ありえない奇跡
何を騒いでいるのか
召喚したお二人への対応を陛下と検討していた所に部下が駆け込んできた。
「省長、大変です」
「なんだ。陛下の御前だぞ」
咎めるが、昨日の召喚の儀の後なのだから召喚者の件だろう。
陛下も直ぐに察しられた。
「よい、何があった」
「はっ、佳代様が透明な水を作りました」
思わず立ち上がった。
「何?」
「透明な水だと!」
陛下も愕然としている。
井戸からは濁り水しか汲めないし、雨水も濁ったものだ。その上澄みを王家や貴族が使い、庶民は濁ったままの水を使う。
澄んだ水というのは、希少な山水ぐらいだ。
「はい。しかも、沸かして冷ました物はそのまま飲めるそうです」
「そんな事が?」
何もかもが信じられない。
「魔法長、どう言う事だ」
陛下も当惑している。
推測でしかない。
だが、他に考えようがない。
「佳代様の主婦という職は、我々の理解を超えた上級職としか」
周囲がざわめく。
だが、陛下は冷静に判断した。
「未知の上級職だと。いや、確かにそうとしか考えられん」
認識を改めて佳代様へ対応を変えるよう伝えると共に、メイド長に敬意を評する。
我らはそもそも認識を間違っていた。
佳代様こそ我々が必要とする方だ。
そう確信するに十分な状況だった。
そして壮大な思い込み