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冬童話2021 『さがしもの』

はん点、どこにいったのかしら?

作者: 小畠愛子

 ナナホシテントウのナナは、七つの黒いはん点がじまんの、とてもかわいらしいテントウムシです。朝になると、いつも水辺で、水にうつった自分のはん点を見て、うっとりするのでした。ですが、ある日……。


「あれれっ、わたしのはん点、一つなくなってるわ!」


 ナナは驚いて、思わずバタバタと羽を動かしてしまいました。水面がわずかにゆれて、ナナのすがたもゆらめきます。ナナは必死になってきのうあったことを思い出します。


「どうして、はん点がなくなったのかしら? えっと、きのうは、赤い実のなる木で、いつものようにアブラムシを食べてたんだわ。で、おともだちのちょうちょさんのところに行って、それから水辺の草につかまっておひるねして……」


 いったいどこではん点をなくしたのでしょうか? ナナはしばらく考えていましたが、やがて羽を広げて飛び立ったのです。


「とにかく、きのう行ったところにもう一度行ってみましょう。もしかしたら、はん点が落ちてるかもしれないわ」


 ナナはまず、赤い実がなる木に飛んでいきました。ここにはナナの大好物の、アブラムシたちがたくさんいるのです。ナナのすがたを見て、アブラムシたちが逃げていきます。


「もしかして、アブラムシたちがわたしのはん点を盗んだのかしら?」


 ナナの言葉に、アブラムシたちはぶるぶる首をふります。


「おいらたちじゃないやい! テントウムシのはん点なんて、盗んだってなんにもなりゃしないよ! だいたい怖くて逃げてるのに、どうやって盗むんだよぉ!」

「じゃああんたたち、わたしのはん点知らないの?」

「知らないよぉ! 助けてくれぇ!」


 逃げていくアブラムシたちを、ナナはうたがわしげに見ていましたが、やがて羽を広げて飛んでいきました。


「アブラムシたちのいうとおりかも。あいつら、わたしのことを見るとすぐに逃げていくから、多分違うわね。じゃあ、今度はちょうちょさんに聞いてみましょう」


 ナナは花の近くでひらひら飛んでいる、ちょうちょに聞いてみたのです。


「ねぇ、ちょうちょさん、わたしのはん点知らないかしら?」

「あら、ナナちゃんじゃないの。あれ、ホントだわ、はん点なくなってるわね。どうしたの?」

「今日起きて、水辺で水にうつったすがたを見てたら、気づいたの。どうしよう、わたし、ナナホシテントウなのに、はん点がなかったら、ロクホシテントウになっちゃうわ」


 泣きそうになるナナを、ちょうちょはかわいそうに思って見ていましたが、やがて、あっと声をあげたのです。


「そっかぁ、わかったわ。ナナちゃん、あのね、水辺に行ってごらんなさい。そこで、きれいに羽を洗ってごらん。そうすればわかるわ」

「えっ、羽を? でも、どうして?」

「いいから、ほら、行ってごらんなさい」


 ちょうちょにいわれるままに、ナナは水辺へ飛んでいきました。


「ちょうちょさんはああいってたけど、でも怖いわ。だけど、はん点がないのはもっといやだし、よーし、それなら……」


 ナナは勇気を出して、ごろんっとひっくり返り、水に羽をつけたのです。ひんやりと冷たい水が背中に広がっていきます。


「ひゃあっ! 冷たいよぉ、でも、羽をきれいに洗って……」


 冷たくてびしょびしょになるのをがまんして、ナナは水でばちゃばちゃ羽を動かしました。しかし……。


「これくらいでいいかしら。早く水から出ないと……って、ダメだわ、羽が動かせない!」


 水にぬれてしまったからでしょうか、ナナの羽は重くなって、羽ばたくことができません。と、そこに先ほどのちょうちょがひらひらと飛んできたのでした。


「ナナちゃん、つかまって!」


 ちょうちょがナナを捕まえて、水から引っぱり上げてくれたのです。ようやく水から出ることができて、ナナはホッとして、ちょうちょにおれいをいいました。


「ありがとうちょうちょさん。でも、これでホントにはん点が見つかるの?」

「ええ。ほら、もう一度水にうつったすがたを見てごらんなさい」


 ちょうちょにいわれるままに、ナナは水にうつる自分のすがたを見つめました。


「あっ、はん点がある! ちゃんと七つあるわ!」

「ね、あったでしょ」

「でも、どうして?」

「たぶんナナちゃん、アブラムシを食べるのに夢中で、気づかなかったのよ。ナナちゃんのはん点、赤い実の汁で染まってたわ。だから黒いはん点が、赤くなって見えなくなっちゃってたのよ」 


 ちょうちょの言葉に、ナナはなるほどとうなずきました。


「でもよかった。これでわたし、ロクホシテントウにならずにすむわ」


 ナナの言葉に、ちょうちょは思わず笑ってしまいました。ナナもてれたように、きれいになった羽をパタパタと動かすのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 昆虫界の弱肉強食が面白かったです。 テントウムシ、ナナホシならアブラムシを食べてくれるのですが、野菜を食べ散らかす種類もいるから困るという……。 なので、おおざっぱに、うちの家庭菜園にはアブ…
[一言] テントウムシにアブラムシ、観察するぶんにはどちらも面白い生き物ですよね。とはいえ、今年は家庭菜園のミニトマトがアブラムシにやられてしまったので、テントウムシカモン!とご招待したい気持ちでいっ…
[一言] 斑点見つかって良かったですね。 あぶらむしはちょっとかわいそうだったけど。
2020/12/22 19:05 退会済み
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