なろうアンチから見た“異世界チートスレイヤー”
はじめましての方ははじめまして!
なろう作家の千葉丸才です!
いやぁ、異世界チートスレイヤー。始まりましたね!
なろう界隈に燻るアンチ層を考えるといつかこんな作品が世に出るのではないかと思っていたのですが、まさか有名なプロ漫画家の方が手掛けられるとは思わなかったです。
そして、即座に連載終了するとも思っていませんでした(笑)。
まぁ、内容的に特定の作品を馬鹿にする目的で作られた作品だったので致し方なかったのかも知れません。
ですが、もし仮にこんな形で打ち切られなかったとしても、異世界チートスレイヤーは直ぐに終わっていたと思います。
何故なら、“異世界チートスレイヤー”は大半のアンチ層から嫌われる内容だったからです。
今回は、何故“異世界チートスレイヤー”がメインターゲット層である“なろうアンチ”から嫌われるのかを書いて行きたいと思います。
先ず“なろうアンチ”と呼ばれる読者層ですが、実際の所色々な種類のアンチが居ます。
軽めのアンチやなろうに親を殺された重度のアンチ。なろうをちゃんと読んでいるアンチや、コミカライズやアニメだけで判断するアンチ。嫌いな作品にだけ都合良くアンチ。全く読んでいないのに兎に角アンチ、と様々です。
そしてその中でも作品に対する許容範囲は個々人で大きく異なり、一概に一括りする事は難しくなっています。
この作品はなろう系じゃないとか、この作品はなろう系だとか、平気で主観的に言います。
付き合い切れません(笑)。
しかしまぁ、そんなアンチにも一定の傾向は存在しています。先ずはそんなアンチが好む傾向にある作品を四つ程紹介させて頂きます。
1.主人公が魅力的な作品。
はい。王道ですね。
これはなろう系特有の現象に感じますが、ハッキリ言ってなろう系の主人公はキャラクターが希薄です。
これはなろうにはシュチュエーションを楽しむ為に主観的に作品を読む読者が多く、没入する為には主人公のキャラクターが強いと邪魔になってしまうからだと考えられます。
一部を除き、ほぼ全てのキャラクターが名前と容姿以外の差異が無く、作品を入れ替えても余裕で物語が成立するレベルです。
しかし逆にアンチ層は物語を俯瞰して楽しむタイプの人が多く、主人公も一人のキャラクターとして捉えています。
ですので無個性で特徴の無い主人公には魅力を感じられず、逆に主人公の個性が溢れる作品はアンチ層に好まれる傾向があります。
2.熱い展開がある作品。
これも王道ですね。
なろう系はピンチを嫌う傾向があります。
そういった状況を打破するのは一般的な物語においては凄く盛り上がる展開の一つなのですが、なろう系だとウケが悪いです。
これは主人公がピンチになるのが許せない読者層と、そういった展開自体に疲れてしまう読者層がなろうに多い為だと考えられます。
これはアンチを語る上で結構重要だと思う点で、この二つを理解出来ないアンチ層はかなり多いのです。
前述しましたが、なろう系のアンチ層は作品を俯瞰して見るタイプの人が多いです。
そしてそういった人達にとってキャラクターがピンチになる事は物語に必要な要素だと認識しています。そして、“疲れる”という事に関しては何が疲れるのかさっぱりわかりません。
本当に全く理解出来ないのです。
私自身もアンチ寄りで、最初にこの二つを聞いた時は冗談を言っているのかと思いました。
今では色々と考察したり学んだりして知識としては理解出来たのですが、体感としては未だに全く理解出来ません。
“疲れる”と言われても、“何に?”以外の言葉が出ないのです。
ですので熱い展開や物語の起伏を生むピンチが盛り込まれた作品はアンチ層に好まれる傾向にあります。
3.敵が魅力的な作品。
これも王道ですね。
なろう系の作品は敵キャラも魅力が有りません。
と、言うか小物ばかり出ます。
アンチ視点で言えば、“頭と性格の悪い主人公よりも更に頭と性格が悪いキャラクターが出る”という事になるのです。
そしてこの悪役もやはり名前と容姿以外の変化点は殆ど無く、他作品と入れ替えても余裕で物語が成立します。
1でも触れましたが、なろう系を好まれる方は基本的にシュチュエーションを楽しむ為に主観的に作品を見る方が多いです。ですので、こう言ったキャラの雑さにはある程度寛容な傾向があります。しかし逆に物語を俯瞰して楽しむ傾向があるアンチ層は、ここも引っかかってしまいます。
小物が小物を虐めているのを見ても何一つ楽しく感じられないのです。
ですので魅力的な悪役が出る作品の方がアンチ好みと言えます。
4.周囲の反応に説得力が有る作品。
なろう系の主人公はよく凄い事をします。
これは強すぎる魔法だったり、ドアを普通に開けようとしたら壊れたり、テーブルと椅子を使い分けたり、コインを10枚毎に分けて10の塊が10で100枚にしたりです。
後半二つはネタですが、主人公が“凄い事”をすると周囲はやたら褒め回したり、やたら驚愕したりします。
