第1話 ダンジョン作成の前のあれこれ
「ダンジョンマスターは、必ず登録から1ヶ月でダンジョンを解放して、侵入者を排除しなければならない」
「排除というのは、侵入者をダンジョンから追い出せばいいの?」
「『そういうことよ』。ダンジョンマスターは、モンスターや罠を各階層に配置しなければならない」
「転移罠みたいなものってある?」
「あるわよ?転移罠そのものが」
「じゃあ!」
「ただし、転移される場所はダンジョン内に限られる」
「うーん、いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」
「ダンジョンマスターは、ダンジョンから出てはならない」
「え?嘘、私1人ぼっち?」
「私がいるわ。まぁ、私はもうすぐしたら帰るけどまた誰か来ると思うから大丈夫だよ?」
「うー。ありがとう、魔女さん」
「どういたしまして。私は、自分で言うのもなんだけど『強いから』DPが凄く入ってきてダンジョン作成が捗ると思うわ」
彼女は、疑問に思ったことがあったので聞いてみることにした。
「DPってなんですか?」
「DPは、侵入者(ダンジョンに入ってきた『知性種族』)を排除した時に入るポイントのことでダンジョン作成に必要なものよ。DPを一定以上入れると、ダンジョンレベルが上がってやれることが増えるわ」
「『知性種族』?」
「あぁ、『知性種族』というのは知性が存在し、かつ『魂核』がある『種族』のことよ」
「『魂核』ってなんですか?」
魔女は、彼女に『魂核』について話すかどうか迷った。そして、魔女は………
「今は、魂が入っている入れ物程度に思っておけばいいわ。ごめんね、誤魔化すみたいな回答になってしまって」
「気にしないでください、魔女さん。今は、ダンジョンのことだけに集中してねってことですよね?」
本当にこの子は、純粋で優しい子なんだなと感じた魔女は心が穏やかになっていった。
「それじゃあ、あなたには『無詠唱魔法』を覚えてもらおうと思います」
「えっ、いきなりどうしたんですか?」
「これを覚えなきゃ今後困ったことになっちゃうの………」
「(ごくっ)ぐ、具体的には………」
「今後、『詠唱魔法』も『無詠唱魔法』もつかえないわ」
彼女は、疑問に思った。
「魔法を使えないとなんで困るんですか?」
「魔法を使えないとあなたの考える絶対不殺のダンジョンは作成出来ない」
「うぇぇぇぇ!思ってた以上に魔法が重要だった!」
魔法の重要性を知る彼女だった。
「最初に覚えてもらう『無詠唱魔法』は、〔魔力循環・魔力操作〕よ!」
「それって『スキル』っていうやつじゃないんですか?」
「ううん、魔法よ。『魔法使い』たちが一番最初に習う魔法。総ての魔法の基本が『魂核』から溢れ出る魔力を体内で循環させ、自在に魔力を操作することよ」
「なるほど!」
「それじゃあ、まず自分の心臓のあたりに手を置いてくれるかな?」
彼女は、言う通りにした。
「次は、心臓から送り出される血液をイメージしてみて」
心臓に手を置いて体内に流れる血液をイメージした。すると、イメージに違和感があった。
「今、イメージに違和感があったんですが………」
「ふふ、どういう違和感かしら?」
「血管の中に血液以外の青白い何かが流れていたような??」
「もう少し続けてみようか?」
「??はい、わかりました」
そう言うと、さっきと同じようにイメージした。するとすぐにイメージに違和感が現れた。もっと深く、もっともっと深くイメージに潜り込む。すると、青白いものは私の身体全体に満ちているようだった。それを血管に流し込んでいただけのことだったんだと感じることができた。残念ながら、魔力の源泉たる『魂核』を見つけることは叶わなかった。
「青白いものが魔力だったんですね!」
「!そうよ、魔力を体内で循環させなさい」
「はい」
「(凄いわね、この子魔法を使うセンスありね。魔力循環は完璧ね)」
「次はその魔力を右手に集中させなさい」
右手に集中させるイメージをするが、うまく行く気配がない。もしかすると考え方が違うのかもしれない。魔女さんは、私に『魔力を右手に集中させなさい』と言っていた。それってつまり『体内』での話ではないことがわかる。いや、体内でもできる人は出来るんだろうけど少なくとも私は出来ない。ならば、体内で循環させている魔力を『体外』に『放出』させてそれを全部右手に集中させれば………
〈テテテテーン
魔法〔魔力循環・魔力操作Lv1〕を習得しました〉
「なんか、聞こえてきたぁぁぁぁ!」
「落ち着きなさい。『ステータスオープン』と唱えなさい」
「『ステータスオープン』」
名前 ミスズ・サクラ
年齢 15歳
性別 女
種族 人間
職業 ダンジョンマスター
Lv1
HP120/120
MP230/450(+10)【〔魔力循環・魔力操作Lv1〕の補正】
スキル
〔鑑定Lv1〕 〔言語理解〕
魔法
〔魔力循環・魔力操作Lv1〕
称号
《魅惑の魔女》の弟子 《魅惑の魔女》の親友
《絶対不殺》のダンジョンマスター(予定)
世界の???
「これが私のステータス?」
「そうよ。それじゃ、そろそろ帰らなきゃ。愛しのダーリンが待ってるから❤️」
「へ?」
「じゃあ、〔転移〕」
「うそぉぉぉぉぉぉ!!あの人結婚してたのぉ!」
〈ダンジョンの侵入者は排除されました。ダンジョンの侵入者は排除されました。ダンジョンの未開放を確認………ボーナスとしてDP10000を贈呈します。侵入者が『魔女族』であることを確認………『魔女族』の魔力が残留しています。ダンジョンコアに吸収し、DPとして加算します。DP99999を加算……吸収仕切れませんでした。DP10000を加算しました。計、DP9009910でした。ダンジョンレベルがLv1からLv100になりました。ダンジョンレベルが最大値になったため、ダンジョンショップが開放されました。『魔女族』の魔力をコアに吸収したことにより〔因果操作〕をダンジョンの特性に加えます………失敗しました。代替案を検索中…………〔条件付け〕をダンジョンの特性に加えます……………成功しました〉
「へ?『魔女族』?人間ですらなかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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