まずは何より
それでも朝はやってくる
目が覚めると天蓋付きのベッドってあり得ない。
ボーっとしていると、メイド長の声がした。
「お目覚めですか」
「はい、おはようございます」
「おはようとは?」
あいさつの概念も違うのか。やり難いな。
「朝に使う挨拶です。こちらでは、どのように言うのですか?」
「良い朝です、と」
随分と直接的だ。
「では、良い朝ですね」
「はい、良い朝でございます。朝食をお持ちしました」
朝食、これまた微妙な物だ。
硬そうなパンに、ワインと果汁とチーズ(ぽい物)。私はまだいいが舞ちゃんにはキツそう。
「ん〜?」
「舞ちゃん、起きた?」
起き上がるとまだぼんやりしている。
「朝だけど食べられる?」
黙って頷く。
これが本来の舞ちゃんのなのだろう。
薄く切ったパンに(どうやら)チーズをのせて食べる。酸味を少し感じる自然発酵酵母パンにクセのあるチーズは悪くないが、もそもそしていて量は食べられない。
何より朝からワイン。文化の違いって大きい。
「本日、何か希望がございますでしょうか」
「とりあえず、飲み水を作りたいと思います」
「? ……は?」
何か特別な事を言っただろうか?
水の確保は最優先でしょう!
「飲み水を確保したいので、必要な物を用意して欲しいのですけど」
「あ、はい。どのようなものでしょうか」
上から水を入れて下から出せる物は何かないか聞くと、思い当たる物があるらしい。それを含めて欲しい物を言うと、すぐさま用意された。
ワインを作る時に使う果汁を絞る樽と木炭に綿、砂利とそれよりちょっと大きい小石ときめの細かい布と希望通りだ。
「佳代さん、水を作るって、本当に?」
「作るって言うか浄化装置みたいなものね。まぁ、うる覚えだから何とかなるといいけど」
濁った水しか汲めない井戸の隣に台を置いて、その上に樽を置いてそれぞれ材料は横に並べられた。
「出口に布と綿を詰めて、砂利をひいて、その上になんだっけ?」
「これ、見たことあります。ペットボトルの底を切って反対にして作った浄化装置を夏休み自由研究で出した子がいました。その上に小石で次は木炭です」
「助かったわ。私はマンガ『ファラオの家紋』で主人公が地下牢に入れられて、そこで泥水を浄化するシーンを覚えていただけだから」
「それはそれですごいです」
また引かれたかも。
それはそうと、速やかに作業は進んでいく。指示だけ出せばいいのは楽だ。
「指示通り重ねました」
「じゃあ、上に布を重ねて置いて、その上から井戸水を入れてください」
力技に関しては全てやってくれるので助かる。
瞬く間に樽が水で満たされた。
栓を抜き、桶に貯まった水を確認すると澄んでいる。これなら沸して飲み水として問題ないだろう。
「これを沸かして冷ましたものを飲み水にしてください」
「はい。直ぐに」
なんか周りがザワザワしているが、それよりも昼食が気になる。
もう、自分が作った方が安心できるから作らせてほしい。
そうだよ、作っちゃえば良くない?
ヤッホイ、水確保!