シチュエーション派のなろう読者にとってここは一番の盛り上がりポイントなのですが、俯瞰して物語を見るアンチ層にとって、ここは最大クラスの引っ掛かりポイントなのです。
主人公がした事は確かに凄いけど、何回も同じ様な事をしているのに学習しなかったり、設定だけで凄さを表現されて何の実感も伴わなかったり、別に凄くも無いのに周囲の知能が低過ぎて凄い扱いを受けたりと、はっきり言ってアンチ層には何が面白いのか理解出来ません。
全く共感出来ないのです。最低限の説得力が無いと、そこに引っかかって物語に集中出来ません。
なので周囲の反応に説得力が有る作品の方がアンチには好まれます。
ざっとですが、以上がアンチに好まれる傾向です。
つまり、アンチに好まれる作品と言うのは、“魅力的な主人公が魅力的な悪役と闘い、そして偉業を成して周囲に正当で健常な評価をされる作品”なのです。
ここで“異世界チートスレイヤー”を見てみましょう。
1.魅力的な主人公
はい。はっきり言って、チートスレイヤーの主人公には何の魅力も有りません。
と、言うか性格だけみたらテンプレなろう主そのものでした。某編集者さんの小説の主人公と全く一緒の性格です。
そしてやたらと異世界転生者を持ち上げていて、ヒロインらしき幼馴染が酷い事をされて初めて転生者達の酷さに気付くのですが、後述する魔女に唆されて無防備に犯人の転生者に会いに行くという相当な馬鹿振りを発揮しています。
“頭の悪いヨイショ野郎が主人公”。これが好きなアンチは少ないでしょう。
2.熱い展開
主人公はヒロインが酷い事をされた後、いきなり出て来た魔女に転生者の悪行と転生前の姿に関して説明され、ノコノコと転生者の前に現れます。
そして当然殺されそうになるのですが、異世界には無い“陰キャ野郎”という単語に過剰反応した転生者は、今度はノコノコと主人公に付いて行きます。
つまり馬鹿と馬鹿がノコノコノコノコです。
一話打ち切りなのでまだ分かりませんが、少なくとも第一話で盛り上がる展開は有りませんでした。
3.魅力的な悪役
これは打ち切りになったのでどうなったかは分からないです。
確かに上手く改変出来れば魅力にも出来たでしょうが、第一話のノコノコを参考にすると正直言って好きになれるキャラクターは居なかっただろうと思います。
この作品で私個人が一番駄目だと感じる所は此処で、何の伏線や捻りも無くただただ元ネタのキャラクターを馬鹿にする為だけにキャラクターを改悪していました。
別にそれはそれで良いんですが、それだけだとキャラクターとしての魅力は出せません。
少なくとも、“魅力的な悪役”とはかけ離れたキャラクターになっていたと思います。
4.周囲のキャラクターの反応と説得力
これは相当酷いです。
って言うか伏線だと考えないと不自然なレベルです。
転生者達は第一話から会議をするのですが、ここでノコノコ達は相当いかれた事を言っています。
いきなり感情的になって黙れドン太郎をしたり、チートスキルで楽々無双するしかやる事無いとか言ったりと散々です。
その後主人公にノコノコ付いて行く直前も、ストレスフリーしか必要無いとか言ってるし、もし仮に現在の陰キャが転生しても絶対に言わない様な発言や行動ばかりしていました。
そしてその後、主人公の前に魔女が出て来るのですが、魔女は魔女でほぼ脈絡も無く転生者を馬鹿にしだします。いや、もっと話さなあかん事有るだろうと思うのですが、何故か主人公はそんな魔女の言う通りに無防備にノコノコに会いに行くという愚行に走りました。
ハッキリ言って、この漫画でまともな反応をする登場人物はモブくらいしか居ません。
長々と語っていましたが、要約してしまうと“異世界チートスレイヤー”と言う作品は、“作者に都合が良い様に動いて喋る主人公が、作者の言いたい事を代弁させられるだけのゴミみたいな悪役を倒す作品”でしかなかったのです。
こんなもん対象が違うだけでなろう小説との差異は有りません。アンチはなろう系が嫌いなのに、アンチ向けになろう系を書くと言う救い様の無い間違いをした作品。それが“異世界チートスレイヤー”なのです。
こんなもんを好きになるアンチ層は相当限定されていたと思います。
“ならアンチはどんななろう主狩りを読みたいのか?”
そう思われる方もいらっしゃると思いますが、こればっかりは人によります。最初に申し上げた通りアンチ層の幅は広いので正解が出し難いのです。有名な作品も有りますが、アレも私の主観だと典型的な“なろう系”作品でしかありません。
アンチの人達も自分好みのなろう主狩りを読みたいのなら自分で書くのが多分一番早いです。まぁ、普通のテンプレを書く事に比べたら数十倍は難易度高いと思いますが。
“異世界チートスレイヤー”。なろう系アンチ向けになろう系を描いた伝説の打ち切り漫画。
少なくとも、私はこの作品が嫌いです。
この作品と戦争が嫌いです。