろう。

 そうなると、俺もテロ組織の一員だったのだろうか。そいつらから受けた訓練で銃器の扱いや精神力を鍛えられたと考えればスジは通る。渋谷の交差点にいたのも感染発生を確認するためだった、とか。

 俺は嫌な汗が出ているのに気が付いて、慌てて額の汗をぬぐった。


「装備はお貸しします。あなたを応援に送ることはリスクもありますが、我々には余裕がありません」

「ですよね。俺が『そっち』側だと敵になる可能性もありますしね」

「はい。ですが、それ以上にあなたには助けられました。これは賭けです。とてもハイリスクハイリターンな賭けですが」


 俺が『そっち』側でなければ公安を名乗る人物とともにテロ組織に打撃を加えられる。俺が『そっち』側ならば俺が自衛隊の敵になるだけだ。ローリスクハイリターンな良い賭けだと俺は思うが。


「これが集合地点です。今日の18時にここにいれば、公安を名乗る人物が接触してきます」


 多田野さんは地図に印をつけて手渡してきた。その場所は…


「急いでください。あと2時間半しかありません。幸運を祈ります」




 渋谷交差点の中心。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