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復讐者が征くゾンビサバイバル【第三章完】  作者: Mobyus
第一章 東京編
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第13話 索敵Ⅱ

 大通りの歩道を歩きながら建物の中を覗く。銃声に気が付いて道沿いに出てきている感染者がいないかを確認している。

 しかし最初の建物以外に感染者の影は見られず、大通り沿いは排除完了かと思われた。


 大通りを外れて横道へと移動しようとした時、俺の後方頭上で物音がしたことに気が付いた。

 急いで振り返ると、落下してくる何かが目に入った。


 どぢゃっ。


 落下してきたのは感染者だった。見上げると、最初の感染者に続くように続々と落下してくる。

 先ほどの感染者たちと同じように、ガラスに頭でも打ち付け破壊して落ちて来たのだろう。よく見ると、4階から落下してきているようだ。

 16~7メートルほどから落下しているため、感染者たちはその場で頭を強く打って即死している。ただ、その落ちてくる量は尋常ではなかった。


 ―――ぼどぼどぼどぼど


 既に60体ほどが落下してきている。

 そうなると、先に落ちてきた感染者の死体の上に感染者が落下し、死体がクッションとなって生き残る個体が現れた。


 うわ、マジかよ。

 とはいえ、クッションになるものがあったといえども衝撃は凄まじいようで、腕やら脚やらがあらぬ方向へと曲がっている。それでも這い蹲ってこちらへとにじり寄って来る。

 俺は近寄る感染者の頭を狙って撃ち、排除していく。のそのそとゆっくり動く感染者ならそれほど怖いものでもない。


 やがて落ちてくる感染者もいなくなり、大量の死体の山が出来上がっていた。おえっと吐きそうになったが、食料の少ない中で嘔吐するのはもったいないと頑張って押さえる。




 さて、落ち着いたところでこの死体の山をどうするか。まさか避難民の移動経路に大量の感染者の遺体の山を放置するわけにもいかない。


「焼かないと、な」


 俺は周囲を見回して近くに止まっている軽自動車に目を付けた。ドアは開きっぱなしで鍵もついたままだ。

 軽自動車のエンジンを掛けて、死体の山へとバックで近づける。そしてエンジンを切って少し離れた。


「たぶん、ここ」


 軽自動車に小銃を向けて引き金を引く。バチュンという金属音とともに銃弾が車体へと入り込んだ。

 するとガソリンの気化した匂いが立ち込める。そう、狙ったのは燃料タンク。ほぼ満タンだったガソリンはどんどんと流れ出ていき、死体の山の端っこまで到達する。


 あとは火種だな。ガソリンに離れたところから点火する方法を考えていなかった。

 撃ってみるか?いや、弾の無駄かなぁ。


 とそこで流れ出たガソリンに浸かっているスマートフォンを見つけた。おそらく落下してきた感染者のどれかが所持していたものだろう。俺はすぐにスマホに向けて発砲した。


 ゴッ 


 スマホのリチウムイオンバッテリーは銃弾を受けて一気に発熱し、火を噴いた。帰化していたガソリンに点火して一気に燃え上がる。


 あっつ、熱い!

 顔面を火傷しそうなほどの熱風が襲った。もうちょっと離れておけばよかった。

 ただ、死体の服に染み込んだガソリンはすぐに燃え始めて、やがて死体の山の全体へと火が回って行く。

 黒々とした煙が空へと立ち上っている。


 他の場所で上がっている煙も、もしかして…




 そんなこんなで、7個あるうちの2つの弾倉を使い切った俺は、再装填をしてから近くの建物に入って安全を確認する。

 リグに入っている2つの弾倉は既にほとんど空になっているため、バックパックに入っている満杯の弾倉と取り換える。


 しかし、建物内に感染者が多いな。やはり既に感染している人が逃げ込んだ先で発症、他の生存者たちを襲ったのだろうか。先ほどの落下してきた感染者たちの数がかなり多かったことからの推測だが、あながち間違っているわけでもなさそうだな。おそらくほとんどのビルなどで同じことが起こっていただろう。閉所に逃げ込むのは最終手段ということか。


 俺は水分補給をして軽く休憩を終えると、また感染者の排除任務へと戻った。

 大通りは既に排除済み。感染者の姿は見られない。建物の窓も確認するが今のところ大丈夫のようだ。

 次は横道に入って捜索する。道路の幅が狭いためより厳重に警戒しながら進んでいく。路駐している車やトラックが多く死角が多いため、遅々として歩みは進まない。

 建物の内部も全て確認するには多すぎるため、道路から見える範囲だけは確認しておく。


 碁盤目状になった道を蛇腹に進んでいくこと6時間。感染者を10体ほど排除してようやく担当区域の感染者排除は終わった。とはいえ、道路や建物の外にいた感染者のみである。まだまだ建物内に残っている感染者が多数いるだろうが、その全てを排除していては時間が足りない。それにこれだけ銃声を立てても出てこれないのであれば、当分の間は出てくることが不可能な建物の中にいると考えていいだろう。


 しかし、随分と時間がかかってしまった。既に時刻は19時、周囲は暗くなり始めている。街灯は付いているが夜間の移動は死角が増えるため危険と判断して、大通り沿いの安全を確保してある建物で一夜を明かすことにした。


 建物の2階の安全確認を行って、大通りが見渡せる部屋に入る。どこかの企業のオフィスらしいが、ちょうど休憩室が角際にあったおかげで、大通りを見渡せる場所で休息ができる。自販機もあるしソファーもあるため、避難所よりも居心地が良いといっても過言ではない。まあ、いつ感染者が入って来るかわからないから安心して寝れるわけじゃないのだが。


 俺は持って来ていた缶詰めを食べ、水分補給してから窓際のソファーに横になった。

 壮絶なアウトブレイク3日目が終わる。




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