取り敢えず落ち着け!
ただの粥だ!
「失礼致します!」
食事中だと言うのに、メイド長が駆け込むように入って来た。
「どうしたのかね」
「こちらをお召し上がりください」
「なんだね。スープか?」
手早く並べられた皿に盛られた物は白いスープにしか見えない。
「まずは一口」
言われるまま口にすると、その美味さに驚いた。
「なんだ、これは!」
「佳代様がお作りになりました」
まさかだろう。
「佳代様は料理人なのか?」
「いえ、主婦のできる範囲とお答えに」
料理人でないのにこれ程のものを作るとは。主婦というスキルは奥深い。
「これは陛下にもお出しせねば」
「すでに、直属のメイドがお出ししております」
さすがメイド長、仕事が早い。
「間違いなく佳代様は上級職で、かなりの高ランクと思われる。警備の強化を進言せねば」
すると、副料理長が慌てた様子で駆け込んで来た。
「魔法局長、料理長が佳代様に弟子入りすると言って聞きません。どうか止めてください」
料理長は昔馴染みだ。確かにこれを食べたら言い出すだろう。
「落ち着け。佳代様が料理をなさる時に、補助として入るだけなら問題あるまい」
そう言っていると、陛下も駆け込んできた。
「局長! 佳代殿の能力はどれ程か、改めて確認せよ!」
「はっ、直ぐに」
主婦と言う職の奥の深さに、驚愕としか言いようが無い。
「そして、我の専属の料理人に!」
「それはおやめください」
佳代様の料理に、皆の理性が狂わせれていた。
だからただの粥だって!